碧巌録 / 第十則
並立體空為號。人人有無礙之力。箇箇懷勇健之能。直心為見性之功。一正去百邪之亂。擐堅固甲。執三昧鏘。智箭禪弓光明慧劒。向大乘門中訓練。寂滅山內安營。三明嶺上開旗。八正路邊排布。遣大覺性。為捉生之將。遊歷四方。搜求妄想之踪。抄截無明之蹟。復使慈悲王。破三毒之寨。忍辱帥伐嗔怒之城。精進軍除傲慢之妖。喜捨士捉慳貪之賊。逡巡而魔軍大起。殺氣衝天。臣乃部領摩訶。一時齊入。
新字:並立体空為号。人人有無礙之力。箇箇懐勇健之能。直心為見性之功。一正去百邪之乱。擐堅固甲。執三昧鏘。智箭禅弓光明慧劒。向大乗門中訓練。寂滅山内安営。三明嶺上開旗。八正路辺排布。遣大覚性。為捉生之将。遊歴四方。捜求妄想之踪。抄截無明之跡。復使慈悲王。破三毒之寨。忍辱帥伐嗔怒之城。精進軍除傲慢之妖。喜捨士捉慳貪之賊。逡巡而魔軍大起。殺気衝天。臣乃部領摩訶。一時斉入。
書き下し
並びに体空を立てて号と為す。人人無礙の力有り、箇箇勇健の能を懐く。直心を見性の功と為し、一正もて百邪の乱を去る。堅固の甲を擐し、三昧の鏘を執り、智の箭、禅の弓、光明の慧剣もて、大乗門中に向つて訓練し、寂滅山内に営を安じ、三明嶺上に旗を開き、八正路辺に排布す。大覚性を遣はして捉生の将と為し、四方を遊歴して、妄想の踪を捜求し、無明の蹟を抄截せしむ。復た慈悲王をして三毒の寨を破らしめ、忍辱帥は嗔怒の城を伐ち、精進軍は傲慢の妖を除き、喜捨士は慳貪の賊を捉ふ。逡巡にして魔軍大いに起り、殺気天を衝く。臣乃ち摩訶を部領して、一時に斉しく入る。
現代語訳
そして体空を合言葉とした。一人一人が妨げのない力を持ち、一人一人が勇猛な能力を抱いている。まっすぐな心を見性の手柄とし、一つの正しさで百の邪の乱れを除く。堅固の鎧をまとい、三昧の槍を執り、智慧の矢、禅定の弓、光明の慧剣をもって、大乗の門の中で訓練し、寂滅山の中に陣営を置き、三明の嶺の上に旗を掲げ、八正道の道ばたに兵を並べた。大覚性を遣わして生け捕りの将とし、四方を巡らせて、妄想の足跡を捜し求め、無明の跡を断ち切らせた。また慈悲王に三毒の砦を破らせ、忍辱の将軍は怒りの城を討ち、精進の軍は傲慢の妖怪を除き、喜捨の兵士は物惜しみの賊を捕らえた。たちまち魔軍が大挙して起こり、殺気は天を衝いた。臣はそこで摩訶の軍勢を率いて、一斉に攻め入った。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『碧巌録』第十則爾の時に当つて、眼は色を観ず、耳は声を聴かず、鼻は香を嗅がず、舌は味を了せず、身は触を受けず、意は攀縁せず。一志前に向ひ、念念退かず。倏忽にして魔軍大いに敗れ、六賊全く輸く。殺戮辺無く、掃除蕩尽す。妄想を生擒し、無明を活捉し、領して涅槃場中に向ひ、慧剣を以て斬つて三段と為す。煩悩林当時に摧折し、人我山化して微塵と作る。癡愛の網は智火の焚焼に遭ひ、邪見の林は慧風に吹き竭さる。茲に因つて三明再び朗かに、四智重ねて円かに、内外瑕無く、廓然として清浄なり。心王は歓喜の殿に坐し、真如は解脱の楼に登り、自性は無礙の堂に遊び、三身は法空の座に踞す。茲より法界寧静にして、永く囂塵を絶し、共に生死の河を渡り、斉しく菩提の岸に到る。魔軍既に退く、合に具さに奏聞すべし。
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『碧巌録』第十則夾山無礙禅師の降魔表、慧芳附刊す。臣聞く、三乗の路広く、法界涯無く、智海晏清にして、十方安泰なりと。時に魔軍兢ひ起つて、心田を侵撓する有り。六賊既に強く、心王驚動す。朝に百怪を生じ、暮に千邪を起し、真如を撼惑し、法体を困労せしむ。菩提の道路、隔絶して通ぜず、涅槃を破壊し、三宝を傷残す。無為の珠玉、悉く偸将せられ、大蔵の法財、皆劫奪に遭ふ。塵労日を翳ひ、欲火天に亘り、法城を飄蕩し、聖境を焚焼す。臣乃ち斯の如き暴乱を見て、仏法の以て存し難からんことを恐れ、遂に六波羅蜜と商量して、同じく剪滅を為さんとす。性空を遣はして密使と為し、魔軍を聴探せしむるに、見今五蘊山中に屯在して、八万四千余衆有り。既に体勢を知る、計は刹那に在り。遂に十八界の雄兵を点ず。
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『碧巌録』第十則垂示に云く、恁麼恁麼、不恁麼不恁麼。若し戦を論ぜば、箇箇転処に立在す。所以に道ふ、若し向上に転じ去れば、直に釈迦・弥勒・文殊・普賢、千聖万聖、天下の宗師をして、普く皆気を飲み声を呑ましむることを得。若し向下に転じ去れば、醯鶏・蠛蠓、蠢動含霊、一一大光明を放ち、一一壁立万仞。儻或し不上不下ならば、又作麼生か商量せん。条有れば条に攀ぢ、条無ければ例に攀づ。試みに挙し看ん。
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『驢鞍橋』卷中又勇猛精進の武士を頭とし、幻化無常の剣を用ゐて、自己の本源に向て、十二時中切に急に責め入るへしと云ふは、勇猛の機起れは、捨身自由に使ふほとに頭也。扨てたは事たは事と時々に責め入れは、つんつと切るゝ物也。故に剣也。勇猛の機熟すれは、自ら出る物也。又自己を守るの段に、常に六根門を堅く守て、煩悩の賊を防くへしと云ふは、自巳を守る事也。六所にて守ると云ふ事にはあらす。自己をさへ能く守れは、どつこも治る也。又一句を守るへしと云ふより末は、言句に著て自巳を守る位ぞと也。
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『驢鞍橋』卷上一日示して曰く、凡夫元より物に碍らずして、ぬんとしたる如来心有れども、六賊煩悩に責め失はれて居る也。然る間二王心を以て六賊煩悩を防ぐときんば、自ら本心はそだつ也。譬へば下馬には棒つき有り、内には広間番、段々の番所ありて、堅く守護し奉れば、君自ら大平に在すが如し。二王は是れ如来の足軽坐禅也。先づ此足軽坐禅をよう仕習ひめされよ。扨亦坐敷には十六善神。四天王、段々の本心の守護神有り、亦十二神は頭に十二支を頂き給ふ、是れ十二時の番衆也。如是十二時中强く守るときんば、煩悩消滅して、本尊自ら堅固也。此機を受けすして煩悩に勝つ事有るべからす。此仏像の道理計りは是非に御公儀へ申上け度く思ふ也。云はるゝ物ならは幽霊に成りてなりとも云ひ度く思ふと也。
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『十善法語』巻第九・不瞋恚戒一微塵ノ中。此法門アリテ大小麁細互ニ融シ。三世起滅互ニ摂ス。一世界ノ中此法門アリテ三世互ニ摂シ。麁細互ニ融ス。一切世界ノ中此法門アリテ麁細互ニ融シ。三世互ニ摂ス。経中ニ毛孔ニ世界ヲ含スト。維摩居士カ方丈室中ニ八万四千ノ師子座ヲ容ト。劫数ヲ食頃ニ経ト。有志ノ者ハ法ノ趣ヲ知ルヘキコトシヤ。世ノ愚痴ナル者ハ。凡夫カ功徳満足シテ聖域ニ入ルコトヲ。蝮蜻カ蟬ニナリ。蝸牛カ柱ヲツタヒ軒ヲツタフテ屋ニ登ル如クト思フハ不是シヤ。若軽躁ナルモノ空腹高心ニ是心是仏ト説キ。煩悩即菩提ト説ハ不是シヤ。衆生界ノ外別ニ仏界アルニ非ス。仏界ノ外ニ衆生界アルニ非ス。仏界ト衆生界ト元来一異ヲ云ヘカラス。迷フ者ハ諸仏ノ無上正覚ノ中ニ居テ三毒ヲ起ス。此三毒衆生ヲ悩乱スルコト。屠者ノ鮮肉ヲ焼煮スルカ如シ。諸仏ハ常ニ衆生三毒ノ中ニ在テ。無漏大定智悲ニ安住ス。此無漏大定智悲。衆生界ニ応現シテ。月ノ万水ニ影ヲウツス如クシヤ。
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