兵法家伝書 / 無刀之卷とられじとする無刀
一 とられじとするを、是非とらんとするにはあらず、取られじとするをば、とられぬも無刀也、とられじ〱とする人は、きらふ事をばわすれて、とられまいとばかりする程に、人を切ル事はなるまじき也、我はきられぬを勝とする也、人の刀を取るを、藝とする道にてはなし、われ刀なき時に人にきられまじき用の習也
新字:一 とられじとするを、是非とらんとするにはあらず、取られじとするをば、とられぬも無刀也、とられじ〱とする人は、きらふ事をばわすれて、とられまいとばかりする程に、人を切ル事はなるまじき也、我はきられぬを勝とする也、人の刀を取るを、芸とする道にてはなし、われ刀なき時に人にきられまじき用の習也
書き下し
一 とられじとするを、是非とらんとするにはあらず、取られじとするをば、とられぬも無刀也、とられじ〱とする人は、きらふ事をばわすれて、とられまいとばかりする程に、人を切ル事はなるまじき也、我はきられぬを勝とする也、人の刀を取るを、藝とする道にてはなし、われ刀なき時に人にきられまじき用の習也
現代語訳
一、取られまいとするものを、是非とも取ろうとするのではない。取られまいとするのを、取られずにすませるのもまた無刀である。取られまい取られまいとする人は、斬ることを忘れて取られまいとばかりするので、人を斬ることはできないであろう。自分は斬られないことを勝ちとするのである。人の刀を取ることを芸とする道ではない。自分に刀がないときに、人に斬られまいとするための用の習いである。
解説
ここで宗矩は、取られまいと身を固めることがかえって目的を見失わせると述べます。取られまいと執着する人は斬ることを忘れ、守ることだけに気を取られるので勝てないというのです。そのうえで勝ちを「斬られないこと」と定め直し、刀を奪う芸を競う発想を退けます。無刀は芸ではなく、刀がないときの用の習いだという位置づけです。仕事でも、失敗を避けることだけに気を取られる管理職は、本来の成果を上げる動きを忘れがちです。守りの意識は、目的を見失わない範囲で持つべきだという指摘として読めます。
この章句が説くこと
無刀執着勝ち負け守り用の習い兵法家伝書
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