家道訓 / 巻之四・用財上
一物を買ひて、買ひたるおひめをわすれ、或はおこたりておひめを返さゞることあらば、かへりみて早くかへすべし。是亦心を用ふべきことなり。一商人は、日々月々に財をめぐらし用ひて、其の利を得るを以て、世わたるたつきとす。もし商人の物をかひて、其のあたひをおそくつぐのへば、商人其の財をめぐらさずして、利を得がたし。たとひ後日に殘りなく返しあたふるとも、其のつぐのはざる間は、日々月々に得べき利を得ず。其の商人のうれひ思ひやるべし。大やうは、かはりの財なくば、不自由をこらへて物を買はざるべし。凡借れる物を返さず、買へる物のあたひをつぐのはざれば、其財主のうらみおしはかるべし。人のうらみいかりつもりての天禍おそるべし。
新字:一物を買ひて、買ひたるおひめをわすれ、或はおこたりておひめを返さゞることあらば、かへりみて早くかへすべし。是亦心を用ふべきことなり。一商人は、日々月々に財をめぐらし用ひて、其の利を得るを以て、世わたるたつきとす。もし商人の物をかひて、其のあたひをおそくつぐのへば、商人其の財をめぐらさずして、利を得がたし。たとひ後日に残りなく返しあたふるとも、其のつぐのはざる間は、日々月々に得べき利を得ず。其の商人のうれひ思ひやるべし。大やうは、かはりの財なくば、不自由をこらへて物を買はざるべし。凡借れる物を返さず、買へる物のあたひをつぐのはざれば、其財主のうらみおしはかるべし。人のうらみいかりつもりての天禍おそるべし。
書き下し
一物を買ひて、買ひたるおひめをわすれ、或はおこたりておひめを返さざることあらば、かへりみて早くかへすべし。是亦心を用ふべきことなり。一商人は、日々月々に財をめぐらし用ひて、其の利を得るを以て、世わたるたつきとす。もし商人の物をかひて、其のあたひをおそくつぐのへば、商人其の財をめぐらさずして、利を得がたし。たとひ後日に残りなく返しあたふるとも、其のつぐのはざる間は、日々月々に得べき利を得ず。其の商人のうれひ思ひやるべし。大やうは、かはりの財なくば、不自由をこらへて物を買はざるべし。凡借れる物を返さず、買へる物のあたひをつぐのはざれば、其財主のうらみおしはかるべし。人のうらみいかりつもりての天禍おそるべし。
現代語訳
物を買って、買った代金の負債を忘れたり、あるいは怠って負債を返さないことがあれば、顧みて早く返すべきです。これもまた心を用いるべきことです。商人は、日々月々に財をめぐらし用いて、その利を得ることで世渡りの手立てとしています。もし商人の物を買って、その代価を遅く支払えば、商人はその財をめぐらせられずに、利を得ることが難しくなります。たとえ後日に残りなく支払っても、その支払わない間は、日々月々に得るはずの利を得られません。その商人の憂いを思いやるべきです。たいていは、代わりの財がなければ、不自由をこらえて物を買わないようにすべきです。およそ借りた物を返さず、買った物の代価を支払わなければ、その財の持ち主の恨みを推し量るべきです。人の恨みや怒りが積もってもたらす天の災いは恐るべきです。
解説
この章句が説くこと
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