甲陽軍鑑 / 品第十三
喩ば勝れて、みめのよき女一人中の女一人、みめのあしき女一人此外はかたわ也、劣中の女は批判は我よりましのみめをば、よその美人を引かき惡く取なす、是を猜と申すなり、我よりをとりのみめの女をは、散々手くぼに會釋かさをかけてあしういふ、是をいやしむとは申なり、さる程に女人に似たる男が、人を猜み人をいやしむと聞へ候、猜いやしむは女のわざ、扨又人をそしりけすは男のわざなり、
新字:喩ば勝れて、みめのよき女一人中の女一人、みめのあしき女一人此外はかたわ也、劣中の女は批判は我よりましのみめをば、よその美人を引かき悪く取なす、是を猜と申すなり、我よりをとりのみめの女をは、散々手くぼに会釈かさをかけてあしういふ、是をいやしむとは申なり、さる程に女人に似たる男が、人を猜み人をいやしむと聞へ候、猜いやしむは女のわざ、扨又人をそしりけすは男のわざなり、
書き下し
喩ば勝れて、みめのよき女一人中の女一人、みめのあしき女一人此外はかたわ也、劣中の女は批判は我よりましのみめをば、よその美人を引かき悪く取なす、是を猜と申すなり、我よりをとりのみめの女をは、散々手くぼに会釈かさをかけてあしういふ、是をいやしむとは申なり、さる程に女人に似たる男が、人を猜み人をいやしむと聞へ候、猜いやしむは女のわざ、扨又人をそしりけすは男のわざなり、
現代語訳
たとえば、優れて見目のよい女が一人、中ほどの女が一人、見目の悪い女が一人いて、このほかは不具である。中ほどの女は、自分より見目のまさる者を、よその美人を引き合いに出して悪く取りなす。これを妬むという。自分より劣る見目の女を、さんざんに手くぼに会釈をかさにかけて悪く言う。これをいやしむという。そういうわけで、女人に似た男が人を妬み人をいやしむと聞こえる。妬み、いやしむのは女のわざである。さてまた人をそしり、けすのは男のわざである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『甲陽軍鑑』品第十三其そしりけすと申は、先よく剛强にたけたる男一人、それにあまりおとらぬ男一人、右二人の跡に付、男人此外は人並の男なり、別して本ンの未練者は千人の中にもさのみなし、扨右申す大剛の人数度々の手抦のこと申ンに及ばず、三十其人に続き中の男も如形の手抦有を贔負の衆、多ければ上の男より益の様に申シなす、そこにて能剛强なる人、中に健なる人の手抦をかたらせてきく、我こはくつよきより少ンおとりなれば、我むねにあて余りそれ程にもなきことを、こともなゝめに申は、其人の主が贔負の人の前にて何程もつよくこそかたるらめ、それ程の儀は大略の人々みな致さんに、聞き及たる程の人にて有まじと云ふを、そしるとは申なり、
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『甲陽軍鑑』品第十三又人並の男が少し抜出たることをして、千人の中にもふたり三人にすぐれたる程自慢するを、上と中の男がきゝ、あのつれをこそ大きなる事と思ふらめと申て、笑をけすとは名付て申なり、此ノ謂ルなる故名大将のたけき誉、おほき君子の下にては人をそしるとけす侍は有といへ共、人をそねみいやしむ武士一人もなし、さる程にわかき衆まで作法よくして人をそねみいやしまず、たけきぶしは我むねにあてがひ、兵どしが寄り合ひて一言申して双方堪忍なければ、さてはたすなり、詮なき事に打ち果たし主の用にはたゝずして、しかも妻子を路頭に立て屍の上の恥辱と、跡さきを分別してむざと人をあしういはず、道理がつまりて申せば、我とわが身を観じて敵の云ふは尤もなりと合点するにより、
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『甲陽軍鑑』品第十三其ごとく則政わらはべの如くにて、すがの·上原が当座に機にいるとて、北条家をそしるをまことゝ思ひ給ふ、則政公陣をいやがる底意は臆病なる故なり、始はいげん入道が諫を合点ありて、すとりてあしき夫馬のごとし、すがの·上原にいはれ、のちの変改は馬畜生にもお是も至て臆病の故なり、北条家をあしくいふとて武田信虎公平賀成頼にかち、村上頼平公長尾為景にかつ、合戦のこと迄申出し氏縄をわろくいふは全体女が我とひとつ位の美人をあしういはんとては、又我よりみめのましなる女を引出し、あれがあれほどみめよく共、そんぢやうそれにはをとりたるといふて、そねむ心は則政の北条家悪口するをよろこび給ふ、是もいたりて臆病なる心なり、扨こそ未練なる大将は、女に似たるとは申すなり、
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『甲陽軍鑑』品第十三能き武士は先づ慇懃に惣別人の腹立つ事を、我方よりはせずそしるもけすも無案内なる者ども、己れが贔負の人をほむれば能き事と存知むざとほめ、世間に類まれなる男をもそしれば、我贔負の人は威光あがると思ふ人は是れも女人の穿鑿なり、そしるもけすも無穿鑿の近付き衆が、分別なき取りさたより出来する、さなくは又よき人の各ひとつ道理に参るに付き、一段中能き物にて候ぞ、
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『甲陽軍鑑』品第四十三第三に忠節忠功のよき武士をそねむ人は我主君に忠節忠功の奉公なき故、よき武士をそねみ倒したがるは、いくさに大毒の人なり、ここをもつて陣の時、此人をきらふなり、第四に忠節忠功の人を嫌ふ者は、武士の家職を不存未練の侍故其陣をいやがり、敵の事計りを大にほめて、味方のよわる様に申ものなり、ここをもつて此人をきらふなり、
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『甲陽軍鑑』品第四十爰におひて高坂弾正いはく、人をほむるも、そしるも我位ほどさたする時は被官といへども、よき者へは悪大将心ざし及ばさる故、めもさながらとゞかぬなり、惣別よき大将は三万·四万の人数をつれても五千の敵に気遣給ふ事、主の小人数にて大軍を引請、どこぞのつがひに切てとらんと思ふたる大身のむかしより、いかほど大きく成給ひて後までも気遣なさるゝ事、我意地にあてがひてかくの分なり、
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