法句経 / 第十四 仏陀の部 一八七〜一八九 山や森に帰依する人々
一八七 天上の欲樂に於ても悦びを得ず、愛盡を悦ぶものは正等覺者の弟子なり。 一八八 衆人怖に逼められて、多くの山、叢林、園苑、孤樹、靈廟に歸依す。 一八九 此の歸依は勝に非ず、此の歸依は尊に非ず、此の歸依に因つて能く諸の苦を解脱せず。
新字:一八七 天上の欲楽に於ても悦びを得ず、愛尽を悦ぶものは正等覚者の弟子なり。 一八八 衆人怖に逼められて、多くの山、叢林、園苑、孤樹、霊廟に帰依す。 一八九 此の帰依は勝に非ず、此の帰依は尊に非ず、此の帰依に因つて能く諸の苦を解脱せず。
書き下し
一八七 天上の欲楽に於ても悦びを得ず、愛尽を悦ぶものは正等覚者の弟子なり。 一八八 衆人怖に逼められて、多くの山、叢林、園苑、孤樹、霊廟に帰依す。 一八九 此の帰依は勝に非ず、此の帰依は尊に非ず、此の帰依に因つて能く諸の苦を解脱せず。
現代語訳
天上の欲楽においてさえ喜びを見いださず、渇愛が尽きることを喜ぶ者は、正しく悟った者(仏陀)の弟子である。人々は恐れに追いつめられて、多くの山や、叢林や、園や、一本立ちの樹や、霊廟に帰依する。しかしこの帰依は勝れたものではなく、この帰依は尊いものではない。この帰依によっては、もろもろの苦しみから解き放たれることはない。
解説
「仏陀の部」の三偈で、続く一九〇〜一九二偈と対になっている。まず仏弟子とは、天上の快楽すら喜ばず、渇愛の尽きることを喜ぶ者だと定義される。そのうえで、世の人々の帰依の姿が描かれる。山、森、園、一本だけ立つ樹、霊廟。古代インドでは、こうした場所に精霊や神が宿るとされ、人々は恐れに迫られてそこへ祈りに行った。この経はそれを頭ごなしに否定するのではなく、「勝に非ず」「尊に非ず」と、苦からの解放には届かないと静かに言う。要は「怖に逼められて」という動機にある。恐れから逃れようとして何かにすがるとき、人は目の前の拠りどころを手当たり次第につかむ。だがそれは恐れの原因には触れない。不安なときに飛びつく解決策が、本当に問題を解くのかを問い直す視点を与えてくれる。
関連する章句
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