言志四録 / 言志録 第百十二条 欲を外に窒げば心乃ち霊なり
草木之有生氣而日暢茂。是其欲也。從其枝葉之所長則欲漏。故伐其枝葉。則生氣反於根而幹乃大。如人亦從軀殼之欲則欲漏。欲漏則神耗。不能靈也。故窒欲於外。則生氣畜於內而心乃靈。身亦健矣。
新字:草木之有生気而日暢茂。是其欲也。従其枝葉之所長則欲漏。故伐其枝葉。則生気反於根而幹乃大。如人亦従躯殼之欲則欲漏。欲漏則神耗。不能霊也。故窒欲於外。則生気畜於内而心乃霊。身亦健矣。
書き下し
草木の生気有りて日に暢茂するは、是れ其の欲なり。其の枝葉の長ずる所に従へば則ち欲漏る。故に其の枝葉を伐れば、則ち生気根に反りて幹乃ち大なり。人の如きも亦軀殻の欲に従へば則ち欲漏る。欲漏るれば則ち神耗し、霊なること能はず。故に欲を外に窒げば、則ち生気内に畜へられて心乃ち霊なり。身も亦健なり。
現代語訳
草木が生気をもって日ごとに伸び茂るのは、それが草木の欲である。枝葉が伸びるにまかせておけば、欲が外に漏れ出てしまう。だから枝葉を切り落とすと、生気は根に帰って、幹がかえって太くなる。人もまた同じで、身体の欲に従えば欲が外に漏れる。欲が漏れれば精神がすり減り、霊妙なはたらきができなくなる。だから欲を外に漏れないようにふさげば、生気は内に蓄えられて心は霊妙になり、身体もまた健やかになる。
解説
剪定の比喩で、欲の扱い方を説いた一条です。草木が伸び茂るのも一種の欲ですが、枝葉を伸びるにまかせると生気が散り、剪定すれば生気が根に返って幹が太くなります。人も同じで、身体の欲のままに外へ向かえば精神が消耗し、欲を内に留めれば心は冴え、身体も健やかになる、と一斎は言います。前条までで欲の必要を認めたうえで、ここでは欲を消すのではなく「窒ぐ」、つまり漏らさずに内に蓄えることを勧めているのです。あれもこれもと手を広げて力が分散していないか、枝葉を落として幹を太らせる判断ができているか、仕事や事業の選択と集中を考える手がかりにもなります。
この章句が説くこと
欲窒欲生気養生集中
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