兵法家伝書 / 活人劔空敵の心を見る
偖唯一とは空を云なり、空とはかくし言葉也、祕傳すべし、空とは敵の心を云也、心は形もなく色もなくして、空なる故也、空唯一ッを見るとは、敵の心を見よと云義也、佛法とは此心空をさとる事也、心は空なりと說く人もあれど、悟り曉むる人はまれ也となり、
新字:偖唯一とは空を云なり、空とはかくし言葉也、秘伝すべし、空とは敵の心を云也、心は形もなく色もなくして、空なる故也、空唯一ッを見るとは、敵の心を見よと云義也、仏法とは此心空をさとる事也、心は空なりと説く人もあれど、悟り暁むる人はまれ也となり、
書き下し
偖唯一とは空を云なり、空とはかくし言葉也、祕傳すべし、空とは敵の心を云也、心は形もなく色もなくして、空なる故也、空唯一ッを見るとは、敵の心を見よと云義也、佛法とは此心空をさとる事也、心は空なりと說く人もあれど、悟り曉むる人はまれ也となり、
現代語訳
さて、ただ一つとは空をいうのである。空とは隠し言葉である。秘伝すべきである。空とは敵の心をいう。心は形もなく色もなくして、空であるからである。空ただ一つを見るとは、敵の心を見よという意味である。仏法とはこの心の空を悟ることである。心は空であると説く人もあるが、悟り明らめる人はまれである、とのことである。
解説
前段の「ただ一つ」を、ここで「空」と明かす段です。宗矩は空を隠し言葉と呼び、秘伝すべきものとし、敵の心のことだと言い換えます。心は形も色もなく、それゆえ空であり、その空を見ることが敵の心を見ることになる、という筋道です。さらに、仏法はこの心の空を悟ることだとしながら、口で説く人は多くても悟る人はまれだと付け加えます。空という語を、虚無ではなく、見えない相手の意図の読み取りに結びつけているところが特徴的です。現代の仕事に置けば、数字や言葉の奥にある相手の意図を見ることでしょう。見えないものを見ようとする姿勢が、交渉や部下の指導の質を決めます。知識として知っていることと、悟って使えることは別だという指摘も重いものです。
この章句が説くこと
空敵の心秘伝隠し言葉悟り兵法家伝書
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