家道訓 / 巻之四・用財上
如何となれば、我身彼をすくふほど財あるは、天よりひとへに我が身にさいはひし給ふにあらず、貧苦なる者をすくはしめんとて、吾にたからをあたへ富ましめ給ふ理なれば、天の御心にしたがひて、貧人をすくひほどこすべし。もし是をすくはざれば、天の御心にそむきて、其のわざはひおそるべし。天道にそむきしわざはひ、たちまちに目に見え來らず、其のむくい、おそけれどものがれがたし。此の理必ずたがはず、うたがふべからず。天道おそるべし。
新字:如何となれば、我身彼をすくふほど財あるは、天よりひとへに我が身にさいはひし給ふにあらず、貧苦なる者をすくはしめんとて、吾にたからをあたへ富ましめ給ふ理なれば、天の御心にしたがひて、貧人をすくひほどこすべし。もし是をすくはざれば、天の御心にそむきて、其のわざはひおそるべし。天道にそむきしわざはひ、たちまちに目に見え来らず、其のむくい、おそけれどものがれがたし。此の理必ずたがはず、うたがふべからず。天道おそるべし。
書き下し
如何となれば、我身彼をすくふほど財あるは、天よりひとへに我が身にさいはひし給ふにあらず、貧苦なる者をすくはしめんとて、吾にたからをあたへ富ましめ給ふ理なれば、天の御心にしたがひて、貧人をすくひほどこすべし。もし是をすくはざれば、天の御心にそむきて、其のわざはひおそるべし。天道にそむきしわざはひ、たちまちに目に見え来らず、其のむくい、おそけれどものがれがたし。此の理必ずたがはず、うたがふべからず。天道おそるべし。
現代語訳
なぜなら、自分があの人々を救えるほどの財があるのは、天がひとえに自分の身に幸いされたのではなく、貧しく苦しむ者を救わせようとして、自分に宝を与えて富ませられた理なので、天の御心に従って、貧しい人を救い施すべきです。もしこれを救わなければ、天の御心に背いて、その災いは恐るべきものです。天の道に背いた災いは、たちまち目に見えて来ることはありませんが、その報いは遅くても逃れがたいのです。この理は必ずたがいません。疑ってはいけません。天の道は恐るべきです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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尚書・湯誥王克夏より帰り、亳(はく)に至り、誕(おほ)いに万方に告ぐ。王曰く、「嗟(ああ)爾(なんぢ)万方の有衆、明らかに予一人の誥を聴け。惟れ皇上帝、衷(ちゆう)を下民に降す。恒性有るに若(したが)ひ、克く厥(そ)の猷(みち)に綏(やす)んぜしむるは惟れ后なり。夏王徳を滅ぼし威を作(な)し、以て虐を爾万方の百姓に敷く。爾万方の百姓、其の兇害に罹(かか)り、荼毒(とどく)に忍びず、並びに辜(つみ)無きを上下の神祇に告ぐ。天道は善に福し淫に禍す。災を夏に降し、以て厥の罪を彰(あら)はす。肆(ゆゑ)に台(われ)小子、天命の明威を将(おこな)ひ、敢へて赦さず。敢へて玄牡を用ひて、敢へて昭らかに上天の神后に告げ、罪を有夏に請ふ。聿(ここ)に元聖を求め、之と力を戮(あは)せ、以て爾有衆の与(ため)に命を請ふ。上天孚(まこと)に下民を佑け、罪人黜伏す。天命僭(たが)はず、賁(かざ)ること草木の若く、兆民允(まこと)に殖(さか)ゆ。予一人をして、爾の邦家を輯寧(しふねい)せしむ。茲(ここ)に朕未だ戻(つみ)を上下に獲るや知らず。栗栗(りつりつ)として危懼し、将に深淵に隕(お)ちんとするが若し。凡そ我が造邦、彝(つね)に匪(あら)ざるに従ふこと無く、慆淫(たういん)に即(つ)くこと無かれ。各(おのおの)爾の典を守り、以て天休を承けよ。爾善有らば、朕敢へて蔽(おほ)はず。罪朕が躬に当たらば、敢へて自ら赦さず。惟れ簡(えら)ぶこと上帝の心に在り。
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『家道訓』巻之一・総論上年をへて久しく行へば、其の善つもりて大なり。楽しむべし。貧しき人すら斯くの如くなるべし。況や富める人をや。富みて財あまりある人は、天道みてるを虧く理なれば、人にほどこさずして、財を多くあつめおけるは、後は必ずわざはひ出来て、財をうしなひ、子孫に其の財をのこしがたし。財多き人は、尤父母にあつくし、親戚朋友の乏しきをにぎはし、貧しき人をたすけ、飢寒をすくひて広く人を愛し、善を行ふべし。夫人をすくひたすくるは天の好み給ふ所、天道は善にさいはひし給ふ理なれば、かくの如くひろく人を愛すること久しくば、天のよろこび給ふことふかくして、福をうくることうたがひなかるべし。天道は還すことをこのむといへり。善を行へば天よりさいはひを下し、悪を行へば天よりわざはひを下し給ふ。
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『童子問』卷中問ふ。如何なるか是れ王者の徳。曰く、天下に王たれば、則ち天下の天道たり。一国に君たれば、則ち一国の天道たり。一家の主たれば、則ち一家の天道たり。夫れ天に私覆無く、地に私載無く、日月に私照無し。窮谷深澗、牆陰屋下の地と雖も、太陽の気至らざる所靡し。一鱗介一萌芽の微も、其の気を稟けて以て生ぜざるは莫し。故に古昔の王者は、天道に法りて以て徳と為す。所謂天地の道を裁成輔相して、以て民を左右す、是れなり。故に其の位を天位と曰ひ、其の職を天職と曰ふ。書に曰く、天工人其れ之に代はる、と。百官有司も、亦当に王者の心を以て心と為すべきを明らかにするなり。伊尹曰く、天下の民、匹夫匹婦、堯舜の沢を被るに与らざる者有らば、己推して之を溝中に内るるがごとし、と。此れ伊尹の天職を以て己の任と為すなり。民は至賤なり、王は至貴なり。然るに民の父母を以て王者の美称と為すは、何ぞや。夫れ子の父母に於けるや、其の身を後にして其の父母を先にし、其の身を捨てて以て其の父母を保ち、死生患難、惟其の父母を之れ愛護す。王者は天下の楽しみを楽しみ、天下の憂ひを憂へ、民を以て其の赤子と為す。故に民も亦其の上を親戴すること、猶ほ其の父母のごとく、響きのごとく応じ影のごとく従ひ、唯其の欲する所のままにして、天下に敵すべきの愾無く、四方に禦ぐべきの寇無し。東面して征すれば西夷怨み、南面して征すれば北狄怨む。書に曰く、吾が后を徯つ、后来たらば其れ蘇らん、と。民の父母を以て王者の美称と為す、亦宜ならずや。
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『家道訓』巻之四・用財上鹿台の財、鉅橋の粟、おごりてはたもちがたし。鄧通が銅山の財、石崇が金谷の富も、不徳なればつひに失へり。又官禄をむさぼり、財宝をあつめて子孫にのこせども、我が身に仁愛を行はずして、積善なければ天道にそむきて、後の余慶なし。其の上子孫不肖にしては、其の官禄と財宝をたもちがたし。只陰徳を行ひて、つねに善をなし、ひろく人をすくひ、子孫に其の余福をのこし、又義方の教をなして、子孫の行を正しくせんこそ、子孫のさいはひとはなるべけれ。我が身一人にて、福禄を多くうけ過せば、天道みてるをかきて、子孫には福のこらず。我が身みづからさいはひの満てるをかきて、我がため子孫のため、禍をのがるべし。是自福をうけ過さずして、子孫に福をのこしあたふるなり。是智者のする所なり。
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孔子家語・大婚解公曰く、「君子何ぞ天道を貴ぶや。」孔子曰く、「其の已まざるを貴ぶなり。日月東西相従いて已まざるが如きなり。是れ天道なり。閉じずして能く久しき、是れ天道なり。無為にして物成る、是れ天道なり。已に成りて之を明らかにする、是れ天道なり。」公曰く、「寡人且つ愚冥なり、幸いに子の心を煩わさん。」孔子蹴然として席を避けて対えて曰く、「仁人は物に過ぎず、孝子は親に過ぎず。是の故に仁人の親に事うるや天に事うるが如く、天に事うるや親に事うるが如し。此を孝子の身を成すと謂う。」公曰く、「寡人既に此くの如き言を聞く、後の罪を如何せんこと無きか。」孔子対えて曰く、「君子此の言に及ぶは、是れ臣の福なり。」
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