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五行大義 / 第二弁体性

地上之木爲觀。言春時出地之木。無不曲直。花葉可觀。如人威儀容貌也。許愼云。地上之可觀者。莫過於木。故相字。目傍木也。古之王者。登輿有鸞和之節。降車有佩玉之度。田狩有三驅之制。飲餞有獻酢之禮。無事不巡幸。無奪民時。以春。農之始也。無貪欲姦謀。所以順木氣。木氣順則如其性。茂盛敷實。以爲民用。直者中繩。曲者中鉤。若人君失威儀。酖酒淫緃。重徭厚稅。田獵無度。則木失其性。春不滋長。不爲民用。橋梁不從其繩墨。故曰木不曲直也。火曰炎上。炎上者。南方。揚光輝在盛夏。氣極上。故曰炎上。王者向明而治。蓋取其象。古者明王南面聽政。攬海內雄俊。積之於朝。以助明也。退邪佞之人臣。投之於野。以通壅塞。任得其人。則天下大治。垂拱無爲。易以離爲火。爲明。重離。重明。則君臣俱明也。明則順火氣。火氣順則如其性。如其性則能成熟。順人士之用。用之則起。捨之則止。若人君不明。遠賢良。進讒佞。棄法律。疎骨肉。殺忠諫。赦罪人。廢適立庶。以妾爲妻。則火失其性。不用則起。隨風斜行。焚宗廟宮室。燎于民居。故曰火不炎上。土爰稼穡。稼穡者。種曰稼。斂曰穡。土爲地道。萬物貫穿而生。

新字:地上之木為観。言春時出地之木。無不曲直。花葉可観。如人威儀容貌也。許慎云。地上之可観者。莫過於木。故相字。目傍木也。古之王者。登輿有鸞和之節。降車有佩玉之度。田狩有三駆之制。飲餞有献酢之礼。無事不巡幸。無奪民時。以春。農之始也。無貪欲姦謀。所以順木気。木気順則如其性。茂盛敷実。以為民用。直者中縄。曲者中鉤。若人君失威儀。酖酒淫緃。重徭厚税。田猟無度。則木失其性。春不滋長。不為民用。橋梁不従其縄墨。故曰木不曲直也。火曰炎上。炎上者。南方。揚光輝在盛夏。気極上。故曰炎上。王者向明而治。蓋取其象。古者明王南面聴政。攬海内雄俊。積之於朝。以助明也。退邪佞之人臣。投之於野。以通壅塞。任得其人。則天下大治。垂拱無為。易以離為火。為明。重離。重明。則君臣倶明也。明則順火気。火気順則如其性。如其性則能成熟。順人士之用。用之則起。捨之則止。若人君不明。遠賢良。進讒佞。棄法律。疎骨肉。殺忠諫。赦罪人。廃適立庶。以妾為妻。則火失其性。不用則起。随風斜行。焚宗廟宮室。燎于民居。故曰火不炎上。土爰稼穡。稼穡者。種曰稼。斂曰穡。土為地道。万物貫穿而生。

書き下し

地上の木を観と為す」と。春の時、地を出づるの木、曲直ならざる無く、花葉観るべく、人の威儀容貌の如きを言うなり。許慎云う、「地上の観るべき者、木に過ぐるは莫し。故に相の字は、目の傍らに木あるなり」と。古の王者は、輿(こし)に登れば鸞和(らんか)の節有り、車を降れば佩玉の度有り、田狩には三駆の制有り、飲餞には献酢(けんさく)の礼有り。事無ければ巡幸せず、民の時を奪う無し。春を以てするは、農の始めなればなり。貪欲姦謀無きは、木気に順う所以なり。木気順えば則ち其の性の如く、茂盛して実を敷き、以て民の用と為る。直き者は縄に中(あた)り、曲がれる者は鉤に中る。若し人君威儀を失い、酒に酖(ふけ)り淫縦(いんしょう)にして、徭を重くし税を厚くし、田猟度無ければ、則ち木其の性を失い、春に滋長せず、民の用と為らず、橋梁其の縄墨に従わず。故に木は曲直せずと曰うなり。火を炎上と曰う。炎上とは、南方なり。光輝を揚げて盛夏に在り、気極まりて上る、故に炎上と曰う。王者明に向かいて治むるは、蓋し其の象を取る。古者、明王は南面して政を聴き、海内の雄俊を攬(と)りて、之を朝に積み、以て明を助くるなり。邪佞の人臣を退け、之を野に投じ、以て壅塞(ようそく)を通ず。任其の人を得れば、則ち天下大いに治まり、垂拱して無為なり。易は離を以て火と為し、明と為す。重離は重明なり、則ち君臣倶に明らかなり。明なれば則ち火気に順う。火気順えば則ち其の性の如し。其の性の如くなれば則ち能く成熟し、人士の用に順う。之を用うれば則ち起こり、之を捨つれば則ち止む。若し人君明らかならず、賢良を遠ざけ、讒佞を進め、法律を棄て、骨肉を疎んじ、忠諫を殺し、罪人を赦し、適(嫡)を廃して庶を立て、妾を以て妻と為せば、則ち火其の性を失い、用いざるに則ち起こり、風に随いて斜めに行き、宗廟宮室を焚き、民居を燎(や)く。故に火は炎上せずと曰う。土は爰(ここ)に稼穡す。稼穡とは、種うるを稼と曰い、斂(おさ)むるを穡と曰う。土は地道たり、万物貫穿して生ず。

現代語訳

地上の木を観(みもの)とする」と。春に地面から出てくる木は、曲がったりまっすぐだったりしないものはなく、花や葉は見ごたえがあり、人の立ち居振る舞いや容貌のようである、ということをいう。許慎は「地上で見るに値するもので、木にまさるものはない。だから相(みる)の字は、目のそばに木がある形である」という。昔の王者は、車に乗れば鸞和(車につけた鈴)の鳴る調子に節度があり、車を降りれば帯びた玉の鳴り方に決まりがあり、狩りには三方からだけ追う(一方を逃げ道として空けておく)決まりがあり、酒宴には主客が杯をやりとりする礼があった。用事がなければ地方を巡らず、民の農作業の時期を奪うことがなかった。春を重んじるのは、それが農事の始まりだからである。欲深さや悪だくみがないのは、木の気に従うためである。木の気が順調であれば、木はその本性のとおりになり、盛んに茂って実を広げ、民の役に立つ。まっすぐなものは墨縄に合い、曲がったものは曲尺(かねじゃく)に合う。もし君主が威儀を失い、酒におぼれてほしいままにふるまい、労役を重くし税を厚くし、狩りに節度がなければ、木はその本性を失い、春になっても伸び育たず、民の役に立たず、橋を架けても墨縄のとおりにならない。だから「木が曲直しない」というのである。火を炎上という。炎上とは南方のことである。盛夏に光を放ち、気が極まって上へ昇るので炎上という。王者が明るい南に向かって政治をするのは、おそらくその象にならったものである。昔、明王は南を向いて政務を執り、天下のすぐれた人物を集めて朝廷に並べ、それによって自らの明(見通し)を助けた。よこしまでへつらう臣下を退けて野に追いやり、それによってふさがった道を通した。任用する人が適切であれば、天下はよく治まり、手をこまねいたまま何もしなくてもうまくいく。『易』では離の卦を火とし、明とする。離を重ねた卦は明を重ねることであり、君主と臣下がともに明らかであることを表す。明らかであれば火の気に従う。火の気が順調であればその本性のとおりになる。本性のとおりであれば物をよく成熟させ、人々の用いるところに従う。用いれば燃え起こり、やめれば消える。もし君主が暗愚で、賢くすぐれた人を遠ざけ、讒言やへつらいの者を用い、法律を捨て、身内を疎んじ、忠告する者を殺し、罪人を赦し、正妻の子を廃して庶子を立て、妾を正妻とするならば、火はその本性を失い、用いてもいないのに燃え起こり、風に乗って斜めに走り、宗廟や宮殿を焼き、民家を焼く。だから「火が炎上しない」というのである。土はここに稼穡する。稼穡とは、種をまくことを稼といい、取り入れることを穡という。土は大地の道であり、万物がそこを突き抜けて生まれてくる。

解説

『洪範五行伝』の説によって、木と火が本性どおりに働く場合と、本性を失う場合とを、君主の政治と結びつけて説く段である。木は春と農事の始まりに当たり、王者が礼に節度を持ち、狩りを控え、民の農作業の時期を奪わなければ木の気は順調で、木材は墨縄どおりに役立つ。反対に君主が酒色におぼれ、重税を課せば、木は曲直しない、つまり材として役に立たなくなる。火は南方と明に当たり、賢人を用いて佞臣を退ければ火は順調だが、君主が暗愚で後継ぎの順を乱すなどすれば、火は勝手に燃え上がって宗廟や民家を焼く、とされる。自然の異変を君主の失政の表れと見るこの考えは、漢代の災異説の中心で、『漢書』五行志に同系統の説が見える。今から見れば科学的な因果関係はないが、天災や火事を為政者の責任として問う回路を用意した点で、権力を戒める役割も果たしてきた。仕組みを預かる者の振る舞いが、見えないところで全体の働きを狂わせるという直感は、組織を率いる人には今も身につまされるものがあるだろう。

この章句が説くこと

五行大義災異洪範伝炎上曲直

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