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啓発録 / 立志

志ナキ者ハ魂ナキ蟲ニ同ジ何時迄立チ候テモ丈ケノノブル事ナシ志一度相立候ヘバ其以後ハ日夜逐々成長致シ行キ候者ニテ萠芽ノ草ニ膏壤ヲアタヘタルガゴトシ古ヨリ俊傑ノ士ト申候人トテ目四ツ口二ツ有之ニテハナシ皆其志大ナルト逞シキトニヨリ遂ニハ天下ニ大名ヲ揚候ナリ世上ノ人多ク碌碌ニテ相果候ハ他ニ非ズ其志太ク逞シカラヌ故ナリ

新字:志ナキ者ハ魂ナキ虫ニ同ジ何時迄立チ候テモ丈ケノノブル事ナシ志一度相立候ヘバ其以後ハ日夜逐々成長致シ行キ候者ニテ萠芽ノ草ニ膏壤ヲアタヘタルガゴトシ古ヨリ俊傑ノ士ト申候人トテ目四ツ口二ツ有之ニテハナシ皆其志大ナルト逞シキトニヨリ遂ニハ天下ニ大名ヲ揚候ナリ世上ノ人多ク碌碌ニテ相果候ハ他ニ非ズ其志太ク逞シカラヌ故ナリ

書き下し

志なき者は魂なき虫に同じ。何時迄立ち候ても、丈けののぶる事なし。志一度相立候へば、其以後は日夜逐々成長致し行き候者にて、萠芽の草に膏壌をあたへたるがごとし。古より俊傑の士と申候人とて、目四つ口二つ有之にてはなし。皆其志大なると逞しきとにより、遂には天下に大名を揚候なり。世上の人多く碌碌にて相果候は、他に非ず、其志太く逞しからぬ故なり。

現代語訳

志のない者は、魂のない虫と同じです。いつまで経っても背丈が伸びることはありません。志が一度立てば、それ以後は日夜しだいに成長していくもので、芽生えた草に肥えた土を与えたようなものです。昔から俊傑の士と言われる人も、目が四つ口が二つあるわけではありません。みな志が大きくたくましかったから、ついには天下に大きな名を揚げたのです。世の中の人の多くが平凡なまま終わるのは、他でもなく、その志が太くたくましくないからです。

解説

志のない者は魂のない虫と同じだ、という強い比喩で始まる一節です。志が立てば、肥えた土に芽を出した草のように日夜伸びていくと言います。俊傑と呼ばれた人も目が四つ口が二つあるわけではなく、志が大きく逞しかったから名を揚げたのだ、と才能の差を退けているのが要点です。世の多くの人が平凡に終わるのは志が太く逞しくないからだという診断は厳しいものですが、誰にでも道が開けているという励ましでもあります。人材育成の場面では、能力の評価より先に、本人がどこまでを自分の射程に入れているかを見る視点を与えてくれます。

この章句が説くこと

立志志俊傑成長魂啓発録

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