秘本玉くしげ / 上 富人の帰服
いかほど多く蓄へ持たればとても、これみな上より玉はりたるにもあらず、人の物を盜めるにもあらず、法度に背きたる事をして得たるにもあらず、皆これ面面の先祖、又は己が働きにて得たる金銀なれば、一錢といへどもしひてこれを取べき道理はなし。金銀はいかほど澤山に持ても、人每に猶ふやさんとこそ思へ、いささかにても故なくてこれを出す事をば甚愁ふるもの也。然れ共又、心より歸服だにすれば、よしなき佛寺などのために多くの金銀を出してをしむとなければ、まして領主の貧民を救ひ玉ふ御仁政のためならんには、其模樣に依て隨分心から感服して相働き、御用に立つべき事にて、是には宜しき仕方の有べき事也。とにかくに、しひてこれを召んことは心よからず。又其金銀を他の事に用ひんも心よからず。ひたすら貧民を救はまほしきこと也。上より民を救ひ玉ふ御仁政の專行はれて、貧民その御めぐみを有がたく存じ奉る樣子を見ば、仰付られず共、おのづから富人は救ひの志出來べきこと也。
新字:いかほど多く蓄へ持たればとても、これみな上より玉はりたるにもあらず、人の物を盗めるにもあらず、法度に背きたる事をして得たるにもあらず、皆これ面面の先祖、又は己が働きにて得たる金銀なれば、一銭といへどもしひてこれを取べき道理はなし。金銀はいかほど沢山に持ても、人毎に猶ふやさんとこそ思へ、いささかにても故なくてこれを出す事をば甚愁ふるもの也。然れ共又、心より帰服だにすれば、よしなき仏寺などのために多くの金銀を出してをしむとなければ、まして領主の貧民を救ひ玉ふ御仁政のためならんには、其模様に依て随分心から感服して相働き、御用に立つべき事にて、是には宜しき仕方の有べき事也。とにかくに、しひてこれを召んことは心よからず。又其金銀を他の事に用ひんも心よからず。ひたすら貧民を救はまほしきこと也。上より民を救ひ玉ふ御仁政の専行はれて、貧民その御めぐみを有がたく存じ奉る様子を見ば、仰付られず共、おのづから富人は救ひの志出来べきこと也。
書き下し
いかほど多く蓄へ持たればとても、これみな上より玉はりたるにもあらず、人の物を盗めるにもあらず、法度に背きたる事をして得たるにもあらず、皆これ面面の先祖、又は己が働きにて得たる金銀なれば、一銭といへどもしひてこれを取べき道理はなし。金銀はいかほど沢山に持ても、人毎に猶ふやさんとこそ思へ、いささかにても故なくてこれを出す事をば甚愁ふるもの也。然れ共又、心より帰服だにすれば、よしなき仏寺などのために多くの金銀を出してをしむとなければ、まして領主の貧民を救ひ玉ふ御仁政のためならんには、其模様に依て随分心から感服して相働き、御用に立つべき事にて、是には宜しき仕方の有べき事也。とにかくに、しひてこれを召んことは心よからず。又其金銀を他の事に用ひんも心よからず。ひたすら貧民を救はまほしきこと也。上より民を救ひ玉ふ御仁政の専行はれて、貧民その御めぐみを有がたく存じ奉る様子を見ば、仰付られず共、おのづから富人は救ひの志出来べきこと也。
現代語訳
(富者が)どれほど多く蓄えて持っているとしても、これはみな上から賜ったものでもなく、人の物を盗んだものでもなく、法度に背いたことをして得たものでもなく、みなそれぞれの先祖、または自分の働きで得た金銀なので、一銭といえども無理にこれを取り上げてよい道理はない。金銀はどれほどたくさん持っていても、人はみなさらに増やそうとこそ思い、わずかでも理由なくこれを出すことをひどく嫌がるものである。しかしまた、心から得心しさえすれば、つまらない仏寺などのために多くの金銀を出しても惜しまないのだから、まして領主が貧民をお救いになる御仁政のためであれば、そのやり方によっては十分に心から感服して力を尽くし、お役に立つはずのことであって、これには適当なやり方があるはずである。とにかく、無理にこれを召し上げることは感心しない。またその金銀を他の事に用いるのも感心しない。ひたすら貧民を救ってほしいのである。上から民をお救いになる御仁政がもっぱら行われて、貧民がそのお恵みをありがたく存じ上げる様子を見れば、命じられなくても、おのずから富者に救いの志が生まれるはずである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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尚書・召誥今天其れ哲を命じ、吉凶を命じ、歴年を命ず。今我初めて服し、新邑に宅るを知る、肆に惟れ王其れ疾(すみや)かに徳を敬せよ。王其れ徳を之れ用ひて、天の永命を祈れ。其れ惟れ王小民の非彝を淫用するを以て、亦敢て殄戮すること勿かれ、用て民を乂めば、功有るが若し。其れ惟れ王位徳の元に在らば、小民乃ち惟れ刑(のっと)りて天下に用ひ、越に王顕らかならん。上下勤め卹(うれ)ひ、其れ曰へ、『我天命を受け、丕いに有夏の歴年の若く、式て有殷の歴年を替(す)つること勿からん』と。王の小民を以て天の永命を受けんことを欲す。」拝手稽首して曰く、「予小臣、敢て王の讎民・百君子と越に友民とを以て、王の威命明徳を保受せん。王末に成命有り、王も亦顕らかならん。我敢て勤むるに非ず、惟れ恭しく幣を奉じ、用て王の能く天の永命を祈るに供するのみ。」
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牧民忠告・宣化諸民に旌表(せいひょう)及び學行眾に異なる者有らば、時に存慰(そんい)を加えれば、勸を為すこと必ず多からん。
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