導師導古典を学びたいすべての人に 法人向けワークシート法人向けワークシート

啓発録 / 又跋

右啓發錄。距今十許年前。余所手記也。其言雖淺近。顧當時憤悱之奮且勵。反非今日所及也。近頃偶撿舊篋獲之。因淨寫一本。示愛友子秉及弟持卿。以爲啓發地。嗚呼十年前旣如彼。而今日如此。則自今十年之後。其將何如乎。繙閱間不覺愀然。丁巳皐月景岳紀識時年二十又四

新字:右啓発録。距今十許年前。余所手記也。其言雖浅近。顧当時憤悱之奮且励。反非今日所及也。近頃偶撿旧篋獲之。因浄写一本。示愛友子秉及弟持卿。以為啓発地。嗚呼十年前既如彼。而今日如此。則自今十年之後。其将何如乎。繙閲間不覚愀然。丁巳皐月景岳紀識時年二十又四

書き下し

右啓発録は、今を距つること十許年前、余の手記する所なり。其の言浅近なりと雖も、顧みるに当時憤悱の奮ひ且つ励むは、反つて今日の及ぶ所に非ざるなり。近頃偶〻旧篋を検して之を獲たり。因りて一本を浄写し、愛友子秉及び弟持卿に示し、以て啓発の地と為す。嗚呼、十年前既に彼の如し。而るに今日此くの如し。則ち今より十年の後、其れ将に何如ならんとするか。繙閲の間、覚えず愀然たり。丁巳皐月、景岳紀識す。時に年二十又四。

現代語訳

この啓発録は、今から十年ほど前に私が書き留めたものです。その言葉は浅く手近なものですが、振り返ってみると、当時の、わからないことに憤り悶えながら奮い励んだ気持ちは、かえって今の私の及ぶところではありません。最近たまたま古い箱を調べてこれを見つけ、一冊に清書して、親しい友の子秉と弟の持卿に示し、啓発のよりどころとしました。ああ、十年前にすでにあのようであったのに、今日はこの有様です。そうだとすれば、これから十年後は、いったいどうなっているのでしょうか。読み返すうちに、思わず心が沈み、顔色を変えてしまいました。丁巳の五月、景岳が記す。時に二十四歳。

解説

この又跋は安政四年、二十四歳の左内が、約十年前の旧稿を清書して友と弟に示したときの識語です。漢文で書かれ、文体も本文とは違います。内容の中心は、当時の憤悱の奮励のほうが、いまの自分より勝っていたという反省です。若い日の自分の熱意に、成長したはずの自分が及ばないと感じる、その驚きと沈みが、愀然という語に出ています。さらに、十年前がああなら今日がこうで、では十年後はどうなるのかと問う、時間をまたいだ自問になっています。仕事の経験を重ねるほど、初心の熱量は薄れがちです。昔の記録を読み返して、いまの自分を測る習慣は、管理職の自己点検にも使えます。

この章句が説くこと

初心憤悱反省十年自己点検啓発録

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る