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甲陽軍鑑 / 品第十三

又武略と計策は別成るべし、計策とは長遠寺など大坂堺衆近江の淺井、伊勢の長島、越中の侍衆右の各へ信玄公よりの御書などもちて參ることなり、あなたよりも五度申し入れば四度は長遠寺ごときの出家なれば、是は武邊なうても成ることなり、是をさして計策と云ふ、扨て武畧は武邊をする人の武功より分別し出すをもつて、敵の强弱其外一切の見る所聞く、所見聞きはからふて、みかたの大事なきやうに仕るを武畧といふ、但物知りの上には計策も武畧も一ツにさたあるとも、物をしらざる人はそれ〳〵に名を附けていはねば、重ねて用の時事みだりになりて、かくすこと廣まる物にて候、武畧の時は武邊者、計策の時は出家·百姓·町人も然るべし、

新字:又武略と計策は別成るべし、計策とは長遠寺など大坂堺衆近江の浅井、伊勢の長島、越中の侍衆右の各へ信玄公よりの御書などもちて参ることなり、あなたよりも五度申し入れば四度は長遠寺ごときの出家なれば、是は武辺なうても成ることなり、是をさして計策と云ふ、扨て武略は武辺をする人の武功より分別し出すをもつて、敵の強弱其外一切の見る所聞く、所見聞きはからふて、みかたの大事なきやうに仕るを武略といふ、但物知りの上には計策も武略も一ツにさたあるとも、物をしらざる人はそれ〳〵に名を附けていはねば、重ねて用の時事みだりになりて、かくすこと広まる物にて候、武略の時は武辺者、計策の時は出家·百姓·町人も然るべし、

書き下し

又武略と計策は別成るべし、計策とは長遠寺など大坂堺衆近江の浅井、伊勢の長島、越中の侍衆右の各へ信玄公よりの御書などもちて参ることなり、あなたよりも五度申し入れば四度は長遠寺ごときの出家なれば、是は武辺なうても成ることなり、是をさして計策と云ふ、扨て武略は武辺をする人の武功より分別し出すをもつて、敵の强弱其外一切の見る所聞く、所見聞きはからふて、みかたの大事なきやうに仕るを武略といふ、但物知りの上には計策も武略も一ツにさたあるとも、物をしらざる人はそれ〳〵に名を附けていはねば、重ねて用の時事みだりになりて、かくすこと広まる物にて候、武略の時は武辺者、計策の時は出家·百姓·町人も然るべし、

現代語訳

また武略と計策は別のものである。計策とは、長遠寺などが大坂・堺衆、近江の浅井、伊勢の長島、越中の侍衆など右の各所へ、信玄公からの御書などを持って参ることである。向こうからも五度申し入れれば四度は長遠寺のような出家であるから、これは武辺がなくてもできることである。これを指して計策という。さて武略は、武辺をする人の武功から分別し出すことで、敵の強弱そのほか一切の見る所・聞く所を見聞きして計り、味方の大事のないようにするのを武略という。ただし物知りの上では計策も武略も一つに扱うこともあるが、物を知らない人は、それぞれに名を付けて言わないと、重ねて用いる時に事が乱れて、秘すべきことが広まるものである。武略の時は武辺者、計策の時は出家・百姓・町人でもよい。

解説

書状を運んで交渉するのが計策で、武辺の経験から敵の強弱を見極め味方を守るのが武略だと区別する。計策は出家や町人でも務まるが、武略は戦を知る者でなければできない。物をよく知る人は一つにまとめて語れても、そうでない者には名を分けて教えないと、使う時に混乱し秘密が漏れる。役割に名前を付けて区別することは、適材を配するための第一歩である。名前の区別が、仕事の区別になる。

この章句が説くこと

武略計策役割情報適材区別

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