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言志四録 / 言志録 第百九条 聖人にして形を践む

性雖善而無軀殼不能行其善。軀殼之設。本趨心之使役以爲善者也。但其有形者滯。則既承乎心以爲善。又由有過不及而流於惡。孟子云。形色。天性也。惟聖人然後可以踐形。可見軀殼亦本無不善。

新字:性雖善而無躯殼不能行其善。躯殼之設。本趨心之使役以為善者也。但其有形者滞。則既承乎心以為善。又由有過不及而流於悪。孟子云。形色。天性也。惟聖人然後可以践形。可見躯殼亦本無不善。

書き下し

性は善なりと雖も、軀殻無ければ其の善を行ふ能はず。軀殻の設けは、本心の使役に趨きて以て善を為す者なり。但だ其の形有る者は滞る。則ち既に心に承けて以て善を為し、又過不及有るに由りて悪に流る。孟子云ふ、「形色は天性なり。惟だ聖人にして然る後に以て形を践むべし」と。見るべし、軀殻も亦本不善無きことを。

現代語訳

本性は善であるとはいえ、身体がなければその善を行うことはできない。身体が備わっているのは、もともと心の命じるままに働いて善を行うためである。ただ、形のあるものは滞りやすい。そのため、心の意を受けて善を行う一方で、度が過ぎたり足りなかったりすることで悪に流れてしまう。孟子は「身体や容貌は天から授かった本性である。ただ聖人であってはじめて、その身体を十分に生かしきることができる」と言っている。これを見れば、身体もまた、もともと不善なものではないことがわかる。

解説

身体を悪の源とだけ見る見方に歯止めをかけた一条です。前条までで、悪は身体から起こると述べた一斎ですが、ここでは、身体がなければ善も行えないと言います。身体はもともと心の指図に従って善を為すための器であり、それが滞って過不及を生むときに悪に流れるにすぎません。引かれる孟子の言葉は尽心上篇にあり、「形を践む」とは、身体に備わった天性を余すところなく実現することです。聖人とは身体を否定した人ではなく、身体を完全に生かしきった人なのです。心がけさえよければよいのではなく、体調や習慣といった身体の側を整えてこそ善い仕事ができる、という示唆としても読めます。

この章句が説くこと

躯殻性善践形心身孟子

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