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碧巌録 / 第三十八則

却回再入方丈。清坐次。便問。某適來輒呈騃見。冐瀆尊顏。伏蒙和尚慈悲。未賜罪責。清云。適來從東來。豈不是翠嚴來。穴云。雪竇親棲寶蓋東。清云。不逐亡羊狂解息。却來這裏念詩篇。穴云。路逢劍客須呈劍。不是詩人莫獻詩。清云。詩速祕却。略借劍峯穴云。梟首甑人携劍去。清云。不獨觸風化。亦自顯顢頇。穴云。若不觸風化。焉明古佛心。清云。何名古佛心。穴又云再許允容。師今何有清云。東來衲子菽麥不分。穴云。只聞不以而以。何得抑以而以。清云。巨浪湧千尋。澄波不離水。穴云。一句截流萬機寢削。穴便禮拜。清以拂子點三點云。俊哉。且坐喫茶。

新字:却回再入方丈。清坐次。便問。某適来輒呈騃見。冐瀆尊顔。伏蒙和尚慈悲。未賜罪責。清云。適来従東来。豈不是翠厳来。穴云。雪竇親棲宝蓋東。清云。不逐亡羊狂解息。却来這裏念詩篇。穴云。路逢剣客須呈剣。不是詩人莫献詩。清云。詩速秘却。略借剣峯穴云。梟首甑人携剣去。清云。不独触風化。亦自顕顢頇。穴云。若不触風化。焉明古仏心。清云。何名古仏心。穴又云再許允容。師今何有清云。東来衲子菽麦不分。穴云。只聞不以而以。何得抑以而以。清云。巨浪湧千尋。澄波不離水。穴云。一句截流万機寝削。穴便礼拝。清以払子点三点云。俊哉。且坐喫茶。

書き下し

却回して再び方丈に入る。清坐する次で、便ち問ふ、某適来輒ち騃見を呈して、尊顔を冒瀆す。伏して和尚の慈悲を蒙りて、未だ罪責を賜はず。清云く、適来東より来ると、豈に是れ翠巌より来るにあらずや。穴云く、雪竇は親しく宝蓋の東に棲む。清云く、亡羊を逐はずして狂解息み、却つて這裏に来りて詩篇を念ず。穴云く、路に剣客に逢はば須らく剣を呈すべし、是れ詩人ならずんば詩を献ずること莫れ。清云く、詩は速やかに秘却せよ、略剣峰を借らん。穴云く、梟首の甑人剣を携へて去る。清云く、独り風化に触るるのみならず、亦た自ら顢頇を顕はす。穴云く、若し風化に触れずんば、焉んぞ古仏の心を明らめん。清云く、何をか古仏の心と名づく。穴又云く、再び允容を許さば、師今何か有る。清云く、東来の衲子、菽麦分かたず。穴云く、只だ聞く以てせずして以てすと、何ぞ抑も以てして以てすることを得ん。清云く、巨浪千尋に湧く、澄波水を離れず。穴云く、一句截流、万機寝削。穴便ち礼拝す。清払子を以て点ずること三点して云く、俊なる哉、且く坐して茶を喫せよ。

現代語訳

風穴は引き返して、再び方丈に入った。鏡清が坐っているところへ、すぐに問うた、「わたしはさきほど軽々しく愚かな見解を述べて、尊顔を汚しました。伏して和尚のお慈悲をこうむり、まだお咎めをいただいておりません」。鏡清は言った、「さきほど東から来たと言ったが、翠巌から来たのではないか」。風穴は言った、「雪竇(の山)は宝蓋山の東にじかに棲んでおります」。鏡清は言った、「逃げた羊を追わなくなって狂った見解は止んだが、かえってここへ来て詩を吟じている」。風穴は言った、「道で剣客に出会えば剣を差し出すべきですが、詩人でなければ詩を献じてはなりません」。鏡清は言った、「詩はさっさとしまいこめ。ちょっと剣の切っ先を借りよう」。風穴は言った、「首をさらすべき甑人が剣を携えて去りました」。鏡清は言った、「ただ風教に触れるだけでなく、自分のでたらめぶりまで現している」。風穴は言った、「もし風教に触れなければ、どうして古仏の心を明らかにできましょう」。鏡清は言った、「何を古仏の心と名づけるのか」。風穴はさらに言った、「もう一度お許しいただけるなら、師には今何があるのでしょうか」。鏡清は言った、「東から来た僧は、豆と麦の区別もつかない」。風穴は言った、「ただ、用いないで用いるとは聞いていますが、どうしてそもそも用いて用いることがありましょう」。鏡清は言った、「巨大な波が千尋に湧き上がっても、澄んだ波は水を離れない」。風穴は言った、「一句で流れを断ち切れば、あらゆる働きが鎮まり消えます」。そして風穴は礼拝した。鏡清は払子で三度点じて言った、「見事だ。まあ坐って茶を飲め」。

解説

第三十八則の本則評唱で、風穴と鏡清の応酬の後半である。一度退出した風穴は方丈に戻り、非礼を詫びつつ再び問答を挑む。鏡清は翠巌から来たのだろうと出自を突き、詩を詠むなと退けるが、風穴は路に剣客に逢わば剣を呈すべしと返す。応酬は古仏の心をめぐって続き、鏡清が巨浪千尋に湧くも澄波は水を離れずと言うと、風穴は一句截流、万機寝削と応じて礼拝した。鏡清は払子で三点し、見事だと茶を勧める。引き返してもう一度挑む気概が、相手の評価を一変させることがある。粘り強く向き合った先に認め合える関係が生まれると教えている。

この章句が説くこと

問答気概風穴鏡清截流禅機

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