碧巌録 / 第四十則
聞見覺知非一一山河不在鏡中觀霜天月落夜將半誰共澄潭照影寒
新字:聞見覚知非一一山河不在鏡中観霜天月落夜将半誰共澄潭照影寒
書き下し
聞見覚知一一に非ず、山河は鏡中に在りて観ず。霜天月落ちて夜将に半ばならんとす、誰と共にか澄潭影を照らして寒き。
現代語訳
聞くこと、見ること、覚えること、知ることは、一つ一つ別々のものではない。山河は鏡の中に映して観るものではない。霜の降りた空に月が落ち、夜はまさに半ばになろうとしている。誰と一緒に、澄んだ淵に影を映して寒さを味わおうか。
解説
第四十則に雪竇が付けた頌である。聞見覚知一一に非ずとは、感覚や知の働きが別々に分かれたものではないということで、本則の万物一体を受けている。山河は鏡中に在りて観ずとは、外の世界を鏡に映すように主客を分けて眺めるのではないと言う。後半の霜天月落ちて夜将に半ばならんとす、誰と共にか澄潭影を照らして寒きの二句は、主客の分かれる前の静まりきった境を、冷え冴えた夜の情景で示している。物事を外から評論するだけでなく、自分もその中に身を置いて見る姿勢を思い起こさせる頌である。
この章句が説くこと
頌一体主客雪竇無心鏡
関連する章句
-
『碧巌録』第四十則南泉は小睡語、雪竇は大睡語。夢を作すと雖然も、却つて箇の好夢を作し得たり。前頭には一体を説き、這裏には不同を説く。聞見覚知一一に非ず、山河は鏡中に在りて観ず。若し鏡中に在りて観じて、然る後に方に曉了すと道はば、則ち鏡処を離れず。山河大地、草木叢林、鏡を将て鑑みること莫れ。若し鏡を将て鑑みれば、便ち両段と為る。但だ只だ山は是れ山、水は是れ水なるべし。法は法位に住して、世間の相常住なり。山河は鏡中に在りて観ず、且く道へ、什麼の処に向いてか観ん。還た会すや。這裏に到りて、霜天月落ちて夜将に半ばならんとするに向いて、這辺は爾が与に打併し了れり、那辺は爾自ら相度れ。還た雪竇の本分の事を以て人の為にすることを知るや。誰と共にか澄潭影を照らして寒き。為復自ら照らすか、為復人と共に照らすか。須らく是れ機を絶し解を絶して、方に這の境界に到るべし。即今も也た澄潭を要せず、也た霜天月落を待たず。即今作麼生。
-
『碧巌録』第四十六則虚堂の雨滴声、作者も酬対し難し。若し曾て入流すと謂はば、依前として還つて会せず。会と不会と、南山北山転た雱霈たり。
-
『碧巌録』第二則雪竇他の落処を知る、所以に此の如く頌す。「至道無難」、便ち後に随つて道ふ、「言端語端」。一隅を挙ぐるに三隅を以て反さず。雪竇道ふ、「一に多種有り、二に両般無し」。三隅にして一を反すに似たり。爾且く道へ、什麼の処か是れ言端語端の処。什麼と為てか一に却つて多種有り、二に却つて両般無き。若し眼を具せずんば、什麼の処に向つてか摸索せん。若し這の両句を透得せば、所以に古人道ふ、「打成一片」と。依旧として見る、山は是れ山、水は是れ水、長は是れ長、短は是れ短、天は是れ天、地は是れ地。有る時は天を喚んで地と作し、有る時は地を喚んで天と作し、有る時は山を喚んで山にあらずとし、水を喚んで水にあらずとす。畢竟怎生か平穏に去ることを得ん。風来れば樹動き、浪起れば船高し。春生じ夏長じ、秋収め冬蔵む。一種平懐なれば、泯然として自ら尽く。則ち此の四句の頌、頓に絶し了れり。
-
『碧巌録』第三十七則三界無法、何処にか心を求めん。白雲を蓋と為し、流泉を琴と作す。一曲両曲人の会する無し、雨過ぎて夜塘秋水深し。
-
『碧巌録』第四十則古人道ふ、尽乾坤大地、只だ是れ一箇の自己。寒ければ則ち普天普地寒く、熱ければ則ち普天普地熱し。有なれば則ち普天普地有、無なれば則ち普天普地無。是なれば則ち普天普地是、非なれば則ち普天普地非と。法眼云く、渠渠渠、我我我、南北東西皆可可、不可可、但だ唯我のみ不可無しと。所以に道ふ、天上天下唯我独尊と。石頭肇論を看るに因りて、此の万物を会して自己と為す処に至りて、豁然として大悟す。後に一本の参同契を作る。亦た此の意を出でず。看よ他の恁麼に問ふことを。且く道へ、什麼の根にか同じき、那箇の体にか同じき。這裏に到りては、也た奇特なることを妨げず。豈に他の常人の、天の高く地の厚きことを知らざるに同じからんや。豈に恁麼の事有らんや。陸亘大夫恁麼に問ふ、奇なることは則ち甚だ奇なり。只だ是れ教意を出でず。若し教意を是れ極則と道はば、世尊何が故に更に花を拈ずる。祖師更に西来して作麼。
-
『碧巌録』第五十一則末後の句、君が為に説く。明暗双双底の時節。同条に生ずるや共に相知る、同条に死せざるや還た殊絶す。還た殊絶す、黄頭碧眼も須らく甄別すべし。南北東西、帰去来、夜深けて同じく看る千巌の雪。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る