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法句経 / 第二十四 愛欲の部 三四四〜三四六 堅き縛

三四四 人あり(在家の)林を出でて(行者の住處なる)林に心を委ね、(在家愛欲の)林を脱して復(愛欲の)林に趣くときは、見よ、此の人は是れ已に解脱して再び縛を求むるなり。 三四五 鐵、木、又は草の縛を賢人は堅固なりと謂はず、珠、環、妻、子に於ける染著顧戀は、 三四六 重く、緩く、脱れ難ければ賢人は此を堅き縛と謂ふ、(彼等は)顧慮なく此を切り欲樂を斷ちて遍歴す。

新字:三四四 人あり(在家の)林を出でて(行者の住処なる)林に心を委ね、(在家愛欲の)林を脱して復(愛欲の)林に趣くときは、見よ、此の人は是れ已に解脱して再び縛を求むるなり。 三四五 鉄、木、又は草の縛を賢人は堅固なりと謂はず、珠、環、妻、子に於ける染著顧恋は、 三四六 重く、緩く、脱れ難ければ賢人は此を堅き縛と謂ふ、(彼等は)顧慮なく此を切り欲楽を断ちて遍歴す。

書き下し

三四四 人あり(在家の)林を出でて(行者の住処なる)林に心を委ね、(在家愛欲の)林を脱して復(愛欲の)林に趣くときは、見よ、此の人は是れ已に解脱して再び縛を求むるなり。 三四五 鉄、木、又は草の縛を賢人は堅固なりと謂はず、珠、環、妻、子に於ける染著顧恋は、 三四六 重く、緩く、脱れ難ければ賢人は此を堅き縛と謂ふ、(彼等は)顧慮なく此を切り欲楽を断ちて遍歴す。

現代語訳

ある人が、(在家の)林を出て(修行者の住む)林に心をゆだね、(在家の愛欲の)林を脱しながら、再び(愛欲の)林へ向かうとき、見よ、この人はすでに解き放たれていながら、再び縛りを求めているのである。鉄や木や草の縛りを、賢い人は堅いとは言わない。宝珠や腕輪、妻や子に染まり執着して顧み恋い慕う思いこそ、重く、ゆるく、しかも逃れがたいので、賢い人はこれを堅い縛りと言う。(賢い人は)顧みることなくこれを断ち切り、欲の楽しみを断って遍歴する。

解説

愛欲の部の三偈で、三四五と三四六は一続きの文になっている。三四四は「林」という語の掛け合わせが巧みである。パーリ語のヴァナには森と欲望の二つの意味があり、欲の林を出て修行の林に入りながら、また欲の林へ戻る人を、自由になったのに再び縄を求める者と言う。続く二偈は縛りの堅さを問い直す。鉄や木や草の縄は、目に見え、切ろうと思えば切れる。本当に堅いのは、宝飾や妻子への執着のほうだという。しかもそれは「重く、緩く、脱れ難し」と形容される。緩いのに逃れられない。締めつけを感じないからこそ、縛られていることに気づかない。家族への情を否定する言葉としてではなく、見えない縛りの性質を語る言葉として読みたい。制度やルールより、心地よい慣れのほうが人や組織を動けなくしていることは少なくない。

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