国語 / 晋語九
董叔將娶於范氏,叔向曰:「范氏富,盍已乎!」曰:「欲為繫援焉。」他日,董祁愬於范獻子曰:「不吾敬也。」獻子執而紡於庭之槐,叔向過之,曰:「子盍為我請乎?」叔向曰:「求繫,既繫矣;求援,既援矣。欲而得之,又何請焉?」
新字:董叔将娶於范氏,叔向曰:「范氏富,盍已乎!」曰:「欲為繋援焉。」他日,董祁愬於范献子曰:「不吾敬也。」献子執而紡於庭之槐,叔向過之,曰:「子盍為我請乎?」叔向曰:「求繋,既繋矣;求援,既援矣。欲而得之,又何請焉?」
書き下し
董叔(とうしゅく)将に范氏に娶らんとす。叔向曰く、「范氏は富めり。盍(なん)ぞ已(や)めざる」と。曰く、「繫援(けいえん)と為さんと欲す」と。他日、董祁(とうき)范献子に愬(うった)えて曰く、「吾を敬せざるなり」と。献子執えて庭の槐(えんじゅ)に紡(つ)るす。叔向之を過(よぎ)る。曰く、「子盍ぞ我が為に請わざる」と。叔向曰く、「繫を求めて既に繫がれたり。援を求めて既に援(ひ)かれたり。欲して之を得たり。又何ぞ請わん」と。
現代語訳
晋の大夫董叔が范氏(范宣子の娘)を妻に迎えようとしたとき、叔向は言った。「范氏は富んでいる。やめておいてはどうか。」董叔は答えた。「范氏とつながって、後ろ盾にしたいのです。」後日、妻の董祁(范献子の妹)が兄の范献子に訴えた。「夫が私を敬いません。」献子は董叔を捕らえ、庭の槐の木に吊るした。叔向がそこを通りかかると、董叔は言った。「あなたから私のために許しを請うてくれませんか。」叔向は言った。「つながりを求めて、こうしてつながれた。引き上げてもらうことを求めて、こうして引き上げられた。望んだものを手に入れたのだ。このうえ何を請うことがあろう。」
解説
晋の大夫董叔が権門范氏と縁組みしようとしたとき、叔向が止めたが聞かず、のちに妻の訴えで范献子に槐の木へ吊るされた話である。韋昭は、叔向が止めたのは富めば必ず驕り、驕れば必ず人を侮るからだと解し、「紡」を懸けると読む。董叔が縁組みに求めた「繫援」は、繫がりと援けの意である。吊るされた董叔に助けを乞われた叔向は、その二字を文字どおりにとって、繫がれ、引き上げられて望みは叶ったではないかと突き放した。辛辣な機知であるが、打算で結んだ縁は相手の力に縛られる形でしか返ってこないという教えが込められている。強い相手と結べば安泰だと考えるのは今も同じであり、取引先や後ろ盾を選ぶとき、何を手に入れ何に縛られるのかを量れという戒めとして読める。
この章句が説くこと
国語晋語縁組驕り叔向
関連する章句
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