碧巌録 / 第四十八則
來問若成風 應機非善巧堪悲獨眼龍曾未呈牙爪 牙爪開生雲雷逆水之波經幾回
新字:来問若成風 応機非善巧堪悲独眼竜曽未呈牙爪 牙爪開生雲雷逆水之波経幾回
書き下し
来問は風を成すが若きも、機に応ずるは善巧に非ず。悲しむに堪へたり独眼龍、曾て未だ牙爪を呈せず。牙爪開いて雲雷を生ず、逆水の波幾回をか経たる。
現代語訳
問いかけは斧を振るって風を起こすように見事であったが、その機に応じた答えは巧みではなかった。悲しむべきは独眼の龍(明招)、いまだかつて牙と爪を見せたことがない。牙と爪を開けば雲と雷を生む、流れに逆らう波を幾度くぐってきたことか。
解説
第四十八則に対する雪竇の頌である。冒頭の来問は風を成すが若しは、『荘子』の郢人と匠石の故事を踏まえ、王太傅の問いが斧を振るって風を起こすほど見事だったことを詠む。それに応じた朗上座の答えは善巧ではなかったと続ける。独眼龍とは片目であったと伝わる明招を指し、その評も牙爪を見せるには至らなかったと惜しむ。最後の二句は、牙爪を開けば雲雷を生むと詠み、雪竇自身の茶炉を踏み倒せの語をひそかに誇っている。見事な問いには、それに見合う見事な応答で応じるべきだという緊張感が漂う頌である。
この章句が説くこと
頌雪竇応対荘子独眼竜運斤成風
関連する章句
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『碧巌録』第四十八則「来問は風を成すが若きも、機に応ずるは善巧に非ず」。太傅の問処は、斤を運らして風を成すに似たり。此れは荘子に出づ。郢人壁に泥りて一少竅を余す。遂に泥を円めて擲つて之を補ふ。時に少泥有りて鼻端に落在す。傍らに匠者有りて云く、「公竅を補ふこと甚だ巧みなり。我れ斤を運らして汝が為に鼻端の泥を取らん」。其の鼻端の泥、蠅子の翼の若し。匠者をして之を斵らしむ。匠者斤を運らし、風を成して之を斵り、其の泥を尽くして鼻を傷つけず。郢人立つて容を失はず。所謂二俱に巧妙なり。朗上座其の機に応ずと雖も、語に善巧無し。所以に雪竇道ふ、「来問は風を成すが若きも、機に応ずるは善巧に非ず」。「悲しむに堪へたり独眼龍、曾て未だ牙爪を呈せず」。明招道ひ得て也た太だ奇特なり。争奈せん未だ拏雲攫霧底の爪牙有らざることを。雪竇傍らより肯はず、忍俊不禁、他に代つて気を出だす。雪竇暗に去つて他の意に合す。自ら他の茶炉を踏倒するの語を頌す。「牙爪開いて雲雷を生ず、逆水の波幾回をか経たる」。雲門道ふ、「汝に逆水の波有ることを望まず、但だ順水の意有るも亦た得し」。所以に道ふ、「活句の下に薦得せば、永劫に忘れず」。朗上座と明招と、語句死せるに似たり。若し活処を見んと要せば、但だ雪竇の茶炉を踏倒するを看よ。
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