抱朴子外篇 / 彈禰
曹公嘗切齒欲殺之,然復無正有入法應殆之罪,又惜有殺儒生之名,乃謫作鼓吏,衡了無悔情恥色,乃縛角於柱,口就吹之,乃有異聲,並搖鼓兆擊鼓,聞者不知其一人也。而論更劇,無所顧忌,尋亡走投荊州牧劉表,表欲作書與孫權,討逆於時已全據江東,帶甲百萬,欲結輔車之援,與共距中國,使諸文士立草,盡思而不得表意。乃示衡。衡省之曰:「但欲使孫左右持刀兒視之者,此可用爾,儻令張子布見此,大辱人也。」即摧壞投地,表悵然有怪色,謂衡曰:「為了不中蕓鋤乎?惜之也。
新字:曹公嘗切歯欲殺之,然復無正有入法応殆之罪,又惜有殺儒生之名,乃謫作鼓吏,衡了無悔情恥色,乃縛角於柱,口就吹之,乃有異声,並揺鼓兆撃鼓,聞者不知其一人也。而論更劇,無所顧忌,尋亡走投荊州牧劉表,表欲作書与孫権,討逆於時已全拠江東,帯甲百万,欲結輔車之援,与共距中国,使諸文士立草,尽思而不得表意。乃示衡。衡省之曰:「但欲使孫左右持刀児視之者,此可用爾,儻令張子布見此,大辱人也。」即摧壊投地,表悵然有怪色,謂衡曰:「為了不中蕓鋤乎?惜之也。
書き下し
曹公嘗て切歯して之を殺さんと欲するも、然れども復た正に法に入り殆うきに応ずるの罪無く、又た儒生を殺すの名を惜しみ、乃ち謫して鼓吏と作す。衡は了に悔情恥色無く、乃ち角を柱に縛り、口もて就きて之を吹けば、乃ち異声有り、並びに鼓を搖らし兆して鼓を撃ち、聞く者は其の一人なるを知らず。而るに論は更に劇しく、顧忌する所無し。尋いで亡げ走りて荊州牧の劉表に投ず。表は書を孫権に作らんと欲す。討逆は時に已に江東を全く拠し、帯甲百万、輔車の援を結び、与に共に中国を距がんと欲し、諸文士をして草を立てしめ、思いを尽くすも表の意を得ず。乃ち衡に示す。衡之を省て曰く、「但だ孫の左右をして刀を持つ児をして之を視しめんと欲する者は、此れ用う可きのみ。儻し張子布をして此れを見しめば、人を大いに辱むるなり」と。即ち摧き壊して地に投ず。表は悵然として怪しむ色有り、衡に謂いて曰く、「為に了に蕓鋤に中らざるか。之を惜しむなり。
現代語訳
曹公はかつて歯ぎしりして彼を殺そうとしたが、法に当てはめて死罪にすべき罪はなく、また儒生を殺したという名を惜しんで、遷して鼓吏とした。禰衡は少しも悔いる様子も恥じる色もなく、角笛を柱に縛りつけ、口を寄せて吹くと、珍しい音が出た。さらに鼓を揺らして拍子をとって打ち、聞く者はそれが一人の演奏だとは思わなかった。それでも彼の議論はいっそう激しくなり、はばかるところがなかった。まもなく逃げて荊州牧の劉表のもとに身を投じた。劉表は孫権に書状を送ろうとした。討逆はそのときすでに江東を完全に押さえ、武装兵は百万を数え、唇歯の援助を結んで共に中原を拒もうと望んでいた。そこで文士たちに草稿を書かせたが、思いを尽くしても劉表の意に合わなかった。そこで禰衡に示した。禰衡はそれを見て言った。「ただ孫氏の側近で刀を持つ童子に見せようというなら、これでも使えるだろう。もし張子布(張昭)に見られたら、人をひどく恥じ入らせるものだ」と。そう言ってすぐに引き裂いて地に投げ捨てた。劉表は残念そうに不審な顔をして、禰衡に言った。「まったく使い物にならないというのか。惜しいことだ。
解説
この章句が説くこと
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抱朴子外篇・彈禰衡紙筆を索め、便ち更めて之を書く。衆の作る所十余通、衡は凡そ一たび歴視するのみ、暗記して之を書き、畢りて以て表に還す。表は以て主に還し、或いは作る所の本を録する有り、以て之を比校するに、一字の錯も無し、乃ち各おの大いに驚く。表は乃ち衡に請いて更に作らしむ。衡は即ち作り成し、手は停輟せず、表は甚だ以て佳しと為して施用す。衡の驕傲は転た甚だしく、一州の人士、憎恚せざる莫く、表も亦た復た堪えず、之を殺さんと欲す。或いは諫めて以為えらく、曹公は名ばかり厳酷なれども、猶お能く容忍す、衡は少くして虚名有り、若し一朝にして之を殺さば、則ち天下の遊士、復た足を荊楚に擬する者莫からん、と。表は遂に之を遣わす。衡は走りて夏口に到り、将軍黄祖に依る。祖は待するに上賓を以てす。祖の大児黄射は、衡と偕に行き、人の墓下を過ぎ、倶に碑銘を読むこと一過して去る。
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抱朴子外篇・彈禰抱朴子曰く、漢末に禰衡なる者有り、年二十有三、孔文挙は歯知命を過ぎ、身は九列に居り、文学は群に冠たり、少長誉を称し、名位殊絶なるに、衡を布衣に友とし、又た之を漢朝に表薦し、以て宜しく家より起こして台郎と作すべしと為す。云う、「惟れ嶽神を降し、異人並び出ず。目の一たび見る所は、輒ち口に誦す。耳の瞥かに聞く所は、心に忘れず。性は道と合し、思いは神有るが若し」と。其の之を嘆ずること此の如し。衡は許下に遊び、公卿国士より以下、衡は初めより其の官を称せず、皆な之を名づけて阿某と云い、或いは姓を以て呼びて某児と為し、孔融を呼びて大児と為し、楊修を呼びて小児と為す。荀彧は猶お強いて与に語る可きも、此れを過ぎて以往は、皆な木梗泥偶、人に似て人気無く、皆な酒甕飲囊のみ。百官大会し、衡は時に坐に在り、忽ち顰蹙し淒愴し、哀嘆忼慨す。或ひと之を譏りて曰く、「英豪楽しみ集うに、嘆く所に非ず」と。衡は眄みて稠衆を歴視して答えて曰く、「此の積屍列柩の間に在りて、仁人安くんぞ悲しまざるを能わんや」と。
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抱朴子外篇・彈禰久しくして、射曰く、「前に視る所の碑文は大いに佳し。写さざるを恨む」と。衡曰く、「卿は其の名目を存するのみ。我は一覧して尚お之を記す」と。即ち為に暗に之を書く、末に一字有り、石缺けて、乃ち分明ならず。衡は半字を与え、曰く、「疑うらくは此れ当に某字に作るべし。恐らくは審らかならず」と。射は省て可とす。言行は人を軽んずと雖も、寧ろ栄顕を願い、是を以て高く鳳林に遊び、蒿萊に幽翳する能わず、然れども己を修むること駁刺にして、迷いて覚らず、故に口を開けば憎まれ、足を挙げれば禍を蹈む。此の如き伎倆を賫して、亦た何の理ありて天下に容れられて其の死を得んや。猶お梟の鳴き狐の嚾くがごとく、従に皆な喜ばず、音響の改まらざれば、処を易うるも何の益あらん。許下は、人物の海なり。文挙は之が主任と為り、荷うこと至到するに足るも、此に安んぜざるは、已に知る可し。猶お必死の病に、俞附・越人すら如何ともする所無きがごとし。朽木鉛鋌は、班輸・欧冶の匠する能わざる所なり。而るに復た荊楚の間に走り投じ、終に極害に陥るは、此れ乃ち衡の懵蔽の効なり。蓋し之を欲して得る能わず、得る能くして用いざるに非ざる者なり。於戯、才士、戒む可からざるか。嵇生曰く、「吾が惑う所の者は、衡の虚名なり。子の論ずる所の者は、衡の実病なり。敢えて指南に寤寐し、杖を折中に投ぜざらんや」と。
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『長短経』覇図太祖、劉表を征す。会々表卒し、子琮降る。〈劉表、字は景升、山陽高平の人なり。詔して表を以て荊州刺史と為す。南は五岑嶺に接し、北は漢川に拠り、地は方数千里、帯甲十余万。曹操と袁紹と官渡に相い持す。紹、人を遣わして助けを求む。表、之を許すも至らず、亦た操を援けず、且つ天下の変を観んと欲す。劉先、表に説きて曰く「今、豪傑並び争い、両雄相い持す。天下の重きは将軍に在り。将軍、若し為す所有らば、起ちて其の弊に乗ずるも可なり。如し其れ然らずんば、固より将に宜しく従う所を択ぶべし。豈に甲十万を擁して、坐して成敗を観る可けんや。援けを求めて助くる能わず、賢を見て帰する能わず。此の両怨、必ず将軍に集まらん。恐らくは復た中立するを得ざらん。曹操は善く兵を用い、其の賢俊、多く之に帰す。其の勢い必ず袁紹を挙げん。然る後に兵を移して江漢に向かわん。恐らくは将軍、禦ぐ能わざらん。今の勝計は、荊州を以て操に降るに若くは莫し。操は必ず将軍を重んじ徳とせん。長く福祚を享け、之を後嗣に垂れん。此れ万全の策なり」と。表、従わず。
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『長短経』三国権〔時に権、柴桑に軍し、劉備は樊に在り。曹公南のかた劉表を征す。会々表卒し、子の琮、衆を挙げて降る。先主、曹公の卒かに至るを知らず、宛に至りて乃ち之を聞き、遂に其の衆を率いて南に行き、曹公の追破する所と為る。劉備、夏口に至る。諸葛亮曰く「事急なり。請う、命を奉じて救いを孫将軍に求めん」と。遂に見えて、説きて曰く「将軍は兵を江東に起こし、劉豫州も亦た衆を漢南に収め、曹操と並びて天下を争う。今、操は大難を芟夷し、略々已に平らぐ。遂に荊州を破り、威は四海に震い、英雄は武を用うる所無し。故に豫州遁逃して此に至る。将軍、力を量りて之に処せよ。若し能く呉越の衆を以て中国と衡を争わば、早く之と絶つに如かず。若し当たること能わずんば、何ぞ兵を按じ甲を束ね、北面して之に事えざる。今、将軍は外は服従の名に託し、而して内は猶予の計を懐く。事急にして断ぜずんば、禍至ること日無し」と。
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『長短経』覇図十三年、曹操、自ら将いて表を征す。未だ至らずして、表、疽、背に発して卒す。操、新野に軍す。傅巽、琮に説きて降に帰せしめんとす。琮曰く「今、諸君と全楚の地に拠り、先君の業を守り、以て天下を観る。何為れぞ不可ならん」と。巽曰く「逆順に大体有り、強弱に定勢有り。人臣を以て人主を拒ぐは、逆道なり。新造の楚を以て中国を禦ぐは、必ず危うきなり。劉備を以て曹公に敵するは、当たらざるなり。三者皆な短し。以て王師の鋒に抗せんと欲するは、必ず亡ぶの道なり。将軍、自ら料るに劉備と何如」と。琮曰く「如かざるなり」と。巽曰く「誠に備を以て曹公を禦ぐに足らずんば、即ち保全し難く、楚は以て自ら存するに足らず。誠に劉備を以て曹公に敵するに足らば、則ち備は将軍の為にする能わざるなり。願わくは将軍、疑う勿かれ」と。琮、遂に衆を挙げて降る。時に劉備、奔りて荊州に在り。表、用うる能わず。荊州の降るを聞き、遂に夏口に奔るなり。〉
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