碧巌録 / 第三十六則
大地絕纖埃 何人眼不開始隨芳草去又逐落花回 羸鶴翹寒木狂猿嘯古臺長沙無限意
新字:大地絶繊埃 何人眼不開始随芳草去又逐落花回 羸鶴翹寒木狂猿嘯古台長沙無限意
書き下し
大地に繊埃を絶す、何人か眼開かざる。始めは芳草に随ひて去り、又落花を逐うて回る。羸鶴寒木に翹ち、狂猿古台に嘯く。長沙無限の意。
現代語訳
大地には塵ひとつない。誰の眼が開かないことがあろう。はじめは香しい草について行き、また散る花を追って帰ってきた。痩せた鶴は冬枯れの木に片足で立ち、狂った猿は古い楼台でうそぶく。長沙の限りない心よ。
解説
第三十六則に雪竇が付けた頌である。大地に繊埃を絶すとは、遊山の道すがら見るものすべてに一点の塵もない境地を詠んだ句で、そこでは誰の眼も開いているという。続いて長沙の答えをそのまま引き、その左右に羸鶴と狂猿の句を貼りつけて一首の詩のように仕立てている。最後に長沙無限の意と結び、言い尽くせない長沙の心を示す。圜悟はこの後、雪竇がここで咄と一喝したと評している。見慣れた職場の風景も、曇りのない眼で見直せば違って見える。日常の中に完結した世界があることを教える頌である。
この章句が説くこと
頌無心長沙雪竇境界眼
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