抱朴子外篇 / 交際
余徒恨不在其位,有斧無柯,無以為國家流穢濁於四裔,投畀於有北。彼雖赫奕,刀尺決乎勢力足以移山拔海,吹呼能令泥象登雲,造其門庭,我則未暇也。而多有下意怡顏,匍匐膝進,求交於若人,以圖其益。悲夫!生民用心之不鈞,何其遼邈之不肖也哉!余所以同生聖世而抱困賤,本後顧而不見者,今皆追瞻而不及,豈不有以乎!然性茍不堪,各從所好,以此存亡,予不能易也。
新字:余徒恨不在其位,有斧無柯,無以為国家流穢濁於四裔,投畀於有北。彼雖赫奕,刀尺決乎勢力足以移山抜海,吹呼能令泥象登雲,造其門庭,我則未暇也。而多有下意怡顔,匍匐膝進,求交於若人,以図其益。悲夫!生民用心之不鈞,何其遼邈之不肖也哉!余所以同生聖世而抱困賤,本後顧而不見者,今皆追瞻而不及,豈不有以乎!然性苟不堪,各従所好,以此存亡,予不能易也。
書き下し
余は徒だ其の位に在らず、斧有りて柯無く、以て国家の為に穢濁を四裔に流し、有北に投畀する無きを恨む。彼は赫奕たりと雖も、刀尺は勢力の以て山を移し海を抜くに足るに決し、吹呼して能く泥象をして雲に登らしむ。其の門庭に造るは、我は則ち未だ暇あらざるなり。而るに多く意を下し顔を怡ばせ、匍匐膝進して、交わりを若き人に求め、以て其の益を図る者有り。悲しいかな、生民の心を用うること鈞しからざる、何ぞ遼邈にして不肖なるや。余の同じく聖世に生まれて困賤を抱く所以は、本より後顧して見ざる所、今皆な追瞻すれども及ばず、豈に以有らざらんや。然れども性は苟くも堪えず、各おの好む所に従い、此れを以て存亡するは、予は易うる能わざるなり。
現代語訳
私はただ、その地位にいないので、斧があっても柄がなく、国家のために穢れた濁りを四方の果てに流し、北の果てに投げ与えることができないのを恨む。彼らは赫々と輝き、刀とものさしを握って、権勢は山を移し海を引き抜くほどで、息を吹き呼べば泥の像を雲に登らせることさえできる。その門庭に通うことは、私にはその暇がない。ところが多くの者が心を低くし顔色をやわらげ、這いつくばり膝で進み、そうした人に交わりを求めて、その利益を図っている。悲しいことだ、人々の心の用い方がこれほど違い、これほど遠くかけ離れて不肖であるとは。私が同じ聖世に生まれながら困窮と賤しさを抱えているのは、もとより後ろを顧みず見なかったところで、今となっては皆あとから振り返っても及ばない。そこに理由がないとは言えまい。しかし性分としてどうしても耐えられず、それぞれ好むところに従い、これで存亡を決めるのであって、私には変えられない。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
抱朴子外篇・交際窮と達とは、求むる能わず。然れども軽薄の人、無分の子は、曽て俄然の節を疾非する無く、星言に宵征し、其の門廷を守り、翕然として諂笑し、卑辞して色を悦ばせ、壺を提げ贄を執り、時に行きて媚を索む。勤苦して久しきを積むも、猶お嫌い拒まれ、乃ち行きて長者に因托して以て之を構合せしむ。其の受けらるるや、則ち踊悦すること幽系の赦に遇うよりも過ぎ、其の合わざるや、則ち懊悴すること喪病の己に逮ぶよりも劇し。通塞は命有り、道は正直を貴び、否泰は之を自然に付す。津途何ぞ多く咨るに足らん。嗟乎細人、豈に鄙しからずや。人情の同じからざる、一に何ぞ遠きや。每に為に慨然とし、彼を助けて羞ず。
-
抱朴子外篇・交際昔、荘周は恵子の車に従う者の多きを見て、其の余魚を棄つ。余は俗士の攀及に汲汲たらざるに感ず。彼の雲雲たる風塵に馳騁する者を瞻るに、徳業を懋建し、本に務めて己に求めず、而して偏えに高交に徇い、以て朋党を結び、人理の比する莫き要、当世に此れより急なるは莫しと謂う。嶽のように峙ちて独り立つ者を以て、渋吝疎拙と為し、奴顔婢睞する者を以て、当世を暁解すと為す。風成り俗習い、末を逐わざる莫く、流遁して遂に往く、慨く可き者なり。或いは徳薄く位高く、器盈ち志溢れ、財利を聞けば則ち驚き掉い、奇士を見れば則ち坐して睡る者有り。襤縷して杖策し、褐を被て笈を負う者は、文艶相雄り、学優れ玄に融くと雖も、之を埃芥に同じくして、接引を加えず。夫の程鄭・王孫・羅裒の徒の若きは、肥に乗り軽を衣、金を懐き玉を挟む者なれば、筆は札に集まらず、菽麦を分辯せずと雖も、之が為に屣を倒にし、食を吐き髪を握る。
-
抱朴子外篇・交際抱朴子曰く、余は朋友の交わりは、浮雑なるに宜しからずと以えり。面して心せざるは、揚雄の譏る攸なり。故に位顕れ名美しく、門斉しく年敵すと雖も、趨舍の規を異にし、業尚の乖互する者とは、未だ嘗て結ばず。或いは其の先達を矜り、歩高く視遠く、或いは陵遅の旧好を遺忽し、或いは後門の類味を簡棄し、或いは人を取るに官を以てして徳を論ぜざる有り。其の知己に遭わず、丘園に零淪する者は、才深く智遠く、操清く節高しと雖も、不可なり。其の進趨偶合し、位顕れ官通ずる者は、面墻庸瑣なりと雖も、必ず及ぶ。此くの如きの徒は、壌蟲をして雲飛せしめ、斥鷃をして天に戻らしむる能い、手に刀尺を捉り、口は禍福を為し、之を得れば冰を排き華を吐き、之を失えば春に当たりて雕悴す。余は其の為に踧蹐し、与に世を共にするを恥ず。
-
抱朴子外篇・交際「世俗の人は、交わりて志を論ぜず、名を逐い勢を趨い、熱ければ来たり冷ゆれば去る。過ちを見て改めず、迷いを視て救わず、利有れば則ち独り専らにして相い分かたず、害有れば則ち苟くも免れて相い恤えず。或いは事の便なるに先に取りて譲らず、機会に値えば彼を売りて以て此れを安んず。凡そ是くの如くんば、則ち有るは無きに如かざるなり。「天下は尽く交わるに中らずと為すにあらず。率ね益を為すこと寡くして累を生ずること衆きなり。人を知るの明は、上聖すら難しとする所なり。而るに近才を力めて厲まし、物を鑒るに短き者、務めて其の交わりを広げんとし、又た悉く、与に夷険を経て情を易えず、危苦を歴て相い負荷する者を得しめんと欲す。吾は未だ其の多く得べきを見ざるなり。琬琰を培塿の上に搜め、鸞鳳を鷦鷯の巣に索むるが如きは、未だ難しと為さず。吾も亦た豈に敢えて藍田の陽、丹穴の中に、此の物無しと謂わんや。亦た直だ其の稀なるを言うのみ。
-
抱朴子外篇・交際抱朴子曰く、「吾は聞く、詳らかに交わる者は人を失わず、泛く結ぶ者は多く後悔すと。故に曩哲は先ず択びて後に交わり、先に交わりて後に択ばず。子の論ずる所は、出人の計なり。吾が守る所は、退士の志なり。子雲の玉浮き鳥高きは、皆な因る所有り。誠に復た別理一家の説なり。吾は以為らく、寧ろ載せられざるの宝、飛ばざるの鵬、飏がらざるの蘭、無党の士となるとも、亦た夜光の質、垂天の大、含芳の卉、不朽の蘭を損するか。且つ夫れ名は其の実より多く、位は其の才に過ぐれば、之に処る者すら猶お禍辱を免るること鮮し。之と交わる者、何ぞ以て栄福と為すに足らんや。
-
抱朴子外篇・交際「夫れ操尚の同じからざる、猶お金沈み羽浮くがごときなり。志好の乖次、猶お火升り水降るがごときなり。苟くも同じくす可からざれば、造化の霊、大塊の匠と雖も、同じくせしむ可からず、何ぞ強う可けんや。余の稟くる所は訥たり。之に加うるに天挺の篤懶を以てし、諸もろの戯弄の事、弾棋・博弈は、皆な見るを悪む所。飛輪走迅、遊猟傲覧に及びては、咸な為さざる所にして、殊に嘲褻を喜ばず。凡そ此の数者は、皆な時世の好む所にして、之に耽らざる莫し。而るに余は悉く闕く。故に親交の尤も遼きなり。加うるに直を挟み、好んで忠藎を吐き、薬石の集まる所、甘心する者鮮し。又た之を勉ますに学問を以てし、之を諫むるに馳競を以てし、其の樗蒲を止め、其の沈湎を節せんと欲す。此れも又た常人の悦ぶ能わざる所なり。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る