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言志四録 / 言志後録 第五十八条 艮背の工夫

面背又各分三段。乾三陽位在前。初爲震。中爲坎。上爲艮。坤三陰位在後。初爲巽。中爲離。上爲兌。其陽在顏面者。收之背上身柱。與陰相代。則成前兌後艮。而面冷背暖。胸陽收之背中脊髓。與陰相代。則成前離後坎。而胸虛背實。腹陽收之背下腰上。與陰相代。則成前巽後震。而腹柔畜氣。腰剛聚精。前三陽皆與後三陰相代。則函成前坤後乾。而心神泰然。呼吸與天地通。余從艮背工夫得之。

新字:面背又各分三段。乾三陽位在前。初為震。中為坎。上為艮。坤三陰位在後。初為巽。中為離。上為兌。其陽在顔面者。収之背上身柱。与陰相代。則成前兌後艮。而面冷背暖。胸陽収之背中脊髄。与陰相代。則成前離後坎。而胸虚背実。腹陽収之背下腰上。与陰相代。則成前巽後震。而腹柔畜気。腰剛聚精。前三陽皆与後三陰相代。則函成前坤後乾。而心神泰然。呼吸与天地通。余従艮背工夫得之。

書き下し

面背又各々三段に分つ。乾の三陽は位前に在り、初を震と為し、中を坎と為し、上を艮と為す。坤の三陰は位後に在り、初を巽と為し、中を離と為し、上を兌と為す。其の陽の顔面に在る者は、之を背上の身柱に収め、陰と相代れば、則ち前兌後艮と成りて、面冷かに背暖かなり。胸陽は之を背中の脊髄に収め、陰と相代れば、則ち前離後坎と成りて、胸虚しく背実つ。腹陽は之を背下の腰上に収め、陰と相代れば、則ち前巽後震と成りて、腹柔かにして気を畜へ、腰剛くして精を聚む。前の三陽皆後の三陰と相代れば、則ち函して前坤後乾と成りて、心神泰然、呼吸天地と通ず。余は艮背の工夫より之を得たり。

現代語訳

顔(体の前面)と背中は、さらにそれぞれ三段に分けられる。乾の三つの陽は前面に位置し、下を震、中を坎、上を艮とする。坤の三つの陰は背面に位置し、下を巽、中を離、上を兌とする。顔にある陽を背の上部の身柱(首の付け根の下のつぼ)に収め、陰と入れ替えれば、前が兌、後ろが艮となって、顔は涼しく背中は暖かくなる。胸の陽を背の中ほどの背骨に収め、陰と入れ替えれば、前が離、後ろが坎となって、胸は虚ろに、背は充実する。腹の陽を背の下部、腰の上に収め、陰と入れ替えれば、前が巽、後ろが震となって、腹は柔らかく気を蓄え、腰は強く精を集める。前の三つの陽がすべて後ろの三つの陰と入れ替われば、あわせて前が坤、後ろが乾となって、心は安らかに落ち着き、呼吸は天地と通じ合う。私はこれを「艮背」(易の艮卦にいう「其の背に艮まる」)の修養から会得した。

解説

前の条の「前虚後実」を、易の八卦を使ってさらに細かく説いた一条です。顔・胸・腹の三段それぞれにある陽の気を、背中の対応する部位に収めて陰と入れ替えると、顔は涼しく背は暖かく、胸は虚ろで背は充実し、腹は柔らかく腰は強くなる。すべてが入れ替わると前が坤、後ろが乾となり、心は泰然として呼吸が天地と通じる、というのです。一斎はこれを易の艮卦の「其の背に艮まる」、背に心を止める修養から得たと明かしています。静坐を重んじた一斎の実地の体験が、易の言葉で記録されたものと言えるでしょう。気持ちが前のめりになったとき、意識を背中に置いて落ち着く工夫として読むこともできます。

この章句が説くこと

艮背身体観易静坐呼吸

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