韓非子 / 八姦第九
此皆俱進俱退,皆應皆對,一辭同軌以移主心者也。爲人臣者内事之以金玉玩好,外爲之行不法,使之化其主,此之謂「在旁」。三曰父兄。何謂父兄?曰:側室公子,人主之所親愛也;大臣廷吏,人主之所與度計也。此皆盡力畢議,人主之所必聽也。爲人臣者事公子側室以音聲子女,收大臣廷吏以辭言,處約言事,事成則進爵益禄,以勸其心,使犯其主,此之謂「父兄」。四曰養殃。何謂養殃?曰:人主樂美宫室臺池,好飾子女狗馬以娛其心,此人主之殃也。
新字:此皆倶進倶退,皆応皆対,一辞同軌以移主心者也。為人臣者内事之以金玉玩好,外為之行不法,使之化其主,此之謂「在旁」。三曰父兄。何謂父兄?曰:側室公子,人主之所親愛也;大臣廷吏,人主之所与度計也。此皆尽力畢議,人主之所必聴也。為人臣者事公子側室以音声子女,収大臣廷吏以辞言,処約言事,事成則進爵益禄,以勧其心,使犯其主,此之謂「父兄」。四曰養殃。何謂養殃?曰:人主楽美宮室台池,好飾子女狗馬以娯其心,此人主之殃也。
書き下し
此れ皆倶に進み倶に退き、皆応じ皆対へ、辞を一にし軌を同じくして以て主の心を移す者なり。人臣為る者内は之に事ふるに金玉玩好を以てし、外は之が為に不法を行ひ、之をして其の主を化せしむ、此を之れ在旁と謂ふ。三に曰く父兄。何をか父兄と謂ふ。曰く、側室の公子は、人主の親愛する所なり。大臣廷吏は、人主の与に度計する所なり。此れ皆力を尽くし議を畢くし、人主の必ず聴く所なり。人臣為る者公子側室に事ふるに音声子女を以てし、大臣廷吏を収むるに辞言を以てし、約に処りて事を言はしめ、事成れば則ち爵を進め禄を益し、以て其の心を勧め、其の主を犯さしむ、此を之れ父兄と謂ふ。四に曰く養殃。何をか養殃と謂ふ。曰く、人主宮室台池を美にするを楽しみ、子女狗馬を飾りて以て其の心を娯しましむるを好む、此れ人主の殃なり。
現代語訳
これら(側近や芸人たち)は皆そろって進みそろって退き、皆で応じ皆で答え、言葉を一つにし足並みをそろえて君主の心を動かす者たちである。臣下は内では彼らに金玉や珍しい品を贈って取り入り、外では彼らのために法に外れたことをしてやり、彼らに君主を感化させる。これを「そばにいる者」を使うという。三つ目は「父兄」である。父兄とは何か。側室の生んだ公子は君主が親しみ愛する者であり、大臣や朝廷の役人は君主が共に政務を計る者である。彼らは皆力を尽くして議論を重ね、君主が必ず聞き入れる者たちである。臣下は公子や側室に音楽や美女を贈り、大臣や役人を言葉巧みに取り込み、約束を取りつけて事を言わせ、事が成れば爵位を上げ俸禄を増やしてやって、その心を励まし、君主を犯させる。これを「父兄」を使うという。四つ目は「災いを養う」ことである。災いを養うとは何か。君主が宮殿や楼台や池を美しくすることを楽しみ、美女や犬馬を飾り立てて心を楽しませることを好むのは、君主にとっての災いである。
解説
関連する章句
-
『韓非子』八姦第九八に曰く四方。何をか四方と謂ふ。曰く、人に君たる者は、国小なれば則ち大国に事へ、兵弱ければ則ち強兵を畏る。大国の索むる所は、小国必ず聴き、強兵の加ふる所は、弱兵必ず服す。人臣為る者は、賦斂を重くし、府庫を尽くし、其の国を虚しくして以て大国に事へ、而して其の威を用ゐて其の君を求誘す。甚だしき者は兵を挙げて以て辺境に聚めて内に制斂し、薄き者は数々大使を内れて以て其の君を震はし、之をして恐懼せしむ、此を之れ四方と謂ふ。凡そ此の八者は、人臣の道りて姦を成し、世主の壅劫せられ、其の有する所を失ふ所以なり、察せざるべからず。明君の内に於けるや、其の色を娯しみて其の謁を行はず、私請せしめず。其の左右に於けるや、其の身を使ひて必ず其の言を責め、辞を益さしめず。其の父兄大臣に於けるや、其の言を聴くや必ず罰を以て後に任ぜしめ、妄りに挙げしめず。其の観楽玩好に於けるや、必ず之をして出づる所有らしめ、擅に進め擅に退くを使めず、群臣をして其の意を虞らしめず。
-
『韓非子』八姦第九凡そ人臣の道りて姦を成す所の者に八術有り。一に曰く同牀に在り。何をか同牀と謂ふ。曰く、貴夫人、愛孺子、便僻好色は、此れ人主の惑ふ所なり。燕処の虞に託し、酔飽の時に乗じて、其の欲する所を求む、此れ必ず聴かるるの術なり。
-
『韓非子』八姦第九人臣為る者は、民力を盡くし以て宮室臺池を美しくし、賦歛を重くし以て子女狗馬を飾り、以て其の主を娯ましめて、而して其の心を亂し、其の欲する所を従にせしめ、私利を其の間に樹つ
-
『韓非子』八姦第九優笑侏儒、左右近習、此れ人主の未だ命ぜずして唯唯、未だ使わずして諾諾、意に先だち旨を承け、貌をて色を察し、以て主の心に先だつ者なり。
-
『韓非子』八經第四十八故に明主は公私の分を審らかにし、利害の地を審らかにすれば、姦乃ち乘ずる所無し。亂の生ずる所は六なり。主母、后姬、子姓、弟兄、大臣、顯賢なり。吏に任じ臣を責むれば、主母放ならず。禮施等を異にすれば、后姬疑はず。勢を分かちて貳ならざれば、庶適爭はず。權籍を失はざれば、兄弟侵さず。下一門ならざれば、大臣擁せず。禁賞必ず行はるれば、顯賢亂れず。臣に二因有り、外内を謂ふなり。外を畏と曰ひ、内を愛と曰ふ。畏るる所の求め得られ、愛する所の言聽かるるは、此れ亂臣の因る所なり。外國の諸吏を置く者は、誅を結び親暱を重帑にすれば、則ち外籍らず。爵禄功に循ひ、請ふ者俱に罪せらるれば、則ち内因らず。外籍らず、内因らざれば、則ち姦宄塞がる。官節を襲ねて進み、以て大任に至るは、智なり。其の位至りて任大なる者は、三節を以て之を持す。曰く質、曰く鎮、曰く固。親戚妻子は、質なり。爵禄厚くして必なるは、鎮なり。參伍して責め怒るは、固なり。賢者は質に止まり、貪饕は鎮に化し、姦邪は固に窮す。忍びて制せざれば則ち下上り、小除かざれば則ち大いに誅す、而して名實當らば則ち之を徑す。生きては事を害し、死しては名を傷つくれば、則ち飲食を行ふ。然らずんば、而ち其の讎に與ふ、此れを陰姦を除くと謂ふなり。翳ふを詭と曰ひ、詭を易と曰ふ。功を見て賞し、罪を見て罰すれば、詭乃ち止む。是非泄れず、說諫通ぜざれば、易乃ち用ひられず。父兄賢良播出するを遊禍と曰ふ、其の患は鄰敵資多し。僇辱の人近習するを狎賊と曰ふ、其の患は忿を發し辱を疑ふの心生ず。怒を藏し罪を持して發せざるを增亂と曰ふ、其の患は徼幸妄舉の人起こる。大臣兩重衡を提げて踦ならざるを卷禍と曰ふ、其の患は家隆にして劫殺の難作る。脱易にして自ら神ならざるを彈威と曰ふ、其の患は賊夫酖毒の亂起こる。此の五患は、人主之を知らざれば、則ち劫殺の事有り。
-
『韓非子』八姦第九人臣為る者は諸侯の辯士を求め、国中の能く説く者を養ひ、之をして以て其の私を語らしむ。巧文の言、流行の辞を為し、之に示すに利勢を以てし、之を懼れしむるに患害を以てし、虚辞を施属して以て其の主を壊る、此を之れ流行と謂ふ。七に曰く威強。何をか威強と謂ふ。