言志四録 / 言志耋録 第百四条 心裏絶無の事は夢みず
凡人心裏絕無之事。不形於夢寐。昔人謂男不夢生子。女不夢娶妻。此言良然。
新字:凡人心裏絶無之事。不形於夢寐。昔人謂男不夢生子。女不夢娶妻。此言良然。
書き下し
凡そ人の心裏に絶えて無き事は、夢寐に形れず。昔人謂ふ、「男は子を生むを夢みず、女は妻を娶るを夢みず」と。此の言良に然り。
現代語訳
およそ人の心の中にまったく無いことは、夢に形をとって現れることはない。昔の人が「男は子を産む夢を見ず、女は妻を娶る夢を見ない」と言ったが、この言葉はまことにその通りである。
解説
夢についての考察がさらに続きます。心の中にまったく無いことは夢に現れない、と一斎は言い、昔の人の「男は子を生むを夢みず、女は妻を娶るを夢みず」という言葉を引いて、その通りだとうなずきます。当時の社会通念を前提にしたたとえですが、要点は、夢は心の中にあるものからしか作られないということです。前条の「夢は心の画図」を裏返した言い方で、夢に現れたものは、たとえ自覚していなくても心のどこかにあるということになります。次の条では、だからこそ夢によって自分を知るべきだと話が進みます。自分では思ってもいないつもりのことが、実は心のどこかに潜んでいないかを考えさせる一条です。
この章句が説くこと
夢心無意識自己認識
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