抱朴子外篇 / 自敘
至於糧用窮匱急,合湯藥則喚求朋類,或見濟,亦不讓也。受人之施,必皆久久漸有以報之,不令覺也。非類則不妄受其饋致焉。洪所食有旬日之儲,則分以濟人之乏;若殊自不足,亦不割己也。不為皎皎之細行,不治察察之小廉。村裏凡人之謂良守善者,用時,或齎酒餚候洪,雖非儔匹,亦不拒也。後有以答之,亦不登時也。洪嘗謂史云不食於昆弟,華生治潔於昵客,蓋邀名之僞行,非廊廟之遠量也。
新字:至於糧用窮匱急,合湯薬則喚求朋類,或見済,亦不譲也。受人之施,必皆久久漸有以報之,不令覚也。非類則不妄受其饋致焉。洪所食有旬日之儲,則分以済人之乏;若殊自不足,亦不割己也。不為皎皎之細行,不治察察之小廉。村裏凡人之謂良守善者,用時,或齎酒餚候洪,雖非儔匹,亦不拒也。後有以答之,亦不登時也。洪嘗謂史云不食於昆弟,華生治潔於昵客,蓋邀名之偽行,非廊廟之遠量也。
書き下し
糧用の窮匱急に至り、湯薬を合うれば則ち朋類を喚び求め、或いは済わるるも、亦た譲らざるなり。人の施しを受くれば、必ず皆久久として漸く以て之に報ゆる有り、覚らしめざるなり。非類なれば則ち妄りに其の饋致を受けず。洪の食う所に旬日の儲え有れば、則ち分けて以て人の乏しきを済い、若し殊に自ら足らざれば、亦た己を割かざるなり。皎皎たる細行を為さず、察察たる小廉を治めず。村里の凡人の良守善と謂う者、時に用い、或いは酒餚を齎して洪を候うに、儔匹に非ずと雖も、亦た拒まず。後に以て之に答うる有るも、亦た登時にせず。洪嘗て謂えらく、史云の昆弟に食らわず、華生の洁きを昵客に治むるは、蓋し名を邀むるの偽行にして、廊廟の遠量に非ずと。
現代語訳
食糧が窮まって差し迫り、薬を調えるには友人を呼び寄せて求め、あるいは救われても、辞退しない。人の施しを受ければ、必ずみな長い時間をかけて少しずつ報い、気づかれないようにする。仲間でない者からは、むやみにその贈り物を受けない。私の手元に十日分の蓄えがあれば、分けて人の乏しきを助け、もし自分が特に不足していれば、自分を削ってまで分けない。きっぱりとした細かな行いを立てず、潔癖な小さな廉潔を修めない。村里の凡人で、良い守りよい行いをすると言われる者が、折々に酒や肴を携えて私を訪ねてくるとき、仲間でなくても拒まない。のちに答礼するが、すぐには行わない。私はかつて、史云が兄弟の食事に預からなかったことや、華生が親しい客に潔癖を示したことは、おそらく名声を求める偽りの行いで、朝廷に立つ者の遠大な度量ではないと考えた。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
抱朴子外篇・自敘至りて近人の、或いは其の長ずる所を恃みて人の短き所を軽んずるを患う。洪は忝くも儒者の末と為り、人と言う毎に、常に其の知る所を度りて之を論じ、強いて之を引きて彼の聞かざる所に造らしめず。学士と弁識する所有るに及びては、毎に綱領を挙ぐ。若し短きを惜しみて、心義を解し難きに値えば、但だ粗ぼ意の向く所を説き、以て発悟せしむるに足らしむるのみにして、理を苦しめて、彼をして率ね自ら還るを得ざらしめず。彼の静心なる者は、詳らかに存して之を思えば、則ち多く自ら覚りて之を得る者あり。与に言う可からずと度るものは、或いは問うこと有りと雖も、常に辞するに知らざるを以てし、以て辞を費やすの過ちを免る。洪は性深く官長を乾煩するを好まず。少きより長ずるに及ぶまで、曾て知己の抑えらるる者数人を救い、已むを得ずして、位に在る者に言う有るも、然れども其の人は皆洪の恤えるを知らず。其の非理に陥るを見るに忍びず、密かに自ら之を営むのみ。其の余は親至の者と雖も、事を在り勢を秉りて、洪と惜しむ無き者は、終に片言半字を以て、少しも之を累わさざるなり。
-
抱朴子外篇・自敘恒に復た周からず、毎に論者に譏責せらる。洪は咎を引きて恤えず。意は苟くも余す無く、病の為に心に違うも、顧みて己に愧じざるのみ。亦た何ぞ人の亮とせざるを理めんや。唯だ明鑒の士のみ、乃ち其の信に抱朴にして、以て高きを養うに非ざるを恕す。世人は多く親しみを豫ぶるの好みを慕い、暗室の密を推すも、洪は以為えらく、人を知ること甚だ易からず、上聖の難しとする所なり。浮雑の交わりは、口は合いて神は離れ、益無くして損有り。朱公叔の一切に之を絶つが如きこと能わずと雖も、且つ必ず清澄し詳悉して、乃ち意に処す。又た此が為に憎まるる者は甚だ衆きも改めず。馳逐して苟くも達し、勢門に側立する者は、又た共に洪の己に異なるを疾み、疵毀せられ、洪を謂いて物に傲り俗を軽んずと為す。而れども洪の人と為りは、心を信じて行い、毀誉は皆聞かざるに置く。
-
抱朴子外篇・自敘洪の人と為りや、騃野にして、性は鈍く口は訥、形貌は醜陋なれども、終に弁じて自ら矜飾せず。冠履は垢弊し、衣は或いは襤褸なれども、或いは恥じず。俗の服用は、屢しば改まり、或いは忽ち広領大帯、或いは身を促め袖を修くし、或いは長裾地に曳き、或いは短くして脚を蔽わず。洪は常を守るを期し、世の変に随わず。言えば則ち率ね実にして、嘲戯を杜絶し、其の人を得ざれば、終日默然たり。故に邦人は鹹な之を称して抱朴の士と為す。是を以て洪は書を著し、因りて以て自ら号す。洪は稟性尪羸にして、之に兼ねて疾多く、貧にして車馬無く、徒行に堪えず、行くも亦た性の好まざる所なり。又た弊俗の本を捨て末を逐い、交游の過差なるを患う。故に遂に筆を撫して閒居し、静を蓽門に守りて趨従する所無く、権豪の徒に至りては、密跡に在りと雖も、或いは相い識る莫し。衣は寒を辟けず、室は漏るるを免れず、食は虚を充たさず、名は戸を出でざるも、憂うる能わず。貧にして僮僕無く、籬落は頓決し、荊棘は庭宇に叢り、蓬莠は階雨に塞がる。榛を披きて門を出で、草を排して室に入る。論ずる者は以て意は遠きに忽近にして恕せずと為す。其の役に乏しきなり。暁謁せず、故に初めより官長に見ゆるを修めず。大喪を吊い、困疾を省るに至りては、乃ち心に自ら勉めんと欲し、強いて必ず至らしむるも、居疾は少しく健なり。
-
抱朴子外篇・自敘洪は尤も無義の人を疾む。農桑の本業に勤めず、非義の奸利を慕う。郷論を持する者は、選挙を売りて以て謝を取り、威勢有る者は、符疏を解きて以て財を索む。或いは罪人の賂有り、或いは理有るの家を枉ぐ。或いは逋逃の薮と為り、亡命の人を饗す。或いは民丁を挟み使いて、以て公役を妨ぐ。或いは強いて銭物を収め、以て貴価を求む。或いは市肆を占錮し、百姓の利を奪う。或いは人の田地を割き、孤弱の業を劫す。官府の間を惚恫して、以て掊剋の益を窺い、内は以て妻妾に誇り、外は以て名位を釣る。其の此くの如き者は、与に交わらず。是に由りて俗人は洪を憎む、己を疾むなり、自然に疏絶す。故に巷に車馬の跡無く、堂に異志の賓無く、庭は雀羅を設く可く、而して几筵に塵を積む。
-
抱朴子外篇・自敘洪は有識より以て将に老いんとするに逮ぶまで、口は人の非に及ばず、人の私を説かざるは、乃ち自然なり。僕豎に其の短き所、羞ずる所の事有りと雖も、以て之を戯れず。未だ嘗て人物の優劣を論評せず、人交の好悪を訶譴するを喜ばず。或いは尊長に逼り問われ、辞するも獲ざるに、其の人を論ずるや、則ち独り彼の体中の勝事を挙ぐるのみ。其の文を論ずるや、則ち其の得たる所の佳なる者を撮りて、其の病累を指摘せず。故に毀誉の怨み無し。貴人の時に或いは官吏民の甲乙は何如と問う。其の清高閑能なる者は、洪は其の快事を指説す。其の貪暴暗塞なる者は、対うるに偶たま識悉せずを以てす。洪は此に由りて頗る譏責せらるるも、顧護すること太だ多く、臧否を明弁して皂白を区分せしむる能わずとするも、洪は終に敢えて改めず。毎に世人の好んで人物を論ずる者の、比方倫匹、未だ必ずしも当允ならず、而して褒貶与奪、或いは準格を失うを見る。誉めらるる者は自ら己が分と謂い、未だ必ずしも徳を信ぜず。侵さるる者は則ち之を恨むこと骨に入り、血讐より劇し。洪は益ます以て戒めと為し、遂に復た士人に言及せず。門宗の子弟と雖も、其の称は両ながら皆な邦族に付し、軽々しく其の価数を為さず。
-
抱朴子外篇・交際窮と達とは、求むる能わず。然れども軽薄の人、無分の子は、曽て俄然の節を疾非する無く、星言に宵征し、其の門廷を守り、翕然として諂笑し、卑辞して色を悦ばせ、壺を提げ贄を執り、時に行きて媚を索む。勤苦して久しきを積むも、猶お嫌い拒まれ、乃ち行きて長者に因托して以て之を構合せしむ。其の受けらるるや、則ち踊悦すること幽系の赦に遇うよりも過ぎ、其の合わざるや、則ち懊悴すること喪病の己に逮ぶよりも劇し。通塞は命有り、道は正直を貴び、否泰は之を自然に付す。津途何ぞ多く咨るに足らん。嗟乎細人、豈に鄙しからずや。人情の同じからざる、一に何ぞ遠きや。每に為に慨然とし、彼を助けて羞ず。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る