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古事記 / 下巻・近つ飛鳥と遠つ飛鳥

於是王子先飲。隼人後飲。故其隼人飲時。大鋺覆面。爾取出置席下之劔。斬其隼人之頸。乃明日上幸。故號其地。謂近飛鳥也。上到于倭。詔之。今日畱此間。爲祓禊而。明日參出。將拜神宮。故號其地。謂遠飛鳥也。故參出石上神宮。令奏天皇。政既平訖。參上侍之。爾召入而相語也。天皇於是以阿知直。始任藏官。亦給粮地。亦此御世。於若櫻部臣等。賜若櫻部名。又比賣陀君等。賜姓謂比賣陀之君也。亦定伊波禮部也。天皇之御年。陸拾肆歲。(壬申年正月三日崩)御陵在毛受也。

新字:於是王子先飲。隼人後飲。故其隼人飲時。大鋺覆面。爾取出置席下之剣。斬其隼人之頸。乃明日上幸。故号其地。謂近飛鳥也。上到于倭。詔之。今日畱此間。為祓禊而。明日参出。将拝神宮。故号其地。謂遠飛鳥也。故参出石上神宮。令奏天皇。政既平訖。参上侍之。爾召入而相語也。天皇於是以阿知直。始任蔵官。亦給粮地。亦此御世。於若桜部臣等。賜若桜部名。又比売陀君等。賜姓謂比売陀之君也。亦定伊波礼部也。天皇之御年。陸拾肆歳。(壬申年正月三日崩)御陵在毛受也。

書き下し

ここに王子先づ飲み、隼人後に飲む。故、その隼人飲む時、大鋺面を覆へり。ここに席の下に置きし剣を取り出でて、その隼人の頸を斬りたまひき。乃ち明日上り幸でましき。故、その地を号けて近つ飛鳥と謂ふ。倭に上り到りて、詔りたまひしく、「今日はここに畱まりて、祓禊を為して、明日参り出でて、神宮を拝まむ」とのりたまひき。故、その地を号けて遠つ飛鳥と謂ふ。故、石上神宮に参り出でて、天皇に奏さしめたまひしく、「政既に平け訖へて、参上り侍ふ」とまをさしめたまひき。ここに召し入れて相語りたまひき。天皇ここに阿知直を以て、始めて蔵官に任じ、また粮地を給ひき。またこの御世に、若桜部臣等に若桜部の名を賜ひ、また比賣陀君等に姓を賜ひて比賣陀の君と謂ひき。また伊波礼部を定めたまひき。天皇の御年、六十四歳。(壬申の年の正月三日に崩りましき。)御陵は毛受に在り。

現代語訳

王子がまず飲み、隼人があとで飲みました。隼人が飲む時、大きな鋺が顔を覆いました。そこで王子は、敷物の下に置いていた剣を取り出して、その隼人の首を斬りました。翌日、倭へ上りました。それでその地を近つ飛鳥と呼びます。倭に上り着いてから、「今日はここに留まって禊をし、明日参上して神宮を拝もう」と言われました。それでその地を遠つ飛鳥と呼びます。こうして石上神宮に参り出て、天皇に「政事はすでに平定し終えて、参上して控えております」と申し上げさせました。天皇は召し入れて語り合いました。天皇は阿知直を初めて蔵官に任じ、さらに食糧を賄う土地を与えました。またこの御世に、若桜部臣たちに若桜部の名を賜り、比売陀君たちには姓を賜って比売陀の君と呼ばせました。また伊波礼部を定めました。天皇の御年は六十四歳でした(壬申の年の正月三日に崩御)。御陵は毛受にあります。

解説

隼人を討ち取った弟が、禊をしてから兄に報告し、功績を認められる場面で、阿知直には蔵官の任と土地、氏族には名や姓が与えられます。近つ飛鳥・遠つ飛鳥の地名由来も語られます。古事記は、乱を鎮めた後に禊で穢れを払い、論功行賞で秩序を整える手順を示します。人の上に立つ者は、危機の収束後に区切りの儀式を置き、功ある者へ役職と処遇で報いて、組織を再構築することが大切だと考えられます。

この章句が説くこと

古事記履中天皇近つ飛鳥遠つ飛鳥蔵官論功行賞

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