家道訓 / 巻之二・総論中
一妾を求むるには、其の性行のよきと、良家の女とをえらぶべし。良家とは、族姓いやしからずして、風俗そだちよきをいふ。其の人品のよしあしと、家法のよしあしをえらぶべし。人の子は、父よりも母によく似る理あり。故に、其の心の賢愚も勇怯も、多くは母に似るためしあり。勇者の女子のうめる子は勇あり。
書き下し
一妾を求むるには、其の性行のよきと、良家の女とをえらぶべし。良家とは、族姓いやしからずして、風俗そだちよきをいふ。其の人品のよしあしと、家法のよしあしをえらぶべし。人の子は、父よりも母によく似る理あり。故に、其の心の賢愚も勇怯も、多くは母に似るためしあり。勇者の女子のうめる子は勇あり。
現代語訳
妾を求めるには、その性質や行いがよいことと、良家の娘であることを選ぶべきです。良家とは、家柄が卑しくなく、風俗や育ちのよいことをいいます。その人柄の善し悪しと、家の法の善し悪しを選ぶべきです。人の子は、父よりも母によく似る理があります。ですから、その心の賢愚も勇怯も、多くは母に似る例があります。勇者の娘が生んだ子は勇があります。
解説
跡継ぎを得るために妾を置くことが武家で珍しくなかった時代の教えで、今の価値観とは大きく隔たりがあります。ただ益軒がここで強調しているのは、子は母に似やすいので、母となる人の人柄と育った家の気風をよく見よということです。胎教を重んじ、母親の心がけが子に伝わると考えた和俗童子訓の教育観と同じ流れにあります。子の人柄を形づくるのは血筋だけでなく、育てる人の心と家庭の気風だ、という点に今でも読みとるべき意味があります。
この章句が説くこと
家母子育て家風人柄
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