礼記 / 月令
游牝別群,則縶騰駒,班馬政。 是月也,日長至,陰陽爭,死生分。君子齊戒,處必掩身,毋躁。止聲色,毋或進。薄滋味,毋致和。節耆欲,定心氣,百官靜事毋刑,以定晏陰之所成。
新字:游牝別群,則縶騰駒,班馬政。 是月也,日長至,陰陽争,死生分。君子斉戒,処必掩身,毋躁。止声色,毋或進。薄滋味,毋致和。節耆欲,定心気,百官静事毋刑,以定晏陰之所成。
書き下し
游牝(ゆうひん)群を別てば、則ち騰駒(とうく)を縶(つな)ぎ、馬政を班(わか)つ。 是の月や、日長至(ちょうし)し、陰陽争い、死生分かる。君子斉戒し、処るに必ず身を掩(おお)い、躁(さわ)ぐこと毋かれ。声色を止め、或いは進むること毋かれ。滋味を薄くし、和を致すこと毋かれ。耆欲(しよく)を節し、心気を定め、百官事を静かにして刑すること毋く、以て晏陰(あんいん)の成す所を定む。
現代語訳
牧場に放たれていた牝馬が子をはらんで群れから別れると、種付けの若駒をつなぎとめ、馬を扱う規則を頒布する。 この月、昼の長さが極まり(夏至)、陰と陽の気がせめぎ合い、死ぬものと生きるものが分かれる。君子は斎戒し、居るときは必ず身を覆い隠し、落ち着きなく騒いではならない。音楽や女色を止め、身辺に近づけてはならない。食べ物の味を薄くし、味をととのえすぎてはならない。好みや欲を控え、心と気を静め、役人たちは仕事を静かに行って刑罰を執行せず、そうして静かな陰の気が生じて成るところを落ち着かせる。
解説
仲夏の馬政と、夏至に君子が身を慎むべきことを述べる段である。春に牧場へ放った牝馬がはらんで群れを離れると、種付けの若駒をつなぎ、馬の扱いの規則を定める。後半は夏至の心得で、昼が最も長くなるこの日は、陽の気が極まると同時に陰の気がきざしはじめる日とされ、陰陽がせめぎ合い、生きるものと死ぬものが分かれる境目と考えられた。そこで君子は斎戒して身を慎み、騒がず、音楽や女色を遠ざけ、味の濃いものを避け、欲を控えて心を静める。勢いの頂点にこそ衰えの兆しが芽生えるので、その時に浮かれず慎むことで次の季節を穏やかに迎えるという考えである。物事がいちばんうまくいっている時こそ身を引き締めよという教えは、事業の好調期や人生の絶頂期にある人に向けた、今も変わらない戒めとして読める。
この章句が説くこと
礼記月令夏至陰陽慎み
関連する章句
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礼記・月令天子、有司に命じて四海・大川・名源・淵沢・井泉を祈祀せしむ。 是の月や、農に収蔵積聚せざる者有り、馬牛畜獣に放佚(ほういつ)する者有らば、之を取るも詰(とが)めず。山林藪沢(そうたく)に、能く蔬食(そし)を取り、禽獣を田猟する者有らば、野虞(やぐ)之を教道す。其の相侵奪する者有らば、之を罪して赦さず。是の月や、日短至る。陰陽争い、諸生蕩(うご)く。君子は斉戒(さいかい)し、処(お)るに必ず身を掩(おお)う。身は寧(やす)からんことを欲し、声色を去り、耆慾(しよく)を禁ず。形性を安んじ、事は静かならんことを欲し、以て陰陽の定まる所を待つ。
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呂氏春秋・仲夏④是の月や、日の長きこと至り、陰陽爭い、死生分かる。君子齋戒し、處るには必ず揜くし、身は靜かにして躁ぐこと無く、聲色を止め、進むること或る無く、滋味を薄くし、和を致すこと無く、嗜慾を退け、心氣を定めんことを欲す。百官は靜かにし、事は刑すること無く、以て晏陰の成す所を定む。鹿角は解ち、蟬は始めて鳴き、半夏生じ、木堇榮く。
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礼記・月令鹿角解(お)ち、蟬始めて鳴く。半夏(はんげ)生じ、木堇(もくきん)栄(はな)さく。 是の月や、火を南方に用うること毋かれ。以て高明に居るべく、以て遠く眺望すべく、以て山陵に升(のぼ)るべく、以て台榭(だいしゃ)に処るべし。 仲夏に冬の令を行えば、則ち雹凍(はくとう)穀を傷り、道路通ぜず、暴兵来たり至る。春の令を行えば、則ち五穀晩く熟し、百螣(ひゃくとく)時に起こり、其の国乃ち饑う。秋の令を行えば、則ち草木零落し、果実早く成り、民疫に殃(わざわい)せらる。
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『淮南子』時則訓仲夏の月、招搖は午を指し、昏に亢中し、旦に危中す。其の位は南方、其の日は丙丁、其の蟲は羽、其の音は徵、律は蕤賓に中たり、其の數は七、其の味は苦、其の臭は焦、其の祀は灶、祭には肺を先にす。小暑至り、螳蜋生じ、鵙始めて鳴き、反舌聲無し。天子は赤衣を衣、赤騮に乘り、赤玉を服し、赤旗を載て、菽と雞とを食らい、八風の水を服し、柘を爨き火を燧り、南宮の御女は赤色、赤采を衣、竽笙を吹き、其の兵は戟、其の畜は雞、明堂の太廟に朝す。樂師に命じ、鞀鼙琴瑟管簫を修め、竽篪を調え、鐘磬を飾り、干戚戈羽を執らしむ。有司に命じ、民の爲に山川百源に祈祀し、大いに帝に雩し、盛樂を用いしむ。天子雉を以て黍を嘗め、羞むるに含桃を以てし、先ず寢廟に薦む。民に禁じて藍を刈りて以て染むる無からしめ、灰を燒く毋く、布を暴す毋く、門閭閉ずる無く、關市索むる無く、重囚を挺め、其の食を益し、鰥寡を存し、死事を振わし、游牝は其の群を別ち、騰駒を執え、馬政を班かつ。日長きこと至り、陰陽爭い、死生分かる。君子齋戒し、身を慎みて躁がしくする無く、聲色を節し、滋味を薄くし、百官靜かに、事に徑する無く、以て晏陰の成る所を定む。鹿角解け、蟬始めて鳴き、半夏生じ、木堇榮ゆ。民に禁じて火を發する無からしめ、以て高明に居り、遠く眺望し、丘陵に登り、臺榭に處る可し。仲夏に冬令を行えば、則ち雹霰穀を傷り、道路通ぜず、暴兵來至す。春令を行えば、則ち五穀孰せず、百螣時に起こり、其の國乃ち饑う。秋令を行えば、則ち草木零落し、果實蚤く成り、民疫に殃わる。五月は相を官とし、其の樹は榆なり。
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呂氏春秋・仲冬④是の月や、日短かきこと至り、陰陽爭い、諸生蕩く。君子齋戒し、處れば必ず弇い、身は寧きことを欲し、聲色を去り、嗜慾を禁じ、形性を安んじ、事は靜なるを欲し、以て陰陽の定まる所を待つ。芸始めて生じ、荔挺出で、蚯蚓結び、糜角解け、水泉動く。日短かきこと至れば、則ち林木を伐り、竹箭を取る。
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礼記・月令芸(うん)始めて生じ、荔(れい)挺(ぬき)んで出で、蚯蚓(きゅういん)結び、麋角(びかく)解け、水泉動く。 日短至れば、則ち木を伐り、竹箭(ちくせん)を取る。是の月や、以て官の事無きと器の用無き者とを罷(や)め去るべし。 闕廷(けってい)・門閭を塗り、囹圄(れいご)を築く、此れ以て天地の閉蔵を助くるなり。 仲冬に夏の令を行えば、則ち其の国乃ち旱(ひでり)し、氛霧(ふんむ)冥冥として、雷乃ち声を発す。秋の令を行えば、則ち天時に雨汁(うじゅう)ふり、瓜瓠(かこ)成らず、国に大兵有り。春の令を行えば、則ち蝗虫(こうちゅう)敗を為し、水泉咸(ことごと)く竭(つ)き、民に疥癘(かいれい)多し。
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