抱朴子外篇 / 疾謬
或宿於他門,或冒夜而反,遊戲佛寺,觀視漁畋,登高臨水,出境慶吊,開車褰幃,周章城邑。杯觴路酌,弦歌行奏,轉相高尚,習非成俗。生致因緣,無所不肯。誨淫之源,不急之甚,刑於寡妻,家邦乃正。願諸君子,少可禁絕。婦無外事,所以防微矣。抱樸子曰:輕薄之人,跡廁高深,交成財贍,名位粗會,便背禮判教,托雲率任,才不逸倫,強為放達,以傲兀無檢者為大度,以惜護節操者為澀少。於是臘鼓垂無賴之子,白醉耳熱之後,結黨合群,遊不擇類,奇士碩儒,或隔籬而不授,妄行所在,雖遠而必至,攜手連袂,以遨以集,入他堂室,觀人婦女,指玷修短,評論美醜,不解此等何為者哉?
新字:或宿於他門,或冒夜而反,遊戯仏寺,観視漁畋,登高臨水,出境慶吊,開車褰幃,周章城邑。杯觴路酌,弦歌行奏,転相高尚,習非成俗。生致因縁,無所不肯。誨淫之源,不急之甚,刑於寡妻,家邦乃正。願諸君子,少可禁絶。婦無外事,所以防微矣。抱樸子曰:軽薄之人,跡廁高深,交成財贍,名位粗会,便背礼判教,托雲率任,才不逸倫,強為放達,以傲兀無検者為大度,以惜護節操者為澀少。於是臘鼓垂無頼之子,白酔耳熱之後,結党合群,遊不択類,奇士碩儒,或隔籬而不授,妄行所在,雖遠而必至,攜手連袂,以遨以集,入他堂室,観人婦女,指玷修短,評論美醜,不解此等何為者哉?
書き下し
或いは他門に宿し、或いは夜を冒して反る。仏寺に遊戯し、漁畋を観視す。高きに登り水に臨み、境を出でて慶吊す。車を開き幃を褰げ、城邑を周章す。杯觴を路に酌み、弦歌を行に奏し、転た相高尚とし、非を習いて俗と成る。生きながらにして因縁を致し、肯んぜざる所無し。淫を誨うるの源、急ならざることの甚だしきなり。寡妻に刑すれば、家邦乃ち正し。願わくは諸君子、少しく禁絶す可きことを。婦に外事無きは、微を防ぐ所以なり。抱樸子曰く、軽薄の人は、跡高深に廁わり、交わり財贍を成し、名位粗ぼ会えば、便ち礼に背き教えを判ち、托して率任と雲い、才逸倫ならざるに、強いて放達を為す。傲兀無検の者を以て大度と為し、節操を惜護する者を以て渋少と為す。是に於いて臘鼓の無頼の子、白醉耳熱の後、党を結び群を合わせ、遊ぶに類を択ばず、奇士碩儒も、或いは籬を隔てて授けず、妄りに行く所在、遠しと雖も必ず至り、手を携え袂を連ね、以て遨び以て集い、他の堂室に入り、人の婦女を観、玷の修短を指し、美醜を評論す。此れ等の何為る者なるかを解せず。
現代語訳
他家に泊まる者もあり、夜を押して帰る者もある。仏寺で遊び戯れ、漁や狩りを見物する。高い所に登り水辺に臨み、国境を出て慶弔に出かける。車の幕を開き帳をまくり、城内をあちこち走り回る。杯を道端で酌み交わし、歌や弦を歩きながら奏で、いよいよ競って高尚とし、非を習慣にして俗となる。生きながら因縁を作り、何事も辞さない。淫らさを教える源で、急ぐことでもないことの甚だしさである。妻を律して手本とすれば、家も国も正しくなる。願わくは諸君子、少しはこれを禁じ絶ってほしい。婦人に外の用事を持たせないのは、乱れの兆しを防ぐためである。抱樸子は言う。軽薄な人は、身を高く深い所に置いて交わり、財が満ちた交友を築き、名と地位がおおよそ整うと、礼に背き教えを割り、気ままの任せだと称し、才が人並み外れてもいないのに、無理に放達(自由な振る舞い)をする。傲慢で締まりのない者を度量が大きいとし、節操を守り惜しむ者を渋って少ないとする。そこで、年末の祭りの日の無頼の者が、酔って耳の赤くなった後、徒党を組み群れを作り、遊ぶ相手を選ばず、優れた士や大学者でさえ、垣根越しに物も渡さない始末。かってに歩き回り、遠くても必ず至り、手を携え袖を連ねて、遊び集まり、他人の堂や室に入り込み、人の婦女を見物し、その短所長所を指さし、美醜を論評する。こうした者たちが何者なのか、私には分からない。
解説
この章句が説くこと
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抱朴子外篇・疾謬抱樸子曰く、世故継いで有り、礼教漸く頽る。敬譲崇ぶ莫く、傲慢俗と成る。儔類の飲会、或いは蹲り或いは踞す。暑夏の月、首を露わにし体を袒にす。盛務は唯だ摴草捕弾棋に在り、論ずる所は声色の間に極まり、足を挙げて綺繻紈袴の側を離れず、遊歩して勢利酒客の門を去らず。清談講道の言を聞かず、専ら醜辞嘲弄を以て先と為す。此くの如き者を以て高遠と為し、爾らざる者を以て騃野と為す。是に於いて馳逐の庸民、偶俗の近人、之を慕う者は猶お宵虫の明燭に赴くがごとく、之を学ぶ者は猶お軽毛の飈風に応ずるがごとし。嘲戯の談、或いは上は祖考に及び、或いは下は婦女に逮ぶ。往く者は其の必ず深からんことを務め、報ずる者は其の重からざらんことを恐る。倡うる者は答えらるる後の患を慮らず、和する者は軽きを言いて塞がざるを恥ず。周禾の芟、温麦の刈は、実に報恨に由りて、已む能わざるなり。利口の者は強を扶けて勢に党し、弁給の者は鍒を借りて瞂を刺す。応えざる者を以て拙劣と為し、先に止む者を以て負敗と為す。此くの如くんば、交悪の辞、焉んぞ黙す能わんや。
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抱朴子外篇・疾謬抱樸子曰く、俗間に婦を戯るるの法有り。稠衆の中、親属の前に於いて、問うに醜言を以てし、責むるに慢対を以てす。其の鄙黷たること、忍んで論ず可からず。或いは蹙するに楚撻を以てし、或いは脚を繋ぎ倒懸す。酒客は酗醟して、限斉を知らず、傷の血を流す有り、支体を踒折するに至る者有り、嘆く可き者なり。古人は離別に感じて燭を滅さず、親に代わるを悲しみて楽を挙げず。礼を論ずるに、娶る者は羞じて賀せず。今は既に旧典を動蹈する能わざるも、徳は郷閭の敬う所と為り、言は人士の信ずる所と為るに至りては、誠に宜しく色を正して矯して之を呵るべし。何ぞ其の波流を同じくし、此の弊俗を長ずるを謂わんや。然れども民間の之を行うこと日久しく、其の非を覚る莫し。或いは清談の禁ずる能わざる所、峻刑に非ざれば止む能わず。遂に周を詘し孔を疵り、傲放を以て邈世と謂う。
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抱朴子外篇・疾謬或いは主人に通ぜず、便ち共に突前す。厳飾未だ辦ぜざるに、復た窺い聴かず、門を犯し関を折り、垝を逾え隙を穿つ。抄劫の至るに似たる有るなり。其の或いは妾媵の避け蔵るるに及ばざれば、隠僻を搜索するに至り、就きて引曳す。亦た怪事なり。夫れ君子の居室すら、猶お家人の備わざるを掩わず。故に門に入れば則ち声を揚げ、堂に升れば則ち下視す。而るに他家に唐突す、将た何の理ぞや。然れども落拓の子、骨鯁無くして俗に随うを好む者は、此れに通ずる者を以て親密と為し、此れを拒む者を以て不恭と為し、誠に当世は爾らざる可からずと為す。是に於いて要呼して憒雑し、室に入りて妻を視、膝を促して狭く坐し、杯觴を咫尺に交え、淫冶の音曲を弦歌し、言を以て文君の心を動かすを兆し、載ち号び載ち呶ぎ、謔戯醜褻、鄙を窮め黷を極め、爾乃ち笑いて男女の大節を乱し、《相鼠》の無儀を蹈む。
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抱朴子外篇・疾謬其の相見ゆるや、復た離闊を叙し、安否を問わず。賓は則ち門に入りて奴を呼び、主は則ち客を望みて狗を喚ぶ。其れ或いは爾らざれば、親至を成さずとして、之を棄てて与に党と為さず。好会に及びては、則ち狐蹲牛飲し、食を争い割を競う。掣撥渺摺して、復た廉恥無く、此れに同じき者を以て泰と為し、爾らざる者を以て劣と為す。終日義に及ぶの言無く、徹夜箴規の益無し。老荘を誣引し、率任を貴び、大行は細礼を顧みず、至人は檢括に拘わらずと謂い、嘯傲縦逸して、之を体道と謂う。嗚呼、惜しいかな、豈に哀しからずや。是に於いて族を嘲りて以て歓交を叙べ、黷を極めて以て情款を結ぶ。傾倚申脚を以て妖妍標秀と為し、風格端厳なるを以て田舎の樸馬と為す。凡そ彼の軽薄の徒は、便辟して俗に偶し、広く伴流を結び、更相推揚して、達を取ること速く易しと雖も、率ね皆な皮膚狡澤にして、空しきを懐き虚しきを抱く。蜀人の瓠壺の喩えの有るに似て、胸中に一紙の誦無く、識る所は酒炙の事に過ぎず。所謂明徳に傲很し、聾に即き昧に従い、貨財を冒し、飲食に貪る者、左生の載する所の不才の子なり。
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抱朴子外篇・疾謬抱樸子曰く、詩は睢鳩を美し、其の別有るを貴ぶ。礼に在りては、男女は行媒無くんば相見えず、雑坐せず、通問せず、衣物を同じくせず、親しく授くるを得ず。姉妹出で適ぎて反れば、兄弟は席を共にして坐せず。外言は入らず、内言は出でず。婦人は送迎に門を出でず、行くに必ず其の面を擁蔽す。道路は男は左に由り、女は右に由る。此れ聖人の別を重んじ漸を杜ぐ明制なり。且つ夫れ夫婦の間は、昵しと謂う可きも、猶お男子は疾病に非ざれば昼に内に居らず、将に終わりに婦人の手に死せざらんとす。況んや他に於いてをや。昔、魯女は幽居深処せず、以て他扈犖の変を致す。孔妻は戸庭に密潜せず、以て華督の禍を起こす。史激は防ぐ無く、汚種の悔い有り。王孫は厳ならず、杜門の辱め有り。而るに今の俗の婦女は、其の蚕織の業を休め、其の玄紞の務めを廃し、其の麻を績まず、市に婆娑たり。中饋の事を舎て、周施の好を修む。更相従詣して親戚に適き、星を承け火を挙げて、行くを已まず。多く侍従を将い、瑋曄として路に盈ち、婢使吏卒、錯雑して市の如し。道に尋いて褻謔し、憎む可く悪む可し。
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抱朴子外篇・疾謬然れども敢えて此れを為す者は、必ずしも篤く頑なるに非ず。率ね多くは冠蓋の後、勢援の門にして、素より頗る力めて善事を行い、以て虚名を窃む。名既に粗ぼ立てば、本情便ち放つ。或いは財色を仮りて以て権豪に交わり、或いは時運に因りて以て栄位に佻び、或いは婚姻を以て貴戚に連なり、或いは毀誉を弄して以て威柄に合す。器盈ち志溢れ、態発し病出で、党成り交わり広く、道通じ歩高し。清論も復た制する能わざる所、縄墨も復た弾く能わざる所となり、遂に鷹頭の縄、廟垣の鼠と成る。未だ及ばざる所は、則ち眉を低くし地を埽いて以て之を奉望す。其の下に居る者は、威を作し福を作して以て之を控御す。故に己に勝る者は則ち聞くを得ず、聞くも亦た陽に知らず。己に減ずる者は則ち敢えて言わず、言うも亦た禁ずる能わず。夫れ災虫の穀を害するも、霜を降すに至れば則ち殄ゆ。佞雄の群を乱すも、厳時に値えば則ち敗る。独り其の身を善くする者は、唯だ之を事とするを肯んぜず、行いて効わざるのみ。斧有りて柯無し、其れ之を如何せん。
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