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五行大義 / 第十九論治政

不伐木者。不可違天陽生長之氣也。若夫人君馳騁無度。沈湎縱恣。重徭役。奪民時。厚稅斂。則民疾疢瘮。患足疾。傷春氣。故皆木病也。木傷敗。則龍深藏。木禽懼而不見也。鯨鯢出而爲禍。鱗甲之蟲有金氣。所以傷木也。火用事。則正封疆。脩田疇。至于立夏。舉賢良。封有德。賞有功。出使四方。此順火之化。長養萬物也。無縱火。則火順人用。甘露降。鳳凰來。黃鵠見。鳳凰卽朱雀之類。喜故出見。甘露。黃鵠。竝子慶其母也。若人君用讒佞。離骨肉。踈忠臣。棄法令。婦人爲政。則民病血腫。國因不明。火爲災。冬鴈不來。鳥爲怪。火不善。故鳥有變怪。憂懼。故不來也。土用事。養長老。矜寡獨。賜孝悌。施恩澤。順土寬和含養之德也。無興土功。宮室制度有差。親戚之恩有序。則五穀成。嘉禾出。賢聖來。土氣順。故嘉禾和熟。其德景大。故聖賢悅之而來。若人君淫樂無度。侮親老。困百姓。則民病腹心之疾。心腹主土。氣不和。故病。賢人隱藏。百穀不登。裸蟲爲災。土性傷。故稼穡不成。賢人惡之。所以不見。裸蟲。土氣也。

新字:不伐木者。不可違天陽生長之気也。若夫人君馳騁無度。沈湎縦恣。重徭役。奪民時。厚税斂。則民疾疢瘮。患足疾。傷春気。故皆木病也。木傷敗。則竜深蔵。木禽懼而不見也。鯨鯢出而為禍。鱗甲之虫有金気。所以傷木也。火用事。則正封疆。脩田疇。至于立夏。舉賢良。封有徳。賞有功。出使四方。此順火之化。長養万物也。無縦火。則火順人用。甘露降。鳳凰来。黄鵠見。鳳凰即朱雀之類。喜故出見。甘露。黄鵠。並子慶其母也。若人君用讒佞。離骨肉。疎忠臣。棄法令。婦人為政。則民病血腫。国因不明。火為災。冬鴈不来。鳥為怪。火不善。故鳥有変怪。憂懼。故不来也。土用事。養長老。矜寡独。賜孝悌。施恩沢。順土寛和含養之徳也。無興土功。宮室制度有差。親戚之恩有序。則五穀成。嘉禾出。賢聖来。土気順。故嘉禾和熟。其徳景大。故聖賢悦之而来。若人君淫楽無度。侮親老。困百姓。則民病腹心之疾。心腹主土。気不和。故病。賢人隠蔵。百穀不登。裸虫為災。土性傷。故稼穡不成。賢人悪之。所以不見。裸虫。土気也。

書き下し

木を伐らざるは、天陽生長の気に違うべからざればなり。若し夫れ人君馳騁(ちてい)度無く、沈湎(ちんめん)縦恣し、徭役を重くし、民の時を奪い、税斂を厚くすれば、則ち民疾疢瘮(しつちんしん)し、足の疾を患う。春気を傷る、故に皆木の病なり。木傷敗すれば、則ち龍深く蔵る。木の禽懼れて見えざるなり。鯨鯢(げいげい)出でて禍を為す。鱗甲の虫は金気有り、木を傷る所以なり。火事を用うれば、則ち封疆を正し、田疇(でんちゅう)を脩む。立夏に至りては、賢良を挙げ、有徳を封じ、有功を賞し、四方に出使す。此れ火の化に順い、万物を長養するなり。火を縦(ほしいまま)にすること無ければ、則ち火は人の用に順い、甘露降り、鳳凰来たり、黄鵠(こうこく)見(あら)わる。鳳凰は即ち朱雀の類なり、喜ぶ故に出でて見わる。甘露・黄鵠は、並びに子のその母を慶ぶなり。若し人君讒佞(ざんねい)を用い、骨肉を離し、忠臣を踈(うと)んじ、法令を棄て、婦人政を為せば、則ち民は血腫を病み、国因りて明らかならず、火災を為し、冬に雁来たらず、鳥怪を為す。火善からず、故に鳥に変怪有り。憂懼す、故に来たらざるなり。土事を用うれば、長老を養い、寡独を矜れみ、孝悌に賜い、恩沢を施す。土の寛和含養の徳に順うなり。土功を興すこと無く、宮室の制度差有り、親戚の恩序有れば、則ち五穀成り、嘉禾出で、賢聖来たる。土気順う、故に嘉禾和熟す。その徳景大なり、故に聖賢これを悦びて来たる。若し人君淫楽度無く、親老を侮り、百姓を困しむれば、則ち民は腹心の疾を病む。心腹は土を主り、気和せざる故に病む。賢人隠蔵し、百穀登らず、裸虫(らちゅう)災いを為す。土性傷る、故に稼穡(かしょく)成らず。賢人これを悪む、所以に見えず。裸虫は土気なり。

現代語訳

木を伐らないのは、天の陽が物を生み育てる気に背いてはならないからである。もし君主が狩りや遊びに度を越して馬を走らせ、酒におぼれてほしいままにふるまい、労役を重くし、農事の時期を奪い、税を重く取り立てれば、民は病気にかかり、足の病に苦しむ。春の気を損なうので、みな木の病なのである。木が損なわれ衰えると、龍は深く隠れてしまう。木に属する生き物がおそれて姿を見せないのである。クジラ(鯨鯢)が現れて災いをなす。鱗や甲羅をもつ生き物は金の気をもっており、それが木を損なうからである。火がはたらく時期には、国境を正し、田畑を整える。立夏になれば、賢く善良な人を挙げ、徳のある者に領地を与え、功のある者を賞し、使者を四方に送り出す。これは火のはたらきに従って、万物を伸び育てることである。火をほしいままに燃やさなければ、火は人の用に従い、甘い露が降り、鳳凰が飛来し、黄鵠(大きな白鳥の類)が現れる。鳳凰は朱雀の仲間であり、喜んで姿を現すのである。甘露と黄鵠は、いずれも子が母を祝うものである。もし君主が悪口を言う者やへつらう者を用い、肉親を引き離し、忠臣を遠ざけ、法令を捨て、女性が政治をほしいままにすれば、民は血の腫れ物を病み、国はそのために明らかでなくなり、火事が起こり、冬に雁が来なくなり、鳥が怪異をなす。火がよくない状態にあるので、鳥に怪異が起こる。おそれ憂えるので飛来しないのである。土がはたらく時期には、老人を養い、夫や妻を失った者と身寄りのない者をあわれみ、孝行で兄弟思いの者に褒美を与え、恩恵を施す。これは土の、寛大でなごやかに包み養う徳に従うことである。土木工事を起こさず、宮殿の規模に身分に応じた差があり、親族への恩に順序があれば、五穀が実り、めでたい稲が生え、賢者や聖人がやって来る。土の気が順調なので、めでたい稲がよく実る。その徳が大きいので、聖人や賢者が喜んでやって来るのである。もし君主が快楽に度を越し、親や老人をあなどり、民を苦しめれば、民は腹や胸の病にかかる。胸と腹は土をつかさどり、その気が調和しないので病むのである。賢者は隠れ、あらゆる穀物が実らず、毛や鱗のない生き物(裸虫)が災いをなす。土の性質が損なわれるので、作物が育たない。賢者はこれを嫌うので姿を見せない。裸虫は土の気に属するものである。

解説

『春秋繁露』にもとづき、木・火・土の三つの時期について、よい政治とその報い、悪い政治とその災いを対にして述べる段である。木の時期に君主が遊びにふけり、労役や税で民の農事を妨げれば、民は足を病み、龍が隠れる。火の時期には賢者を挙げ功ある者を賞すれば鳳凰や甘露が現れ、讒言を用い忠臣を遠ざければ火事が起こり、冬に雁が来ない。土の時期には老人や弱い者をいたわり、土木工事を控えれば五穀が実り、快楽にふければ腹の病が起こり穀物が実らない。それぞれの五行に、体の部位(足・血・腹)、生き物(龍・鳥・裸虫)、瑞兆と災異が割り当てられ、政治の良し悪しが自然と人の体にそのまま表れるという天人相関の構図がはっきり見える。細かな対応は今では信じがたいが、重い税や労役が民の健康と暮らしを損ない、弱い者へのいたわりが社会の実りにつながるという筋道そのものは、現代の政策を考えるうえでもうなずける点が多い。

この章句が説くこと

五行大義治政災異瑞祥天人相関

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