碧巌録 / 第三十二則
看他恁麼。直出直入。直往直來。乃是臨濟正宗。有恁麼作用。若透得去。便可翻天作地。自得受用。定上座是這般漢。被臨濟一掌。禮拜起來。便知落處。他是向北人。最朴直。既得之後。更不出世。後來全用臨濟機。也不妨頴脫。一日路逢巖頭雪峯欽山三人。巖頭乃問甚處來。定云。臨濟。頭云。和尚萬福。定云。已順世了也。頭云。某等三人。特去禮拜。福緣淺薄。又值歸寂。未審和尚在日。有何言句。請上座舉一兩則看。
新字:看他恁麼。直出直入。直往直来。乃是臨済正宗。有恁麼作用。若透得去。便可翻天作地。自得受用。定上座是這般漢。被臨済一掌。礼拝起来。便知落処。他是向北人。最朴直。既得之後。更不出世。後来全用臨済機。也不妨頴脱。一日路逢巖頭雪峯欽山三人。巖頭乃問甚処来。定云。臨済。頭云。和尚万福。定云。已順世了也。頭云。某等三人。特去礼拝。福縁浅薄。又値帰寂。未審和尚在日。有何言句。請上座舉一両則看。
書き下し
看よ他の恁麼に、直出直入、直往直来なることを。乃ち是れ臨済の正宗なり。恁麼の作用有り。若し透得し去らば、便ち天を翻して地と作し、自ら受用を得べし。定上座は是れ這般の漢なり。臨済に一掌せられて、礼拝して起き来るに、便ち落処を知る。他は是れ向北の人、最も朴直なり。既に得たる後、更に出世せず。後来全く臨済の機を用ゐて、也た頴脱なることを妨げず。一日路に巌頭・雪峰・欽山の三人に逢ふ。巌頭乃ち問ふ、甚処よりか来る。定云く、臨済。頭云く、和尚万福なりや。定云く、已に順世し了れり。頭云く、某等三人、特に去いて礼拝せんとするに、福縁浅薄にして、又帰寂に値ふ。未審し、和尚在りし日、何の言句か有りし。請ふ上座一両則を挙し看よ。
現代語訳
見よ、このようにまっすぐ出てまっすぐ入り、まっすぐ行きまっすぐ来るさまを。これこそ臨済の正しい宗風であり、このような働きがある。もしこれを突き抜けることができれば、天をひっくり返して地とし、自ら存分に使いこなすことができる。定上座はそういう男であった。臨済に一発打たれ、礼拝して起き上がったとき、ただちに要のところを知った。彼は北方の人で、きわめて素朴で実直であった。悟ってからは、ついに寺の住持として世に出ることはなかった。後年はまったく臨済の働きを用い、その抜きん出た鋭さは見事であった。ある日、道で巌頭・雪峰・欽山の三人に出会った。巌頭が問うた、「どこから来られたか」。定上座は言った、「臨済のところから」。巌頭は言った、「和尚はお元気ですか」。定上座は言った、「もう遷化されました」。巌頭は言った、「われら三人はわざわざ礼拝に参ろうとしていたのですが、縁が薄く、ご入寂に行き会ってしまいました。和尚がご存命の折、どのようなお言葉があったでしょうか。上座、一つ二つ挙げてみてください」。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『碧巌録』第三十二則挙す。定上座、臨済に問ふ、如何なるか是れ仏法の大意。済禅床を下りて、擒住して一掌を与へ、便ち托開す。定佇立す。傍らの僧云く、定上座何ぞ礼拝せざる。定方に礼拝して、忽然として大悟す。
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『碧巌録』第三十二則定遂に臨済一日衆に示して云くを挙す、赤肉団上に一無位の真人有り、常に汝等諸人の面門より出入す。未だ証拠せざる者は看よ看よと。時に僧有り出でて問ふ、如何なるか是れ無位の真人。済便ち擒住して云く、道へ道へ。僧擬議す。済便ち托開して云く、無位の真人、是れ什麼の乾屎橛ぞと。便ち方丈に帰る。巌頭覚えず舌を吐く。欽山云く、何ぞ非無位の真人と道はざる。定に擒住せられて云く、無位の真人と非無位の真人と、相去ること多少ぞ。速やかに道へ速やかに道へ。山無語、直に面黄面青なることを得たり。巌頭・雪峰近前して礼拝して云く、這の新戒は好悪を識らず、上座に触忤す。望むらくは慈悲もて且く放過せよ。定云く、若し是れ這の両箇の老漢ならずんば、這の尿床の鬼子を築殺せん。又鎮州に在りて斎より回り、橋上に到りて歇む。三人の座主に逢ふ。一人問ふ、如何なるか是れ禅河の深処、須らく底を窮むべし。定擒住して橋下に抛向せんと擬す。時に二座主、連忙として救ひて云く、休みね休みね、是れ伊上座に触忤す、且く望むらくは慈悲せよ。定云く、若し是れ二座主ならずんば、他に従ひて窮めて底に到り去らしめん。看よ他の恁麼の手段、全く是れ臨済の作用なり。更に雪竇の頌出するを看よ。云く、
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『碧巌録』第三十二則断際の全機、後蹤を継ぐ。持ち来たる何ぞ必ずしも従容たるに在らん。巨霊手を擡ぐるに多子無し、分破す華山の千万重。雪竇頌す、断際の全機後蹤を継ぐ、持ち来たる何ぞ必ずしも従容たるに在らんと。黄檗の大機大用は、唯だ臨済のみ独り其の蹤を継ぐ。拈得し将ち来たりて擬議を容れず。或し若し躊躇せば便ち陰界に落つ。楞厳経に云く、我が按指するが如きは、海印光を発す。汝暫くも心を挙ぐれば、塵労先づ起こると。巨霊手を擡ぐるに多子無し、分破す華山の千万重。巨霊神は大神力有り、手を以て太華を擘開し、水を放ちて黄河に流入せしむ。定上座の疑情は、山の堆く岳の積むが如し。臨済に一掌せられて、直に瓦解氷消することを得たり。
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『碧巌録』第四十九則看よ他の二人、最初は孤危峭峻、末後は二俱に死郎当。且く道へ、還つて得失勝負有りや。他の作家の酬唱は、必ず此を知らず。三聖、臨済に在つて院主と作る。臨済遷化に垂示して云く、「吾が去りて後、吾が正法眼蔵を滅することを得ざれ」。三聖出でて云く、「争でか敢へて和尚の正法眼蔵を滅却せん」。済云く、「已後人有つて汝に問はば、作麼生」。三聖便ち喝す。済云く、「誰か知らん吾が正法眼蔵、這の瞎驢辺に向かつて滅却せんとは」。三聖便ち礼拝す。他は是れ臨済の真子、方に敢へて此くの如く酬唱す。雪竇末後に、只だ透網の金鱗を頌して、他の作家相見の処を顕す。頌に云く。
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『碧巌録』第三十二則垂示に云く、十方を坐断して千眼頓に開く。一句截流して万機寝削す。還た同死同生底有りや。見成の公案、打畳不下。古人の葛藤、試みに請ふ挙し看ん。
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『臨済録』勘辨定上座有り、到り參じて問ふ、「如何なるか是れ佛法の大意」と。師繩床を下り、擒住して一掌を與へて便ち托開す。定佇立す。傍の僧云く、「定上座、何ぞ禮拜せざる」と。定方に禮拜し、忽然として大悟す。
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