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五常訓 / 巻之五・智

一人の心ふかくかくれて、外より見えがたければ、其内心を知りがたし。外にあらはるる言語容貌を以て、其心を信ずべからず。言語よく、容貌うるはしく、君子に似たりといへども、內心は奸曲なる者あり。言ふつゝかに、容いやしけれども、内に忠信才智ある者あり。外くらくして、内明なる人あり。外明にして、内くらき人あり。火は外明かにして內くらし。水は外くらくして、內明なり。人の性も、亦かくの如くなるあり。言と貌を以て、人をとるべからずと、古人もいへり。

新字:一人の心ふかくかくれて、外より見えがたければ、其内心を知りがたし。外にあらはるる言語容貌を以て、其心を信ずべからず。言語よく、容貌うるはしく、君子に似たりといへども、内心は奸曲なる者あり。言ふつゝかに、容いやしけれども、内に忠信才智ある者あり。外くらくして、内明なる人あり。外明にして、内くらき人あり。火は外明かにして内くらし。水は外くらくして、内明なり。人の性も、亦かくの如くなるあり。言と貌を以て、人をとるべからずと、古人もいへり。

書き下し

一人の心ふかくかくれて、外より見えがたければ、其内心を知りがたし。外にあらはるる言語容貌を以て、其心を信ずべからず。言語よく、容貌うるはしく、君子に似たりといへども、内心は奸曲なる者あり。言ふつつかに、容いやしけれども、内に忠信才智ある者あり。外くらくして、内明なる人あり。外明にして、内くらき人あり。火は外明かにして内くらし。水は外くらくして、内明なり。人の性も、亦かくの如くなるあり。言と貌を以て、人をとるべからずと、古人もいへり。

現代語訳

人の心は深く隠れて外からは見えにくいので、その内心は知りがたいものです。外に表れる言葉や容貌で、その心を信じてはいけません。言葉がよく容貌が美しく君子に似ていても、内心はよこしまな者がいます。言葉がつかえがちで容貌がいやしくても、内に忠信や才智のある者がいます。外が暗くて内が明るい人がいます。外が明るくて内が暗い人がいます。火は外が明るくて内が暗いものです。水は外が暗くて内が明るいものです。人の性にも、またこのようなものがあります。「言葉と容貌で人を取ってはいけない」と古人も言いました。

解説

外見と内面が一致しない人がいることを、火と水の比喩で説明しています。火は外が明るく内が暗く、水は外が暗く内が澄んでいます。弁舌が立ち姿の立派な人が内心よこしまなこともあれば、口下手で見栄えのしない人に忠信と才智が備わっていることもあります。論語公冶長篇で孔子が「言を以て人を取る」ことを改めたと語ったのに通じる教えです。目立つ人ばかりが評価されやすい職場で、静かに誠実な仕事をする人を見落とさないための戒めとして読めます。

この章句が説くこと

知人外見内心忠信人物

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