抱朴子外篇 / 省煩
古人詢於草芻蕘,博辨童謠,狂夫之言,猶在擇焉。至於墨子之論,不能非也。但其張刑網,開途徑,浹人事,備王道,不能曲述耳。至於譏葬厚,刺禮煩,未可棄也。自建安之後,魏之武文,送終之制,務在儉薄,此則墨子之道,有可行矣。余以為喪亂既平,朝野無為,王者所制,自君作古。可命精學洽聞之士,才任損益,免於拘愚者,使刪定三禮,割棄不要,次其源流,總合其事,類集以相從。其煩重遊說,辭異而義同者存之,不可常行除之。無所傷損,卒可斷約而舉之,勿令沈隱,復有凝滯。其吉兇器用之物,俎豆觚觶之屬,衣冠車服之制,旗章辨色之美,宮室尊卑之品,朝饗賓主之儀,祭奠殯葬之變,郊祀禘祫之法,社稷山川之禮,皆可減省,務令約儉。夫約則易從,儉則用少;易從則不煩,用少則費薄;不煩則涖事者無過矣,費薄則調求者無苛矣。拜休揖讓之節,升降盤旋之容,使足敘事,無令小碎。條牒各別,令易案用。
新字:古人詢於草芻蕘,博弁童謡,狂夫之言,猶在択焉。至於墨子之論,不能非也。但其張刑網,開途径,浹人事,備王道,不能曲述耳。至於譏葬厚,刺礼煩,未可棄也。自建安之後,魏之武文,送終之制,務在倹薄,此則墨子之道,有可行矣。余以為喪乱既平,朝野無為,王者所制,自君作古。可命精学洽聞之士,才任損益,免於拘愚者,使刪定三礼,割棄不要,次其源流,総合其事,類集以相従。其煩重遊説,辞異而義同者存之,不可常行除之。無所傷損,卒可断約而舉之,勿令沈隠,復有凝滞。其吉兇器用之物,俎豆觚觶之属,衣冠車服之制,旗章弁色之美,宮室尊卑之品,朝饗賓主之儀,祭奠殯葬之変,郊祀禘祫之法,社稷山川之礼,皆可減省,務令約倹。夫約則易従,倹則用少;易従則不煩,用少則費薄;不煩則涖事者無過矣,費薄則調求者無苛矣。拝休揖譲之節,升降盤旋之容,使足敘事,無令小砕。条牒各別,令易案用。
書き下し
古人は芻蕘に詢い、童謡を博く辨ち、狂夫の言すら、猶お択ぶに在り。墨子の論に至りては、非とする能わざるなり。但だ其の刑網を張り、途径を開き、人事に浹く、王道を備うることは、曲さに述ぶる能わざるのみ。葬の厚きを譏り、礼の煩わしきを刺すに至りては、未だ棄つ可からず。建安の後より、魏の武・文、送終の制は、務めて倹薄に在り、此れ則ち墨子の道、行う可き有るなり。余以為らく、喪乱既に平らぎ、朝野無為なれば、王者の制する所、君より古を作す。精学洽聞の士、才の損益を任ずるに堪え、拘愚を免るる者に命じ、三礼を刪定せしめ、要ならざるを割棄し、其の源流を次し、其の事を総合し、類集して以て相従わしむ可し。其の煩重遊説にして、辞異なるも義同じき者は之を存し、常に行う可からざるは之を除く。傷損する所無く、卒に断約して之を挙ぐ可し、沈隠して復た凝滞する有らしむること勿れ。其の吉凶の器用の物、俎豆觚觶の属、衣冠車服の制、旗章辨色の美、宮室尊卑の品、朝饗賓主の儀、祭奠殯葬の変、郊祀禘祫の法、社稷山川の礼、皆な減省す可し、務めて約倹ならしむ。夫れ約なれば則ち従い易く、倹なれば則ち用少なし。従い易ければ則ち煩わしからず、用少なければ則ち費薄し。煩わしからざれば則ち事に涖む者に過ち無く、費薄ければ則ち調求する者に苛無し。拝休揖譲の節、升降盤旋の容は、事を叙するに足らしめ、小碎ならしむること無かれ。条牒各別にして、案用し易からしむ。
現代語訳
古人は草刈りや木こりにも意見を求め、童謡を広く吟味し、狂人の言葉でさえ、なお取捨を考えた。墨子の議論については、否定することはできない。ただ、刑罰の網を張り、道筋を開き、人事にあまねく及び、王道を備える面は、細かく述べきれなかっただけである。葬儀の手厚さを咎め、礼のわずらわしさを刺す点については、捨ててはならない。建安のあと、魏の武帝・文帝は、葬送の制をつとめて質素にしたが、これは墨子の道に行ってよいところがあるということである。私が思うに、喪乱がすでに平らぎ、朝廷も民間も無為であるいま、王者の制するところは、君から古を作ることになる。学問に精しく見聞の広い士で、才が増減を任せるに堪え、頑なで愚かな見方を免れた者に命じて、三礼を刪定させ、要でないものを切り捨て、その源流を順序立て、その事を総合し、類を集めて互いに従うようにしたらよい。その煩わしく重なり遊説のようで、言葉は違っても意味が同じものはこれを残し、常に行えないものはこれを除く。傷つけ損なうことなく、ついには簡約にして挙げられるようにし、埋もれてまた滞らせてはならない。吉凶の器物、俎豆や觚觶の類、衣冠や車服の制、旗や章の色の見分けの美、宮室の尊卑の品、朝廷や饗応の主賓の儀、祭奠や殯葬の変化、郊祀や禘祫の法、社稷や山川の礼は、いずれも減らし省いてよい。つとめて簡約倹素にする。簡約であれば従いやすく、倹素であれば費用が少ない。従いやすければ煩わしくなく、費用が少なければ出費が軽い。煩わしくなければ事に当たる者に過ちがなく、出費が軽ければ取り立てる側に苛酷さがなくなる。拝礼や会釈の節度、上り下りや回る動作の姿は、事を述べるに足りるようにし、細かく砕けさせないようにせよ。条文はそれぞれ別に分け、調べて使いやすくする。
解説
この章句が説くこと
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抱朴子外篇・省煩抱朴子曰く、上を安んじ民を治むるは、礼より善きは莫く、人理を彌綸すること、誠に曲さに備われり。然れども冠婚飲射は、何ぞ煩碎の甚だしきや。人倫は礼有るを以て貴しと為すと雖も、但だ当に以て等威を叙し情敬を表するに足らしむべし、何ぞ升降揖譲の繁重、拜起俯伏の已むこと無きに在らんや。往者天下乂安にして、四方無事なるとき、古を好む官長、時に或いは之を修め、乃ち講試すること月を累ね、督するに楚撻を以てし、昼夜修習し、寝と食とを廃するに至る。時を経て之を学び、一日にして之を試み、巻を執りて事に従い、文を案じて挙動し、黜謫の罰、又た其の間に在り、猶お過誤有りて、其の意を得ず。而るに以て此を生民の常事と為さんと欲するは、至難にして行い難きなり。此れ墨子の所謂、世を累ねても其の学を尽くす能わず、当年にして其の事を究むる能わざる者なり。
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『淮南子』齊俗訓古者、繁しき升降槃還の禮を知らざるに非ざるなり。采齊・肆夏を蹀むの容を知らざるに非ざるなり。以為えらく、日を曠しくし民を煩わして用うる所無し、と。故に禮を制するは、實を佐け意を喻すに足るのみ。古者、鐘鼓を陳ね、筦簫を盛んにし、干戚を揚げ、羽旄を奮う能わざるに非ざるなり。以為えらく、財を費やし政を亂す、と。樂を制するは、歡を合し意を宣ぶるに足るのみ。喜びて音に羨れず。國を竭くし民を麋し、府を虛しくし財を殫くし、珠を含ませ鱗施し、綸組もて節束して、追いて死を送る能わざるに非ざるなり。以為えらく、民を窮せしめ業を絕ちて槁骨腐肉に益無し、と。故に葬薶は收斂蓋藏するに足るのみ。昔 舜 蒼梧に葬られて、市 其の肆を變ぜず。禹 會稽の山に葬られて、農 其の畝を易えず。生死の分に明らかに、侈儉の適に通ずる者なり。亂國は則ち然らず。言と行と相い悖り、情と貌と相い反す。禮は飾りて以て煩わしく、樂は優にして以て淫なり。死を崇びて以て生を害し、喪を久しくして以て行を招く。是を以て風俗 世に濁りて、誹譽 朝に萌す。是の故に聖人 廢して用いざるなり。義なる者は、理に循いて宜を行うなり。禮なる者は、情を體して文を制する者なり。義なる者は宜なり、禮なる者は體なり。
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抱朴子外篇・譏惑抱樸子曰く、澄濁剖判し、庶物化生して、習族は或いは応対する能う有り、毛宗は或いは言を知る有り。玃は往を識り、帰終は来を知り、玄禽は陰陽を解し、虫や虫は豈に泉流に遠からんや。蓍亀も過ぐる無く、甘石も勝つ能わず。夫れ唯だ礼無きは、貴性に廁らず。厥の初め邃古は、民に階級無し。上帝は混然の甚だ陋なるを悼み、巣穴の鄙しむ可きを憫み、故に棟宇を構えて以て鳥獣の群を去り、礼数を制して以て等威の品を異にす。教うるに盤旋を以てし、訓うるに揖譲を以てし、立てば則ち磬折し、拱けば則ち鼓を抱く。趨歩升降の節、瞻視接対の容、三千に至る。蓋し検溢の堤防、人理の急なる所なり。故に儼たること冠は曲礼に若き、貌を望むこと五事に首たり。門を出ずれば賓を見るの粛有り、閑居すれば独りを敬するの戒め有り。顔生は儀を宵浴に整え、仲由は命に臨みて纓を結ぶ。恭容暫く廃すれば、惰慢已に及ぶ。上を安んじ民を治むるは、此に非ざれば以て莫し。
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抱朴子外篇・省煩然れども守常の徒は、卒かに此の義を聞かば、必ず将に愕然として創見とし、之を狂生と謂わん。夫れ三王は楽を相沿わず、五帝は礼を相襲わず、而も其の風を移し俗を易え、上を安んじ民を治むること一なり。或いは革め或いは因り、損益して善を懐く、何ぞ必ずしも当に船に乗りて以て山に登り、馬に策ちて以て川を渉り、甲を被て以て廟堂に升り、重裘して以て隆暑に当たらんや。若し古事は終に変う可からずと謂わば、則ち棺槨は当に薪に代えて埋むべからず、衣裳は宜しく裸袒を改むべからず。
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『墨子』節葬下意うに亦た其の言に法り、其の謀を用いて、厚葬久喪、實に以て貧を富まし、寡を衆くし、危を定め、亂を治む可からざらしめんか。此れ仁に非ず義に非ず、孝子の事に非ざるなり。人の為に謀る者は勸めざる可からざるなり。仁者は將に之を天下に興さんとし、誰か霸として民をして之を譽めしめ、終に廢する勿からしめん。意うに亦た其の言に法り、其の謀を用いて、厚葬久喪、實に以て貧を富まし寡を衆くし、危を定め亂を理む可からざらんか。此れ仁に非ず義に非ず、孝子の事に非ざるなり。人の為に謀る者は沮まざる可からざるなり。仁者は將に之を除かんことを求め、天下、相い廢して人をして之を非とせしめ、身を終うるまで為す勿からしめん。且つ故に天下の利を興し、天下の害を除くに、今、國家百姓の治まらざるや、古より今に及ぶまで未だ嘗て之れ有らざるなり。
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