兵法家伝書 / 活人劔場をとる
一 敵のかまへ、太刀先き、我が方へむかはゞ、あぐる所につけてうつべし 一 敵をうつとおもふて我身をうたすべし、敵が我をうちさへすれば、敵をばうつた物也 一 水月の場をとれ、夫より心持を專にすべし、我場をとらんとするに、敵すでに先に場を取たらば、それをわがにすべし、つもりさへちかはねば、敵がまつて五尺も、我がよつて五尺も、敵と我との間の尺は同じ事也、人が場をとりたらば、とらせて置がよき也、場をとるとかたまりたるはあしゝ、身をうきやかに持べし
新字:一 敵のかまへ、太刀先き、我が方へむかはゞ、あぐる所につけてうつべし 一 敵をうつとおもふて我身をうたすべし、敵が我をうちさへすれば、敵をばうつた物也 一 水月の場をとれ、夫より心持を専にすべし、我場をとらんとするに、敵すでに先に場を取たらば、それをわがにすべし、つもりさへちかはねば、敵がまつて五尺も、我がよつて五尺も、敵と我との間の尺は同じ事也、人が場をとりたらば、とらせて置がよき也、場をとるとかたまりたるはあしゝ、身をうきやかに持べし
書き下し
一 敵のかまへ、太刀先き、我が方へむかはゞ、あぐる所につけてうつべし 一 敵をうつとおもふて我身をうたすべし、敵が我をうちさへすれば、敵をばうつた物也 一 水月の場をとれ、夫より心持を專にすべし、我場をとらんとするに、敵すでに先に場を取たらば、それをわがにすべし、つもりさへちかはねば、敵がまつて五尺も、我がよつて五尺も、敵と我との間の尺は同じ事也、人が場をとりたらば、とらせて置がよき也、場をとるとかたまりたるはあしゝ、身をうきやかに持べし
現代語訳
一 敵の構えや太刀先が、こちらに向かってきたら、その上げるところに付いて打て。 一 敵を打とうと思って、自分の身を打たせよ。敵がこちらを打ちさえすれば、敵を打ったも同じことである。 一 水月の場を取れ。それから心持ちをひたすら専らにせよ。自分が場を取ろうとするのに、敵がすでに先に場を取っていたなら、それを自分の場とせよ。間合いの見積もりさえ違わなければ、敵が待って五尺、こちらが寄って五尺でも、敵と自分との間の尺は同じことである。人が場を取ったなら、取らせておくのがよい。場を取ろうと固まるのは悪い。身を浮き浮きと軽やかに持て。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『兵法家伝書』活人劔「水月」一 水月 附 其影之事 右敵と我との間に凡何尺あれば、敵の太刀我身にあたらぬと云つもりありて、其尺をへだてゝ、兵法を遣ふ此尺のうちへ蹈入りぬすみこみ、敵に近付くを月の水に影をさすにたとへて、水月と云也、心に水月の場を、立あはぬ以前におもひまふけて立あふべし、尺の事は口傳すべし
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『兵法家伝書』活人劔「神妙劔」一 神妙劔之事 附リ座の心懸身に取足にとる事 右神妙劔至極の大事也、神身に神妙劔とさす所あり、わが身にありては、神妙劔の劔の字を劔の字に書てしるべし、右にかまへても、左にかまへても、太刀神妙劔の座をはなれぬ程に劔と云字に心あり、又敵の身にありては、劔の字を見の字に書て心得べし、此神妙劔の座をよく見て、切りこむ程に見る所が簡要也、然ば見の字に心あり
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『兵法家伝書』活人劔「水月・神妙劔・病氣・身手足の分別」一 水月神妙劔病氣身手足此四の分別 一 水月は立合ノ場の座取也 一 神妙劔は身の內の座取也 一 身手足は 一 敵のはたらきを見る 我身のはたらき 一 去病は手利劔を見む爲也 右しかれば極る所と、手利劔の有無を見る事專一なり、四は大體也、病をさる手利劔見む爲也、病ひさざれば、かならず病にとられて見そこなふなり、見そこなへば負なり、病とは、心の病也、心の病とは心のそこ〱にとまるを云也、心を一太刀うつた所にとゞめぬ様にすべし、心をすてゝすてぬ也
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『兵法家伝書』活人劔「神妙劔の座にはづれぬ・見る三段」一 足ぶみも身のあてがひも神妙劔の座にはづれぬ様にすべし、立あはぬさきから此心がけ、わするべからず 一 神妙劔見る事三段の分別 心にて見る事を根本とす、心から見てこそ目も付べき物なれ、しかれば目にて見るは、心の次也、目にて見て其次に身足手にて見るべし、身足手にて見るとは、敵の神妙劔に、我が身足手のはづれぬ様にするを身足手にて見ると云也、目にて見るは目にて見む爲也、目にて見るは足手を敵の神妙劔の座にあてんと云事也
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『兵法家伝書』殺人刀「太刀つれ・三尺つもり(六ヶ条)」一 太刀つれの事 一 敵身方兩三寸之事 一 身之早速ぬすみこむ事 一 上段にから見の目付之事 一 車の太刀左右ともにわけめ目付之事 一 三尺つもりの事 右六ヶ條は師匠と立相て習ひ口傳せずばなるまじき條々也、筆にはことゞくにあらわさず如此條々を以て、色々に序を切り懸て表裏をすれども、おどろかずして、敵先をこさずして、待に取かため居る時は、三尺をぬすみこみて、敵の身へ近よる時に、敵こらへかねて、懸に向ふとき、敵にせんをさせ、うたれて敵をうつなり、曉とかく、敵うたねば、かつ事がならぬ也、敵が我をうつても、我にはあたらぬつもりを、よく覺へねば、卒爾に又うたるゝ事もならぬ事也、其段を能く稽古しすまして、おそろしげもなく、敵の身へ近づきて、うたせて却て勝なり、先々の心持也
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『兵法家伝書』殺人刀「打にうたれよ」一 打にうたれよ、うたれて勝ッ心持之事 人を一刀きる事はやすし、人にきられぬ事は成がたき物也、人はきるとおもふて打つけふともまゝよ、身にあたらぬつもりを、とくと合點して、おどろかず、敵にうたるゝ也、敵はあたると思ふてうてども、つもりあれば、あたらぬ也、あたらぬ太刀は死太刀也、そこをこちから越シて打て勝也、敵のする先ははづれて、我返て先の太刀を敵へ入ル也、一太刀打てからは、はや手はあけさせぬ也、打てよりまうかうよとおもふたらば、二の太刀は又敵にかならずうたるべし、爰にて、油斷して負る也、うつた所に心がとまる故、敵にうたれ、先の太刀を、無にする也、打たる所にきれうときれまいとまゝ、心をとゞむな、二重三重猶四重五重も打べき也、敵に顏を揚させぬ也、勝事は一太刀にて定る也
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