礼記 / 月令
始雨水,桃始華,倉庚鳴,鷹化為鳩。 天子居青陽大廟,乘鸞路,駕倉龍,載青旂,衣青衣,服倉玉。食麥與羊。其器疏以達。是月也,安萌牙,養幼少,存諸孤。擇元日,命民社。命有司省囹圄,去桎梏,毋肆掠,止獄訟。
新字:始雨水,桃始華,倉庚鳴,鷹化為鳩。 天子居青陽大廟,乗鸞路,駕倉竜,載青旂,衣青衣,服倉玉。食麦与羊。其器疏以達。是月也,安萌牙,養幼少,存諸孤。択元日,命民社。命有司省囹圄,去桎梏,毋肆掠,止獄訟。
書き下し
始めて雨水(うすい)あり、桃始めて華さき、倉庚(そうこう)鳴き、鷹化して鳩と為る。 天子は青陽の大廟に居り、鸞路に乗り、倉龍に駕し、青旂を載せ、青衣を衣、倉玉を服ぶ。麦と羊とを食らう。其の器は疏にして以て達す。是の月や、萌牙を安んじ、幼少を養い、諸孤を存(と)う。元日を択びて、民に命じて社(しゃ)せしむ。有司に命じて囹圄(れいご)を省(はぶ)き、桎梏(しっこく)を去り、肆掠(しりゃく)すること毋く、獄訟を止めしむ。
現代語訳
雪ではなく雨がはじめて降り、桃の花が咲きはじめ、倉庚(うぐいすの類)が鳴き、鷹が姿を変えて鳩となる。 天子は青陽の中央の正室(大廟)に住まい、鸞路に乗り、倉龍に引かせ、青い旗を立て、青い衣を着て、青い玉を帯びる。麦と羊を食べる。器は目が粗く透けたものを用いる。この月には、芽生えたばかりの草木を損なわないように守り、幼い者を養い、孤児たちを見舞う。吉日を選んで、民に社(土地の神)の祭りを行わせる。役人に命じて牢獄の囚人を減らし、手かせ足かせをはずし、むやみに打ちすえて取り調べることをやめさせ、訴訟を止めさせる。
解説
仲春の物候と天子の居所、そしてこの月の政令を述べる段である。雨が降り桃が咲き、うぐいすが鳴くという記述は、春が深まる様子を具体的な自然の変化で示している。「鷹化して鳩と為る」は、季節によって猛禽の姿が消え鳩が現れることを古人が変化と見たもので、殺気が退き生気が満ちる象徴とされた。天子は青陽の中央の大廟に移り、服飾と食事は引き続き青と木の配当に従う。政令の中心は、芽生えたものを守り、幼い者を養い、孤児を見舞うことにあり、春の生の徳を人の世界にも及ぼそうとしている。さらに囚人を減らし、手かせ足かせを外し、拷問や訴訟を止めるのも、生を尊ぶ季節に刑罰を控えるという考えによる。弱い立場の人を真っ先に気づかうという順序は、今の社会の福祉のあり方や職場での配慮にも通じるものである。
この章句が説くこと
礼記月令仁政物候刑罰
関連する章句
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『淮南子』時則訓仲春の月、招搖は卯を指し、昏に弧中し、旦に建星中す。其の位は東方、其の日は甲乙、其の蟲は鱗、其の音は角、律は夾鍾に中たり、其の數は八、其の味は酸、其の臭は羶、其の祀は戶、祭には脾を先にす。始めて雨水あり、桃李始めて華さき、蒼庚鳴き、鷹化して鳩と為る。天子は青衣を衣、蒼龍に乘り、蒼玉を服し、青旗を建て、麥と羊とを食らい、八風の水を服し、萁を爨き火を燧り、東宮の御女は青色、青采を衣、琴瑟を鼓し、其の兵は矛、其の畜は羊、青陽の太廟に朝す。有司に命じて、囹圄を省き、桎梏を去り、笞掠する毋く、獄訟を止め、幼小を養い、孤獨を存し、以て句萌を通ぜしむ。元日を擇びて、民をして社せしむ。是の月や、日夜分かれ、雷始めて聲を發し、蟄蟲咸な動き蘇る。雷に先だつこと三日、鐸を振りて以て兆民に令して曰く、雷且に聲を發せんとす。其の容止を戒めざる者有らば、子を生むに備わらず、必ず凶災有らん、と。官市に令して、度量を同じくし、衡石を鈞しくし、斗稱を角べ、權概を端しくす。川澤を竭くす毋かれ、陂池を漉す毋かれ、山林を焚く毋かれ、大事を作して以て農功を妨ぐる毋かれ。祭に犧牲を用いず、圭璧を用い、皮幣に更う。仲春に秋令を行えば、則ち其の國大水あり、寒氣總て至り、寇戎來たり征す。冬令を行えば、則ち陽氣勝たず、麥乃ち熟せず、民多く相い殘なう。夏令を行えば、則ち其の國大いに旱し、飕氣早く來たり、蟲螟害を為す。二月は倉を官とし、其の樹は杏なり。
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呂氏春秋・仲春①仲春の月。日は奎に在り。昏に弧中し、旦に建星中す。其の日は甲乙、其の帝は太暤、其の神は句芒、其の蟲は麟、其の音は角、律は夾鐘に中る。其の數は八、其の味は酸、其の臭は羶。其の祀は戸、祭るには脾を先にす。初めて雨水し、桃李華さく。蒼庚鳴き、鷹化して鳩と為る。天子は青陽の太廟に居り、鸞輅に乘り蒼龍を駕し、青旂を載て、青衣を衣、青玉を服び、麥と羊とを食らう。其の器は疏にして以て達す。
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礼記・月令天子は青陽(せいよう)の左个(さこ)に居り、鸞路(らんろ)に乗り、倉龍(そうりょう)に駕し、青旂(せいき)を載せ、青衣を衣(き)、倉玉を服(お)ぶ。麦と羊とを食らい、其の器は疏(そ)にして以て達す。 是の月や、以て春を立つ。立春に先だつこと三日、大史(たいし)之を天子に謁(つ)げて曰く、「某日立春なり、盛徳は木に在り」と。天子乃ち斉(さい)す。立春の日、天子親ら三公・九卿・諸侯・大夫を帥(ひき)いて以て春を東郊に迎う。還り反りて、公卿・諸侯・大夫を朝に賞す。
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礼記・月令是の月や、生気方(まさ)に盛んに、陽気発泄(はっせつ)し、句(こう)なる者畢(ことごと)く出で、萌ゆる者尽く達す。以て内(い)るべからず。天子徳を布き恵みを行い、有司に命じて倉廩(そうりん)を発し、貧窮に賜い、乏絶を振(すく)い、府庫を開き、幣帛(へいはく)を出だし、天下に周(あまね)くせしむ。諸侯を勉め、名士を聘(へい)し、賢者を礼す。 是の月や、司空(しくう)に命じて曰く、「時雨将に降らんとし、下水上騰せん。国邑を循行し、原野を周視し、隄防(ていぼう)を修利し、溝瀆(こうとく)を道達し、道路を開通して、障塞有ること毋かれ。田猟の罝罘(しょふ)・羅罔(らもう)・畢翳(ひつえい)・餧獣(いじゅう)の薬は、九門を出だすこと毋かれ」と。
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『淮南子』時則訓季春の月、招搖は辰を指し、昏に七星中し、旦に牽牛中す。其の位は東方、其の日は甲乙、其の蟲は鱗、其の音は角、律は姑洗に中たり、其の數は八、其の味は酸、其の臭は羶、其の祀は戶、祭には脾を先にす。桐始めて華さき、田鼠化して鴽と為り、虹始めて見れ、萍始めて生ず。天子は青衣を衣、蒼龍に乘り、蒼玉を服し、青旗を建て、麥と羊とを食らい、八風の水を服し、萁を爨き火を燧り、東宮の御女は青色、青采を衣、琴瑟を鼓し、其の兵は矛、其の畜は羊、青陽の右丢に朝す。舟牧は舟を覆すこと、五たび覆し五たび反し、乃ち天子に具を言う。天子烏めて始めて舟に乘り、鮪を寢廟に薦め、乃ち麥の為に實を祈る。是の月や、生氣方に盛んに、陽氣發泄し、句なる者は畢く出で、萌す者は盡く達す。以て内る可からず。天子有司に命じて、囷倉を發き、貧窮を助け、乏絕を振わし、府庫を開き、幣帛を出だし、諸侯を使わし、名士を聘し、賢者を禮せしむ。司空に命ず、時雨將に降らんとし、下水上騰す。國邑を循行し、原野を周視し、隄防を修利し、溝瀆を導通し、路を達し道を除くこと、國より始めて、境に至りて止む。田獵畢弋、罝罘羅𦉾、餧毒の藥、九門を出だす毋かれ。乃ち野虞を禁じ、桑柘を伐る毋からしむ。鳴鳩其の羽を奮い、戴鵀桑に降る。撲曲筥筐を具え、后妃齋戒し、東に鄉いて親ら桑し、婦の使を省き、蠶事を勸む。五庫に命じ、百工をして金鐵皮革・筋角箭榦・脂膠丹漆を審らかにし、不良有る無からしむ。下旬の吉日を擇びて、大いに樂を合し、歡欣を致す。乃ち㹎牛騰馬を合し、牝を牧に游ばしむ。國に儺せしめ、九門に磔攘して、以て春氣を畢う。是の月令を行えば、甘雨至ること三旬。季春に冬令を行えば、則ち寒氣時に發し、草木皆な肅み、國に大恐有り。夏令を行えば、則ち民多く疾疫し、時雨降らず、山陵登らず。秋令を行えば、則ち天多く沈陰し、淫雨早く降り、兵革並び起こる。三月は鄉を官とし、其の樹は李なり。
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