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甲陽軍鑑 / 品第十四

家康も父子二人合せて五大將が十四ケ國半の勢なり、但三ケ國は各境目のをさへに置べし、是は中國毛利家のをさへ斗り、越前は七年以前永祿十二巳年六月廿八日に信長·家康兩人にしまけ候へは、是もつて我身の用心にて信長の國を望にあらず、おさへ四千斗りにて然るべし、伊賀の國其外に一萬、中國に一萬合て二萬四千、但三ケ國の人衆大つもり如此、殘りて家康國をそへて十一ケ國半なり、大國中州をゆり合、一國に八千づゝの大づもりにすれば、かたく九萬二千五百也、

新字:家康も父子二人合せて五大将が十四ケ国半の勢なり、但三ケ国は各境目のをさへに置べし、是は中国毛利家のをさへ斗り、越前は七年以前永禄十二巳年六月廿八日に信長·家康両人にしまけ候へは、是もつて我身の用心にて信長の国を望にあらず、おさへ四千斗りにて然るべし、伊賀の国其外に一万、中国に一万合て二万四千、但三ケ国の人衆大つもり如此、残りて家康国をそへて十一ケ国半なり、大国中州をゆり合、一国に八千づゝの大づもりにすれば、かたく九万二千五百也、

書き下し

家康も父子二人合せて五大将が十四ケ国半の勢なり、但三ケ国は各境目のをさへに置べし、是は中国毛利家のをさへ斗り、越前は七年以前永禄十二巳年六月廿八日に信長·家康両人にしまけ候へは、是もつて我身の用心にて信長の国を望にあらず、おさへ四千斗りにて然るべし、伊賀の国其外に一万、中国に一万合て二万四千、但三ケ国の人衆大つもり如此、残りて家康国をそへて十一ケ国半なり、大国中州をゆり合、一国に八千づゝの大づもりにすれば、かたく九万二千五百也、

現代語訳

家康も父子二人を合わせて五人の大将が、十四か国半の勢である。ただし三か国はそれぞれ境目の押さえに置くはずである。これは中国の毛利家の押さえばかりで、越前は七年前の永禄十二年六月二十八日に信長・家康の二人に大敗しているので、これもわが身の用心で、信長の国を望むものではない。押さえは四千ほどでよかろう。伊賀の国その外に一万、中国に一万、合わせて二万四千。三か国の人数の大積もりはこのとおりである。残って家康の国を添えて十一か国半である。大国・中国をならして一国に八千ずつの大積もりにすれば、確かに九万二千五百である。

解説

高坂は長篠で向き合った信長・家康勢を、国数から兵数へと積み上げて見積もる。境目の押さえに割く分を差し引き、残る国に一国八千を掛けて九万二千五百と出す。感情や噂ではなく、数字で相手の力を測る姿勢である。重大な判断の前に、相手の手持ちの資源を粗くでも数えておく。それだけで無謀な仕掛けを避けられることがある。粗い見積もりでも、無いよりははるかにましな判断材料になる。

この章句が説くこと

見積もり判断兵数長篠信長大づもり

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