兵法家伝書 / 活人劔有無拍子
一 有無拍子 附リ有も有、無も有と云事 右是は手字種利劔に付て、有と無と云習あり、あらわるゝ時は有也、隱るゝ時は無也、此かくれあらはるゝ有無卽手字種利劔也、太刀をにぎる手にあり、佛法に有無の沙汰あり、是になぞらへていへり、凡夫は有を見て無を見ざるなり、手字種利劔には、有をも見無をも見る也、有もあり無もある也、有の時は有に付てうち、無の時は無に付てうち、又有をまたずして無をうち、無をまたずして有をうつ程に有も有、無も無と云也
新字:一 有無拍子 附リ有も有、無も有と云事 右是は手字種利剣に付て、有と無と云習あり、あらわるゝ時は有也、隠るゝ時は無也、此かくれあらはるゝ有無即手字種利剣也、太刀をにぎる手にあり、仏法に有無の沙汰あり、是になぞらへていへり、凡夫は有を見て無を見ざるなり、手字種利剣には、有をも見無をも見る也、有もあり無もある也、有の時は有に付てうち、無の時は無に付てうち、又有をまたずして無をうち、無をまたずして有をうつ程に有も有、無も無と云也
書き下し
一 有無拍子 附リ有も有、無も有と云事 右是は手字種利劔に付て、有と無と云習あり、あらわるゝ時は有也、隱るゝ時は無也、此かくれあらはるゝ有無卽手字種利劔也、太刀をにぎる手にあり、佛法に有無の沙汰あり、是になぞらへていへり、凡夫は有を見て無を見ざるなり、手字種利劔には、有をも見無をも見る也、有もあり無もある也、有の時は有に付てうち、無の時は無に付てうち、又有をまたずして無をうち、無をまたずして有をうつ程に有も有、無も無と云也
現代語訳
一、有無拍子。附、有も有、無も有ということ。右は手字種利劔について、有と無という習いがある。現れるときは有、隠れるときは無である。この隠れ現れる有無が、すなわち手字種利劔である。太刀を握る手にある。仏法に有無の沙汰があり、これになぞらえて言うのである。凡夫は有を見て無を見ない。手字種利劔では、有をも見、無をも見る。有もあり、無もある。有のときは有について打ち、無のときは無について打つ。また有を待たずに無を打ち、無を待たずに有を打つので、有も有、無も有と言うのである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『兵法家伝書』活人劔「有も有、無も有(老子經の注)」老子經の注に常に有、常に無と云事あり、有も常にあり、無も常にあり、かくるゝときは、有卽無となる、あらわるゝ時は無卽有となる、たとへば水鳥の水にうかびたる時は有也、水に入たる時は無也、然ば有とおもふもかくれぬれば無也、又無とおもふも顯るれば有なり、左あれば有無はたゞかくれあらはるゝ也、其體は一ッなり、しかれば有も無も常なる者也、佛法には本無本有と云也、人の死するは有かくるゝ也、人の生るゝは無あらはるゝ也、其體常なる者也、太刀をにぎる手に有無と云事あり、祕傳なり是を種利劔と云也、手を伏せぬれば、有かくるゝ也、手を仰ば無又顯はるゝ也、如此云とも相傳せずば、是等言葉知りがたき事也、有の時は此有を見て、有をうつべし、無のときは此無を見て無を打べし、故に有も有、無も有と云也、有と云物卽無也、無と云物卽有也、有無非二、此種利劔の有無を見る事違はゞ百手をつくして遣ふとも、勝利あるべからず、百樣の兵法も此一段に極る所也
-
『兵法家伝書』活人劔「百樣之構ありとも唯一に勝つ」一 百樣之構ぇありとも唯一に勝事 右きわまる所は手字種利劔是也、百樣千樣におしゑなし習ひなして身かまへ、太刀かまへ、百手に遣ひなすも、此手字種利劔一ッを眼とする也、敵のかまへに百樣ありとも、我が身に百樣有りとも、手字種利劔の目付に極る也、祕傳なる故に本字を書あらはさずして音をかりて手字種利劔と云者也
-
『兵法家伝書』活人劔「神妙劔」一 神妙劔之事 附リ座の心懸身に取足にとる事 右神妙劔至極の大事也、神身に神妙劔とさす所あり、わが身にありては、神妙劔の劔の字を劔の字に書てしるべし、右にかまへても、左にかまへても、太刀神妙劔の座をはなれぬ程に劔と云字に心あり、又敵の身にありては、劔の字を見の字に書て心得べし、此神妙劔の座をよく見て、切りこむ程に見る所が簡要也、然ば見の字に心あり
-
『兵法家伝書』活人劔「空(敵の心を見る)」偖唯一とは空を云なり、空とはかくし言葉也、祕傳すべし、空とは敵の心を云也、心は形もなく色もなくして、空なる故也、空唯一ッを見るとは、敵の心を見よと云義也、佛法とは此心空をさとる事也、心は空なりと說く人もあれど、悟り曉むる人はまれ也となり、
-
『兵法家伝書』殺人刀「三拍子」一 三拍子之事 相打一ッ上れば、つけて打、一ッさぐれば越シて打一也、あふ拍子はあしゝ、あわぬ拍子をよしとす、拍子にあへば、敵の太刀遣ひよく成る也、拍子ちがへばつかわれぬ也、敵の太刀のつかひにくき様に打べし、つくるもこすも無拍子にうつべし、惣別乗拍子は惡也
-
『兵法家伝書』無刀之卷「無刀は手を道具にする」一 無刀は、人には刀をもたせ、我は手を道具にして、仕相するつもり也、しかれば刀は永く手はみじかし、敵の身ぢかくよりて、きらるゝ程にあらずば、成間敷也、敵の太刀と我が手としあふ分別すべきにや、さあれば、敵の刀は我が身より外へゆきこして、われは敵の太刀の柄の下になりてひらきて、太刀をおそふべき心あてなるべきにや、時にあたつて、一樣にかたまるべからず、いづれも身によりそはずば、とられまじき也
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る