名将言行録 / 『名将言行録』長曾我部元親 臆せず大阪へ上る
○十三年、元親既に秀吉に降り、老臣を集めて曰く、我既に降參の上は、近日大阪に上り、恩惠を謝せんと思ふなり、用意のこと申付くべしとなり、何れも承はり、當時亂國にして、人心の反復常ならず、一と先づ上方の形勢をも御覽ぜられ、來春御上り然るべしと申す。元親曰く、汝等が申所至極せり、去ながら、秀吉天下の武將と成り、一言を以て信と爲す、反覆の小人にあらず、且つ我日來誠實を以て人に交はれり、去れば何ぞ恐るゝことあらん、とて頓て宗徒の兵五十餘人を引具し、大阪に至り秀吉に謁す。秀吉、果して大に喜び、饗應善美を盡せり。
新字:○十三年、元親既に秀吉に降り、老臣を集めて曰く、我既に降参の上は、近日大阪に上り、恩恵を謝せんと思ふなり、用意のこと申付くべしとなり、何れも承はり、当時乱国にして、人心の反復常ならず、一と先づ上方の形勢をも御覧ぜられ、来春御上り然るべしと申す。元親曰く、汝等が申所至極せり、去ながら、秀吉天下の武将と成り、一言を以て信と為す、反覆の小人にあらず、且つ我日来誠実を以て人に交はれり、去れば何ぞ恐るゝことあらん、とて頓て宗徒の兵五十余人を引具し、大阪に至り秀吉に謁す。秀吉、果して大に喜び、饗応善美を尽せり。
書き下し
○十三年、元親既に秀吉に降り、老臣を集めて曰く、我既に降參の上は、近日大阪に上り、恩惠を謝せんと思ふなり、用意のこと申付くべしとなり、何れも承はり、當時亂國にして、人心の反復常ならず、一と先づ上方の形勢をも御覽ぜられ、來春御上り然るべしと申す。元親曰く、汝等が申所至極せり、去ながら、秀吉天下の武將と成り、一言を以て信と爲す、反覆の小人にあらず、且つ我日來誠實を以て人に交はれり、去れば何ぞ恐るゝことあらん、とて頓て宗徒の兵五十餘人を引具し、大阪に至り秀吉に謁す。秀吉、果して大に喜び、饗應善美を盡せり。
現代語訳
十三年、元親はすでに秀吉に降り、老臣を集めて言いました。私はすでに降参した以上、近日中に大阪に上り、恩恵を謝そうと思う。用意のことを申し付けよ、と。皆は承って、現在は乱国で、人の心の翻りは常がありません。ひとまず上方の形勢もご覧になり、来春お上りになるのがよろしいでしょう、と申しました。元親は言いました。おまえたちの申すところは至極もっともである。しかしながら、秀吉は天下の武将となり、一言をもって信とする人で、反覆の小人ではない。かつ私は日ごろ誠実をもって人と交わってきた。それならば、何を恐れることがあろうか、と、やがて主だった兵五十余人を連れて、大阪に至り、秀吉に謁しました。秀吉は果たして大いに喜び、饗応は善美を尽くしました。
解説

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