重職心得箇条 / 第十二条
大臣たるもの胸中に定見ありて、見込みたる事を貫き通すべき元より也。然れども又虚懐公平にして人言を採り、沛然と一時に転化すべき事もあり。此の虚懐転化なきは我意の弊を免れがたし。能々(よくよく)視察あるべし。
書き下し
大臣たるもの胸中に定見ありて、見込みたる事を貫き通すべき元より也。然れども又虚懐公平にして人言を採り、沛然と一時に転化すべき事もあり。此の虚懐転化なきは我意の弊を免れがたし。能々(よくよく)視察あるべし。
現代語訳
大臣たる者は胸中に定見を持ち、見込んだことを貫き通すべきである。それはもとよりのことだ。しかしまた、心を空しくし公平にして人の言葉を採り、沛然として一気に方針を転じるべきこともある。この「虚懐」と「転化」がなければ、我意の弊害を免れることは難しい。よくよく見きわめるべきである。
解説
大臣は胸中に定見を持ち、見込んだことを貫き通すのはもとより当然だと一斎は言います。ただし、心を空しくして公平に人の言葉を採り、一気に方針を転じるべき場合もある、と続けます。ここでいう「虚懐」は、先入観を空にして人の話を聞く心、「転化」は沛然と、つまり勢いよく一時に改めることです。この二つがなければ我意の弊を免れません。信念を貫く強さと、誤りに気づいたときに素早く転じる柔軟さの両立は、経営判断の現場でもっとも難しい課題の一つです。
この章句が説くこと
定見虚懐転化我意柔軟重職心得箇条
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