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五行大義 / 第十六論七政

正其州國善惡。故爲政也。石氏天官訓解云。角。二星。是蒼龍之首。上角兩角間。天之道。日月五星所行。故名角。亢。爲朝廷。對揚于王。夙夜謀諮四海之內。故名亢。氐。是正寢。冰解之室。故名氐。房。是天子四時所居。故名房。心。前一星爲太子。中爲天子。後一星爲庶子。如人心處中。爲身之主。故名心。尾。是東方蒼龍宿之尾。故名尾。象形也。箕。近斗。象播揚五榖。故名箕。斗。量器也。斟酌爵祿。其形似斗。故名斗。牛亦象牛角。七政之始。故名牛。女。方正。裁割之象。婢妾之類。故名女。虛。耗也。其間空虛。廟堂之象。故名虛。危。似室屋。亦如墳墓。故名危。營室。有六星。爲離宮。似宮室。故名室。壁。直立似壁。孔子藏書於壁。效此義也。故名壁。奎。爲庫。主兵。形象庫周密。故奎。乖也。兵以乖違故舉。所以名奎。婁。如樓閣。亦似鐘婁。故養犧牲以爲名。胃。在藏爲五穀之府。主廩倉。故以爲名。昴。悴聚。如囚之在牢獄。故主獄事。昴星也。

新字:正其州国善悪。故為政也。石氏天官訓解云。角。二星。是蒼竜之首。上角両角間。天之道。日月五星所行。故名角。亢。為朝廷。対揚于王。夙夜謀諮四海之内。故名亢。氐。是正寝。冰解之室。故名氐。房。是天子四時所居。故名房。心。前一星為太子。中為天子。後一星為庶子。如人心処中。為身之主。故名心。尾。是東方蒼竜宿之尾。故名尾。象形也。箕。近斗。象播揚五穀。故名箕。斗。量器也。斟酌爵禄。其形似斗。故名斗。牛亦象牛角。七政之始。故名牛。女。方正。裁割之象。婢妾之類。故名女。虚。耗也。其間空虚。廟堂之象。故名虚。危。似室屋。亦如墳墓。故名危。営室。有六星。為離宮。似宮室。故名室。壁。直立似壁。孔子蔵書於壁。効此義也。故名壁。奎。為庫。主兵。形象庫周密。故奎。乖也。兵以乖違故舉。所以名奎。婁。如楼閣。亦似鐘婁。故養犠牲以為名。胃。在蔵為五穀之府。主廩倉。故以為名。昴。悴聚。如囚之在牢獄。故主獄事。昴星也。

書き下し

その州国の善悪を正す、故に政と為すなり。『石氏天官訓解』に云う、「角は二星、是れ蒼龍の首なり。上角両角の間は、天の道にして、日月五星の行く所なり、故に角と名づく。亢は朝廷たり、王に対揚し、夙夜に四海の内を謀諮す、故に亢と名づく。氐は是れ正寝、冰解の室なり、故に氐と名づく。房は是れ天子の四時に居る所なり、故に房と名づく。心は、前の一星を太子と為し、中を天子と為し、後の一星を庶子と為す。人の心の中に処りて、身の主たるが如し、故に心と名づく。尾は是れ東方蒼龍の宿の尾なり、故に尾と名づく。形に象るなり。箕は斗に近く、五穀を播揚するに象る、故に箕と名づく。斗は量器なり。爵禄を斟酌す。その形斗に似たり、故に斗と名づく。牛も亦た牛の角に象る。七政の始めなり、故に牛と名づく。女は方正にして、裁割の象、婢妾の類なり、故に女と名づく。虚は耗なり。その間空虚にして、廟堂の象なり、故に虚と名づく。危は室屋に似、亦た墳墓の如し、故に危と名づく。営室は六星有りて、離宮たり、宮室に似たり、故に室と名づく。壁は直立して壁に似たり。孔子の書を壁に蔵せしは、此の義に効(なら)うなり。故に壁と名づく。奎は庫たり、兵を主る。形は庫の周密なるに象る。故に奎は乖(そむ)くなり。兵は乖違を以ての故に挙がる。所以に奎と名づく。婁は楼閣の如く、亦た鐘婁に似たり、故に犠牲を養うを以て名と為す。胃は、蔵に在りては五穀の府たり、廩倉を主る、故に以て名と為す。昴は悴聚(すいしゅう)す。囚の牢獄に在るが如し、故に獄事を主る。昴星なり。

現代語訳

それはその州や国の善し悪しを正すものであり、だから政というのである。『石氏天官訓解』(戦国時代の天文家石申の星経にもとづく注解)はこう言う。「角は二星で、蒼龍の頭である。上角と下角の二つの角の間は天の通り道で、日・月・五星が通る所である。だから角と名づける。亢は朝廷であり、王の意を受けて答え、朝から晩まで天下のことを謀り相談する。だから亢(高く上げる)と名づける。氐は正殿であり、氷が解ける春の部屋である。だから氐(もと)と名づける。房は天子が四季に住まう所である。だから房(へや)と名づける。心は、前の一星を太子、中の星を天子、後ろの一星を庶子とする。人の心が体の中心にあって身の主であるのと同じである。だから心と名づける。尾は東方の蒼龍の宿の尾である。だから尾と名づける。形にかたどったのである。箕は斗の近くにあり、五穀をあおって籾殻を飛ばす箕(み)にかたどる。だから箕と名づける。斗は升目の器である。爵位と俸禄をはかり分ける。その形が升に似ているので斗と名づける。牛もまた牛の角にかたどる。七政の始まりである。だから牛と名づける。女はきちんと正しく、布を裁ち分ける象であり、下女や妾のたぐいである。だから女と名づける。虚は減りすり減ることである。その間ががらんと空いていて、廟堂の象である。だから虚と名づける。危は家屋に似て、また墳墓のようでもある。だから危(高い屋根)と名づける。営室には六つの星があり、離宮であって宮殿に似ている。だから室と名づける。壁はまっすぐ立って壁に似ている。孔子の書が壁に隠されていたのは、この意味にならったのである。だから壁と名づける。奎は武器庫であり、兵をつかさどる。形は武器庫がすきまなく囲われているのにかたどる。奎とは乖(そむく)の意味である。戦は互いにそむき違うことから起こる。だから奎と名づける。婁は楼閣のようであり、また鐘をつるす台にも似ている。だから祭りの生贄を養うことから名づけた。胃は、臓腑でいえば五穀をおさめる府であり、穀物倉をつかさどる。だからその名とした。昴は寄り集まっている。囚人が牢獄にいるようである。だから裁判のことをつかさどる。これが昴星である。

解説

二十八宿の名の由来を、『石氏天官訓解』によって一つずつ説明する段である。角は龍の角、尾は龍の尾、心は体の中心、箕は穀物をあおる箕、斗は升というように、星の並びの形から名づけたとするものと、亢・氐・房・虚・危のように官庁や建物、字の意味から説くものとが混じっている。奎を乖(そむく)と音でつなぎ、戦はそむき合うことから起こるとするのは、音の近い字で意味を説く漢代の声訓の手法である。石氏は戦国時代の天文家石申を指し、甘徳・巫咸とともに星経の三家として知られ、その星表は後の中国天文学の基礎になった。孔子の旧宅の壁から古文の経書が出たという故事を東壁の名に結びつけるなど、学問の伝承まで星に重ねているのも面白い。二十八宿の名は日本の具注暦にも毎日割り当てられ、宿曜道では吉凶を判じるのに用いられた。名前には、それをつけた人の見方が映っている。星の名の由来をたどることは、昔の人が何を大事にし、世界をどう見ていたかをたどることでもある。

この章句が説くこと

五行大義二十八宿星名石氏声訓

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