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家道訓 / 巻之二・総論中

一養父母となり養子となる者、人ごとに賢者にあらず。養父母となりては我が生める所にあらざれば、養子にまことの愛なし。養子となりては、我を生めるおやにあらざれば、まことの孝なし。父愛なく子孝なくして、養父養子心にかなはざることを、たがひにうらみいかりて後、義絕し、あだかたきとなるもの世に多し。子なくんば、其の同姓の內にて、年長じて後、よき生質の人をえらびて養ふべし。同姓の子弟によき人品なくんば、遠慮あるべし。又はじめは養子を愛すれども、實子を生んでのち私欲おこり、養子をうとんじ憎む者多し。是亦はなはだみにくし。心かろくして、みだりにはやく他の子を養ひて、後悔すべからず。故に養子をするには、よくえらんでおそきに宜し。

新字:一養父母となり養子となる者、人ごとに賢者にあらず。養父母となりては我が生める所にあらざれば、養子にまことの愛なし。養子となりては、我を生めるおやにあらざれば、まことの孝なし。父愛なく子孝なくして、養父養子心にかなはざることを、たがひにうらみいかりて後、義絶し、あだかたきとなるもの世に多し。子なくんば、其の同姓の内にて、年長じて後、よき生質の人をえらびて養ふべし。同姓の子弟によき人品なくんば、遠慮あるべし。又はじめは養子を愛すれども、実子を生んでのち私欲おこり、養子をうとんじ憎む者多し。是亦はなはだみにくし。心かろくして、みだりにはやく他の子を養ひて、後悔すべからず。故に養子をするには、よくえらんでおそきに宜し。

書き下し

一養父母となり養子となる者、人ごとに賢者にあらず。養父母となりては我が生める所にあらざれば、養子にまことの愛なし。養子となりては、我を生めるおやにあらざれば、まことの孝なし。父愛なく子孝なくして、養父養子心にかなはざることを、たがひにうらみいかりて後、義絶し、あだかたきとなるもの世に多し。子なくんば、其の同姓の内にて、年長じて後、よき生質の人をえらびて養ふべし。同姓の子弟によき人品なくんば、遠慮あるべし。又はじめは養子を愛すれども、実子を生んでのち私欲おこり、養子をうとんじ憎む者多し。是亦はなはだみにくし。心かろくして、みだりにはやく他の子を養ひて、後悔すべからず。故に養子をするには、よくえらんでおそきに宜し。

現代語訳

養父母となる者も養子となる者も、人ごとに賢者ではありません。養父母となっては、自分が生んだ子ではないので、養子に本当の愛がありません。養子となっては、自分を生んだ親ではないので、本当の孝がありません。父に愛がなく子に孝がなくて、養父と養子が心にかなわないことを互いに恨み怒った後、縁を切って敵同士となる者が世に多いのです。子がなければ、同姓の内で、年長じた後に、よい生まれつきの人を選んで養うべきです。同姓の子弟によい人柄の者がいなければ、よく考えるべきです。また初めは養子を愛しても、実子が生まれた後に私欲が起こって、養子を疎んじ憎む者が多いのです。これもまたはなはだ見苦しいことです。心軽く、むやみに早く他人の子を養って、後悔してはいけません。ですから養子をするには、よく選んで遅いほうがよいのです。

解説

家の存続のために養子縁組が盛んだった江戸時代の実情を踏まえた教えです。血のつながらない親子は愛も孝も薄くなりがちで、不仲になって縁を切り敵同士になる例が多いと益軒は言います。とくに、実子が生まれた後に養子を疎んじる親を見苦しいと戒めます。だから養子は同姓の中から、成長して人柄の見える年になってから慎重に選び、急がないのがよいとします。事業承継や後継者選びでも、急いで決めず、人物を見極めてから託すことの大切さに通じます。

この章句が説くこと

養子家孝後継者家族

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