臨済録 / 勘辨
有定上座到參,問:「如何是佛法大意?」師下繩床,擒住與一掌便托開,定佇立。傍僧云:「定上座何不禮拜?」定方禮拜,忽然大悟。
新字:有定上座到参,問:「如何是仏法大意?」師下縄床,擒住与一掌便托開,定佇立。傍僧云:「定上座何不礼拝?」定方礼拝,忽然大悟。
書き下し
定上座有り、到り參じて問ふ、「如何なるか是れ佛法の大意」と。師繩床を下り、擒住して一掌を與へて便ち托開す。定佇立す。傍の僧云く、「定上座、何ぞ禮拜せざる」と。定方に禮拜し、忽然として大悟す。
現代語訳
定上座という者がやって来て参じ、問うた。「仏法の大意とは何ですか」。慧照は縄床を下り、その胸ぐらをつかんで一発平手打ちを与え、そのまま突き放した。定は立ちつくした。そばにいた僧が言った。「定上座、どうして礼拝しないのか」。定はそこで礼拝し、たちまち大悟した。
解説
臨済のやり方が最も乾いた形で出る一段である。仏法の大意を問われて、床を下り、つかんで、打って、突き放す。言葉が一つもない。定上座は立ちつくしたまま動けなくなる。ここまでなら、乱暴に扱われて固まっただけだ。転機はそばにいた僧の一言で来る。「何ぞ禮拜せざる」——なぜ礼拝しないのか。促されて礼拝した、その動作の途中で大悟したという。悟りが打たれた瞬間ではなく、頭を下げた瞬間に起きているのが面白い。打撃は思考を止めただけで、止まったところで身体が先に動いた。しかもきっかけを作ったのは臨済でも本人でもなく、居合わせた無名の僧である。誰の手柄とも言えない形で決着していて、教える側の力量の話に回収されていない。
この章句が説くこと
定上座擒住与一掌大悟傍の僧の一言