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五常訓 / 巻之三・仁之下

一人の世にをるは、陰德をつみ行ふべし。陰德は、かげのめぐみと訓む。慈愛を心の内にひそかにたもちて、人を救ひ助くるを云ふ。世俗にこれを慈悲と云ふ。古人の曰、陰德は耳のなるが如し。我のみ知りて、人知らずといへり。又古語に、陰德ある者は、必陽報ありといへり。いふ意は、陰德ある者は、かげにて善を行へども、必天道に通じて、あらはに天のむくいありて、福を得るとなり。

新字:一人の世にをるは、陰徳をつみ行ふべし。陰徳は、かげのめぐみと訓む。慈愛を心の内にひそかにたもちて、人を救ひ助くるを云ふ。世俗にこれを慈悲と云ふ。古人の曰、陰徳は耳のなるが如し。我のみ知りて、人知らずといへり。又古語に、陰徳ある者は、必陽報ありといへり。いふ意は、陰徳ある者は、かげにて善を行へども、必天道に通じて、あらはに天のむくいありて、福を得るとなり。

書き下し

一人の世にをるは、陰徳をつみ行ふべし。陰徳は、かげのめぐみと訓む。慈愛を心の内にひそかにたもちて、人を救ひ助くるを云ふ。世俗にこれを慈悲と云ふ。古人の曰、陰徳は耳のなるが如し。我のみ知りて、人知らずといへり。又古語に、陰徳ある者は、必陽報ありといへり。いふ意は、陰徳ある者は、かげにて善を行へども、必天道に通じて、あらはに天のむくいありて、福を得るとなり。

現代語訳

人が世にいる間は、陰徳を積み行うべきです。陰徳とは「かげのめぐみ」と訓読みします。慈愛を心の内にひそかに保って、人を救い助けることをいいます。世間ではこれを慈悲といいます。古人は「陰徳は耳鳴りのようなものだ。自分だけが知っていて人は知らない」といいました。また古語に「陰徳ある者には必ず陽報がある」といいます。その意味は、陰徳のある者は、陰で善を行っても、必ず天の道に通じて、明らかに天の報いがあって、福を得るということです。

解説

陰徳を「かげのめぐみ」と訓み、人知れず人を救うことだと説明しています。陰徳を耳鳴りにたとえ、自分だけにわかって人には知られないとする言葉は、宋代の書などに見える古人の言です。「陰徳あれば必ず陽報あり」は『淮南子』人間訓などに見える言葉で、隠れた善行には必ず目に見える報いがあるという意味です。人に見せるためではなく、心の中で静かに行う善こそ尊いという考えは、SNSで善行を発信しがちな時代にこそ見直したい姿勢です。

この章句が説くこと

陰徳陽報慈悲善天道

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