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碧巌録 / 第九十六則

金佛不渡罏 人來訪紫胡牌中數箇字清風何處無 皖金佛不渡罏。人來訪紫胡。此一句亦頌了也。為什麼却引人來訪紫胡。須是作家罏鞴始得。紫胡和向。山門立一牌。牌中有字云。紫胡有一狗。上取人頭。中取人腰。下取人脚。擬議則喪身失命。凡見新到便喝云。看狗。僧纔回首。紫胡便歸方丈。且道為什麼却咬趙州不得。紫胡又一夕夜深於後架叫云。捉賊捉賊。黑地逢著一僧。攔胸捉住云。捉得也捉得也。僧云。和尚不是某甲。胡云。是則是。只是不肯承當。爾若會得這話。便許爾。咬殺一切人。處處清風凜凜。若也未然。牌中數箇字。決定不奈何。若要見他。但透得盡方見。頌云。木佛不渡火 常思破竈墮杖子忽擊著 方知辜負我

新字:金仏不渡罏 人来訪紫胡牌中数箇字清風何処無 皖金仏不渡罏。人来訪紫胡。此一句亦頌了也。為什麼却引人来訪紫胡。須是作家罏鞴始得。紫胡和向。山門立一牌。牌中有字云。紫胡有一狗。上取人頭。中取人腰。下取人脚。擬議則喪身失命。凡見新到便喝云。看狗。僧纔回首。紫胡便帰方丈。且道為什麼却咬趙州不得。紫胡又一夕夜深於後架叫云。捉賊捉賊。黒地逢著一僧。攔胸捉住云。捉得也捉得也。僧云。和尚不是某甲。胡云。是則是。只是不肯承当。爾若会得這話。便許爾。咬殺一切人。処処清風凜凜。若也未然。牌中数箇字。決定不奈何。若要見他。但透得尽方見。頌云。木仏不渡火 常思破竈堕杖子忽撃著 方知辜負我

書き下し

金仏鑪を渡らず、人来つて紫胡を訪ふ。牌中の数箇の字、清風何れの処にか無からん。皖。金仏鑪を渡らず、人来つて紫胡を訪ふ。此の一句も亦た頌し了れり。什麼としてか却つて人来つて紫胡を訪ふを引く。須らく是れ作家の鑪鞴にして始めて得べし。紫胡和尚、山門に一牌を立つ。牌中に字有りて云く、「紫胡に一狗有り、上は人の頭を取り、中は人の腰を取り、下は人の脚を取る。擬議すれば則ち身を喪ひ命を失ふ」。凡そ新到を見れば便ち喝して云く、「狗を看よ」。僧纔かに首を回らせば、紫胡便ち方丈に帰る。且く道へ、什麼としてか却つて趙州を咬むことを得ざる。紫胡又一夕夜深けて後架に於て叫んで云く、「賊を捉へよ、賊を捉へよ」。黒地に一僧に逢著し、胸を攔りて捉住して云く、「捉へ得たり、捉へ得たり」。僧云く、「和尚、某甲にあらず」。胡云く、「是なることは則ち是なり、只だ是れ承当することを肯はず」。爾若し這の話を会得せば、便ち爾に一切の人を咬殺することを許さん。処処に清風凜凜たらん。若也未だ然らずんば、牌中の数箇の字、決定して奈何ともせず。若し他を見んと要せば、但だ透得し尽くして方に見ん。頌に云く、木仏火を渡らず、常に破竈堕を思ふ。杖子忽ち撃著して、方に知る我に辜負することを。

現代語訳

金の仏は炉を渡らない。人が紫胡を訪ねて来る。立て札の中の数文字。清風の吹かないところがどこにあろうか。(皖。)(評唱)「金の仏は炉を渡らない。人が紫胡を訪ねて来る」。この一句もまた頌し終えている。なぜわざわざ「人が紫胡を訪ねて来る」を引くのか。作家の炉と鞴(ふいご)であってこそできることである。紫胡和尚は山門に一枚の立て札を立てた。札には「紫胡に一匹の犬がいる。上は人の頭を取り、中は人の腰を取り、下は人の脚を取る。ためらえば身を失い命を失う」と書かれていた。新しく来た僧を見るたびに、一喝して「犬を見よ」と言った。僧が振り返ったとたん、紫胡はさっさと方丈に帰った。さて言ってみよ、なぜその犬は趙州だけは咬めなかったのか。紫胡はまたある夜更けに、裏手の洗い場で「泥棒をつかまえろ、泥棒をつかまえろ」と叫んだ。暗がりで一人の僧に出くわすと、胸ぐらをつかんで「つかまえたぞ、つかまえたぞ」と言った。僧は「和尚、わたしではありません」と言った。紫胡は「そうであることはそうなのだ。ただお前が引き受けようとしないだけだ」と言った。君がもしこの話が分かれば、あらゆる人を咬み殺すことを許そう。至るところに清風がりんりんと吹くだろう。もしまだそうでなければ、立て札の中の数文字はどうにもならない。彼に会いたいなら、ただ透り尽くしてこそ会えるのである。頌に言う。「木の仏は火を渡らない。いつも破竈堕を思う。杖でたちまち打たれて、はじめて自分に背いていたことを知る」。

解説

頌の第二首「金仏不渡鑪」と、それに対する圜悟の評唱である。雪竇は金仏が炉で溶ける一句に、紫胡和尚の山門の立て札の話を重ねた。紫胡は「紫胡に一狗有り」と札を立て、新来の僧が振り返った瞬間に方丈へ帰ってしまう。夜中に「賊を捉えよ」と叫んで僧をつかまえ、違うと言う僧に、そうなのだ、ただ引き受けないだけだと迫った話も添えられる。紫胡の狗はためらう心、すなわち擬議を咬むはたらきであり、炉のように相手の分別を溶かす作家の手段である。自分こそ当事者だと引き受けることを避けていないか、という問いは、責任ある立場で働く者に鋭く響く。

この章句が説くこと

紫胡狗擬議承当頌責任分別

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