導師導古典を学びたいすべての人に

碧巌録 / 第八十五則

好箇斑斑爪牙未備。是則是箇大蟲。也解藏牙伏爪。爭奈不解咬人。君不見。大雄山下忽相逢。落落聲光皆振地。百丈一日問黃檗云。什麼處來。檗云。山下採菌子來。丈云。還見大蟲麼。檗便作虎聲。丈於腰下取斧作斫勢。檗約住便掌。丈至晚上堂云。大雄山下有一虎。汝等諸人出入切須好看。老僧今日親遭一口。後來溈山問仰山。黃檗虎話作麼生。仰云。和尚尊意如何。溈山云。百丈當時合一斧斫殺。因什麼到如此。仰山云。不然。溈山云。子又作麼生。仰山云。不唯騎虎頭。亦解收虎尾。溈山云。寂子甚有嶮崖之句。雪竇引用明前面公案。聲光落落振於大地也。這箇些子轉變自在。要句中有出身之路。大丈夫見也無。還見麼。收虎尾兮捋虎鬚。也須是本分。任爾收虎尾捋虎鬚。未免一時穿却鼻孔。

新字:好箇斑斑爪牙未備。是則是箇大虫。也解蔵牙伏爪。争奈不解咬人。君不見。大雄山下忽相逢。落落声光皆振地。百丈一日問黄檗云。什麼処来。檗云。山下採菌子来。丈云。還見大虫麼。檗便作虎声。丈於腰下取斧作斫勢。檗約住便掌。丈至晩上堂云。大雄山下有一虎。汝等諸人出入切須好看。老僧今日親遭一口。後来溈山問仰山。黄檗虎話作麼生。仰云。和尚尊意如何。溈山云。百丈当時合一斧斫殺。因什麼到如此。仰山云。不然。溈山云。子又作麼生。仰山云。不唯騎虎頭。亦解収虎尾。溈山云。寂子甚有嶮崖之句。雪竇引用明前面公案。声光落落振於大地也。這箇些子転変自在。要句中有出身之路。大丈夫見也無。還見麼。収虎尾兮捋虎鬚。也須是本分。任爾収虎尾捋虎鬚。未免一時穿却鼻孔。

書き下し

好箇の斑斑、爪牙未だ備はらずとは、是なることは則ち是れ箇の大虫、也た牙を蔵し爪を伏することを解す、争奈せん人を咬むことを解せざることを。君見ずや、大雄山下忽ち相逢ふ、落落たる声光皆な地を振るふ。百丈一日黄檗に問うて云く、「什麼の処よりか来る」。檗云く、「山下に菌子を採り来る」。丈云く、「還た大虫を見るや」。檗便ち虎声を作す。丈、腰下より斧を取つて斫る勢を作す。檗、約住して便ち掌す。丈、晩に至つて上堂して云く、「大雄山下に一虎有り、汝等諸人、出入に切に須らく好く看るべし。老僧今日親しく一口に遭ふ」と。後来、溈山、仰山に問ふ、「黄檗の虎の話作麼生」。仰云く、「和尚の尊意如何」。溈山云く、「百丈当時合に一斧にて斫殺すべし。什麼に因つてか此の如くなるに到る」。仰山云く、「然らず」。溈山云く、「子又た作麼生」。仰山云く、「唯だ虎頭に騎るのみにあらず、亦た虎尾を収むることを解す」。溈山云く、「寂子、甚だ嶮崖の句有り」。雪竇引用して前面の公案を明かす。声光落落として大地に振るふなり。這箇些子、転変自在にして、句中に出身の路有らんことを要す。大丈夫、見るや也た無しや。還た見るや。虎尾を収めて虎鬚を捋づ。也た須らく是れ本分なるべし。任ひ爾虎尾を収め虎鬚を捋づるも、未だ一時に鼻孔を穿却することを免れず。

現代語訳

立派な斑模様の虎だが、爪も牙もまだ備わっていないとは、確かに虎ではあり、牙を隠し爪を伏せることも心得ているが、惜しいことに人に咬みつくことを知らないということだ。君は知らないか、大雄山のふもとでばったり出くわし、からりとした声と光が大地を揺るがしたことを。百丈がある日、黄檗に「どこから来たか」と問うた。黄檗は「山のふもとでキノコを採ってきました」と言った。百丈は「虎に会ったか」と言った。黄檗はすぐ虎の声をあげた。百丈は腰から斧を取って斬りつける構えをした。黄檗はそれを押さえて、すぐ平手で打った。百丈は夕方になって上堂して言った。「大雄山のふもとに一頭の虎がいる。おまえたち、出入りにはよくよく気をつけよ。わしは今日、じかにひと咬みされた」。後に溈山が仰山に「黄檗の虎の話をどう見るか」と問うた。仰山は「和尚のお考えはいかがですか」と言った。溈山は「百丈はあの時、斧の一撃で斬り殺すべきだった。どうしてこんなことになったのか」と言った。仰山は「そうではありません」と言った。溈山は「では、おまえはどうだ」と言った。仰山は「虎の頭にまたがるだけでなく、虎の尾を押さえることも心得ています」と言った。溈山は「慧寂よ、おまえには実に険しい句がある」と言った。雪竇はこれを引いて、前の公案を明らかにしている。からりとした声と光が大地を揺るがすのである。このわずかな処は、自在に変転して、句の中に身を抜け出る道がなければならない。大丈夫よ、見たか見ないか。見えるか。虎の尾をつかみ、虎のひげをしごく。それもまた本分でなければならない。たとえ君が虎の尾をつかみ虎のひげをしごいても、一度に鼻に縄を通されるのは免れない。

解説

圜悟の頌評唱の後半である。爪牙が備わらない虎とは、牙を隠し爪を伏せることは知っていても、人に咬みつくことを知らない者だと説く。対照として百丈と黄檗の話が引かれる。黄檗が虎の声をあげ、百丈が斧を構えると、黄檗はそれを押さえて平手で打ち、百丈は今日虎にひと咬みされたと上堂で語った。仰山はこれを、虎の頭に騎るだけでなく尾を収めることも心得ていると評した。攻めるだけでなく、相手の勢いを受け止めて収めきる力が大丈夫の条件である。勢いのある相手に押し切られず、受け止めて形にする力が、交渉でも育成でも問われる。

この章句が説くこと

公案機鋒自由本分黄檗虎尾

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る