君子訓 / 巻之下
一凡罪を犯して、未だ顯はれざる内に白狀する者は赦す。これ古法なり。又知らずして科を犯す者は赦すべし。再びに至るとも、大惡にあらずば懲さしめて赦すべし。三度に至らば赦すべからず。是齊の桓公の言なり。一官ある人、公の法度を假りて、私の恩に報ゆべからず。
新字:一凡罪を犯して、未だ顕はれざる内に白状する者は赦す。これ古法なり。又知らずして科を犯す者は赦すべし。再びに至るとも、大悪にあらずば懲さしめて赦すべし。三度に至らば赦すべからず。是斉の桓公の言なり。一官ある人、公の法度を仮りて、私の恩に報ゆべからず。
書き下し
一凡罪を犯して、未だ顕はれざる内に白状する者は赦す。これ古法なり。又知らずして科を犯す者は赦すべし。再びに至るとも、大悪にあらずば懲さしめて赦すべし。三度に至らば赦すべからず。是斉の桓公の言なり。一官ある人、公の法度を仮りて、私の恩に報ゆべからず。
現代語訳
およそ罪を犯して、まだ露見しないうちに白状する者は赦します。これは古い法です。また知らずに罪を犯した者は赦すべきです。二度目になっても大悪でなければ、懲らしめて赦すべきです。三度に及べば赦してはなりません。これは斉の桓公の言葉です。官職にある人は、公の法度を借りて、私的な恩に報いてはなりません。
解説
自首した者と知らずに犯した者は赦し、二度目も大悪でなければ懲らしめて赦し、三度目は赦さない、という段階的な処罰の考えを斉の桓公の言葉として示します。罪を認める道を開いておくことが更生を促すという発想です。続く一句は、役人が公の権限を使って私的な恩返しをしてはならないという戒めです。自己申告した過ちには寛容に、繰り返しには厳しく、そして職権を私事に使わないという三点は、今の組織のルール運用にもそのまま当てはまります。
この章句が説くこと
赦し自首法度公私刑
関連する章句
-
『君子訓』巻之下一賞罰は君子其臣民を御する大権なり。賞罰妄なれば、臣下の心服せずして、上の威軽くなる。功ある者を賞し、罪ある者を罰せんと下知を立つるは、法令なり。もし功あれども賞せず、罪あれども罰せざる時は、是賞罰信なきなり。如斯なれば、法不立して、民信ぜず。善をするに惰りてつとめず、悪をする事を恐れずして、罪を犯す者多し。尚書に、令出づれば惟を行はしめ反かざれといへり。此意は、法令を出さば、初よく思案し僉議して、後まで破れざるやうに法を立つべし。一度下知を出しては、後まで其法を用ひ、背くものあらば罪に行ふべし。如斯なれば、法立ちて破れず、民信じて能く守る。後まで立ちがたき法ならば、始に能く評議して是を止むべし。是始を慎むなり。もし朝に令して夕に改むる時は、民惑ひて上を軽んず。
-
『君子訓』巻之下一年八十以上、七歳以下、死罪あれども刑せず。是古法なり。八十に至れば老いて智昏くなる。七歳以下は智未だ開けず。故に是を刑せず。一一人禁獄せられては、其家の父母兄弟妻子一族憂ひ苦み、家業を止めて勤めず。且獄中一日の苦いはん様なし。政をする人は、其苦、其家の患をも思ふべし。
-
『君子訓』巻之下一人を殺し、家に火をつけ、公の財を盗む、大罪なればかならず刑に行はるること、いかなる愚民も知れり。父母尊長をないがしろにし、人を打擲し、いつはりを行ひ、人の財を盗み、人の妻を犯すたぐひも、また国の大禁なり。されど右の三ヶ条の如くには民恐れず。国郡を治むる人は、兼てかやうの禁制を厳しく立て、月々に読みきかせ、民をして深く法令を恐れしむべし。法令ゆるがせなれば、惰りて罪を犯す者多し。民の父母として、我が国郡に死罪多きは、豈心に快からんや。是不仁にして民を愛するに心を用ひざればなり。
-
『管子』法法民に重罪毋きは、過ち大ならざればなり。民に大過毋きは、上赦す毋ければなり。上小過を赦せば則ち民に重罪多し、積の生ずる所なり。故に曰く、赦出づれば則ち民敬せず、惠行わるれば則ち過ち日に益すと。惠赦民に加わりて、囹圄實つと雖も、殺戮繁しと雖も、姦勝たざるなり。故に曰く、邪は蚤く之を禁ずるに如くは莫しと。過ちを赦し善を遺つれば、則ち民勵まず。過ち有るも赦さず、善有るも遺てざるは、民を勵ますの道、此に於いてか之を用うと。故に曰く、明君なる者は、事を斷ずる者なりと。
-
『君子訓』巻之上是教なり。如斯して民政に従はず、教に入らず、人の害となる者あれば、其罪を正して是を懲す、是刑なり。此三の考は、国を治むるの要なり。後世にも此事なきにはあらず、唯其法古に及ばず、且行ふもの其人にあらざれば、其具ありといへども、其道行はれずして国治まらず。一人の身のはたらきは、一心を主とし、両手両足を使ひものとす。身の内少しにても痛む所かゆき所あれば、手行きて是をさすりかく。是我が心吾が身を愛すること切にして、心と身と一体にして通ずる故なり。君の心に仁愛厚くして、万民を憐む心深ければ、民の愁ひ苦みを知りて、恵を施さざる事なかるべし。
-
『君子訓』巻之下一臣下に禄を与へ過して富貴になるれば、奢りて使ひ難く、用に立たず。臣下貧究に迫れば、必恥を知らず、偽り邪になりて忠なし。一凡高官の前にありては、いかなる小人も慎み隠す故に、姦悪ありといへども知れず。民に臨んで慎まざる故に、其行ふ所、善悪まぎれなし。故に吏の善悪は、下より告ぐる所を聞きて、其上にて其善悪を糺すべし。訟ふる者を咎めず、民の口を塞ぐべからず。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る