五常訓 / 巻之四・義
一禮運曰、何をか人義と云ふ。父慈、子孝、兄良、弟弟、夫義、婦聽長惠、幼順、君仁、臣忠、十者これを人義と云ふ。仁は人を愛する德なり。人を愛する中について、各其人によりて、相宜しき道あり。是義なり。父は子をいつくしみ、子はおやに孝を行ひ、兄は弟によく、弟は兄にしたがひ、夫は婦に義あり、婦は夫にしたがひ、君は臣に仁あり、臣は君に忠ある、此十の者は、人の義なり。義は各其人に相應して宜しきなり。是人倫の道にして、宜しく行ふべき道なり。故に人義と云ふ。
新字:一礼運曰、何をか人義と云ふ。父慈、子孝、兄良、弟弟、夫義、婦聴長恵、幼順、君仁、臣忠、十者これを人義と云ふ。仁は人を愛する徳なり。人を愛する中について、各其人によりて、相宜しき道あり。是義なり。父は子をいつくしみ、子はおやに孝を行ひ、兄は弟によく、弟は兄にしたがひ、夫は婦に義あり、婦は夫にしたがひ、君は臣に仁あり、臣は君に忠ある、此十の者は、人の義なり。義は各其人に相応して宜しきなり。是人倫の道にして、宜しく行ふべき道なり。故に人義と云ふ。
書き下し
一礼運曰、何をか人義と云ふ。父は慈、子は孝、兄は良、弟は弟、夫は義、婦は聴、長は恵、幼は順、君は仁、臣は忠、十の者これを人義と云ふ。仁は人を愛する徳なり。人を愛する中について、各其人によりて、相宜しき道あり。是義なり。父は子をいつくしみ、子はおやに孝を行ひ、兄は弟によく、弟は兄にしたがひ、夫は婦に義あり、婦は夫にしたがひ、君は臣に仁あり、臣は君に忠ある、此十の者は、人の義なり。義は各其人に相応して宜しきなり。是人倫の道にして、宜しく行ふべき道なり。故に人義と云ふ。
現代語訳
『礼記』礼運篇に「何を人の義というのか。父は慈しみ、子は孝行し、兄は善良で、弟は兄に従い、夫は義があり、婦は聞き従い、年長者は恵み、年少者は従順で、君は仁があり、臣は忠がある。この十を人の義という」とあります。仁は人を愛する徳です。人を愛する中で、それぞれその人によって、互いに宜しい道があります。これが義です。父は子を慈しみ、子は親に孝を行い、兄は弟に善くし、弟は兄に従い、夫は妻に義があり、妻は夫に従い、君は臣に仁があり、臣は君に忠がある、この十は人の義です。義はそれぞれその人にふさわしく宜しいことです。これは人倫の道であって、宜しく行うべき道です。ゆえに人の義というのです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『文武訓』武訓上一士たる者、戦にのぞんで身を捨つることはかたからず。血気の勇は盗賊もよくするものなり。只身を捨てて義にかなふことかたし。故に、死ぬべからずして死ぬるは、是其身をかろんず。父母よりうけし身をいたづらにするは不孝なり。死ぬべくして死なざるは、是其死をおそれ、命ををしみて君の為にせず、不忠なり。是李太白が言なり。年わかく血気さかんなる人、勇をこのまば、忠孝の道を知りて、生死只義にかなふべし。学問なければ忠孝の道を知らず、死ぬべくして死なず。いやしむべし。死ぬべからずして死ぬ、かなしむべし。勇怯ことなれども、義理にそむけることは一なり。武士は、学問して義理を知れば、死生する理にかなふ。
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『文武訓』武訓上一勇士は命を捨つることかたからず。捨てて道にあたることかたし。道にかなはずして死するは犬死なり。たとへば狂愚なる者の、われに無礼なるをとがめて口論して、一朝の怒によりて、人と闘ひて身を捨つ、是其身をかろんず。是不孝なり、武にあらず。死ぬべくして死なざる、是命ををしむ、勇なきなり、義にあらず。戦にのぞみ、君のために節に死なず、是不忠なり。君父のために忠孝を行ひて、一かどの用に立つべきあたら身を、よしなき少しのことをいかりて、狂人愚人のために命を捨つること、おろかなり。をしむべし。
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『五常訓』巻之四・義仁は人の心とする所、生理なり。義は人の行べき路とする所、道理なり。仁なければ、人心を失へるなり。義なければ、人道を失へるなり。凡義は、つねに居ては、理にしたがひ、欲にしたがはず。変に居ては、節を守りて、利に走らず。艱難に臨みては、君上のため身をすてて、忠を行ふ。義なければ、常に居ては、理の宜しきをすてて、唯利のためにし、変にのぞみては、恩をわすれ、徳にそむき、利につき、害をのがれ、命ををしみ、死をおそれ、君父をすてて敵にくだり、つたなき振舞をしても恥ぢず。禽獣にひとしきわざなり。皆是義を失ふなり。
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『囲炉夜話』第百四十六則・命を捨て得ざれば忠臣と爲ること能はず錢を捨て得ざれば、義士と爲ること能はず。命を捨て得ざれば、忠臣と爲ること能はず。
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『五常訓』巻之四・義一董仲舒曰く、仁人は其の義を正して其の利を謀らず、其の道を明かにして其の功を計らず。利とは義を行ふ自然のしるしなり。故に利は義の和なりといへり。君に仕ふるを以ていはば、朝夕つつしんで君によく仕ふれば、君もよろこびて、我を愛し給ふ。是義の和する処利なり。君子の、君につかへて義を行ふは、唯一すぢに君のためにして、私のためにせず、君の寵愛をねがふ心あるべからず。是義を正して利をはからざる也。君に仕ふるに限らず、万のこと、皆かくの如し。すこしも我がためにする心あるは利なり。義にあらず。此利は、みだりに財禄をむさぼる如くなる利欲にはあらず。仁人の事なれば、利欲は云ふに及ばず。義を行ひて、自から来る自然のしるしを云ふ。其自然のしるしを得んと思ふは利なり。
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『大和俗訓』巻之六・躬行上一視聴言動は、人の身の四のわざなり。思は又心の動にして、其本なり。善を好み、悪をきらふ事を誠にするは、思をつつしむの道なり。一善を行ふに、其心に、義と利とのわかちあり。義とは我が行ふべき公の理なり。私なくして、我が為にせざるなり。わが身のためにするは義にあらず。利とはわが身のためにする私の心なり。公ならざるをいふ。万の事を行ふに、先義か不義かをかへりみて、義にしたがひ行ふべし。其行ふこと善なりとも、其心義にしたがはずして、わが身の利分のためにせば、是私なり。君に仕ふる一事を以ていはば、奉公をよくつとむるは善なり。真実に忠をなして、わが身を忘るるは、義を正しくするなり。もし奉公をつとめて、つゆばかりも、君の恩寵を得んためにつとむる心あらば、是利をはかるなり。
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