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益軒家訓 / 士業勿怠

一右の三條は、我が愚蒙の言にあらず、古人意又如斯。我が子孫たらん人、必厚く信じ、愼んでおもひ、常に心に保ちて守り行ふべし。違背すべからず。各其子のとし十五に及ばば、此法を相傳すべし。若幼にして父を喪ふものあらば、其兄及一族の内の長者、其孤を敎へて、此法を傳ふべし。常にふかく祕して、他人に聞かしむべからず。各其子もまた其子に傳へて、萬世に至る迄永く廢すべからず。若斯法に背く者あらば、大不幸におちて、我等泉下に朽ぬるとも、恨み惡むべき者なり。

新字:一右の三条は、我が愚蒙の言にあらず、古人意又如斯。我が子孫たらん人、必厚く信じ、慎んでおもひ、常に心に保ちて守り行ふべし。違背すべからず。各其子のとし十五に及ばば、此法を相伝すべし。若幼にして父を喪ふものあらば、其兄及一族の内の長者、其孤を教へて、此法を伝ふべし。常にふかく秘して、他人に聞かしむべからず。各其子もまた其子に伝へて、万世に至る迄永く廃すべからず。若斯法に背く者あらば、大不幸におちて、我等泉下に朽ぬるとも、恨み悪むべき者なり。

書き下し

一右の三条は、我が愚蒙の言にあらず、古人の意も又斯くの如し。我が子孫たらん人、必厚く信じ、慎んでおもひ、常に心に保ちて守り行ふべし。違背すべからず。各其子のとし十五に及ばば、此法を相伝すべし。若幼にして父を喪ふものあらば、其兄及一族の内の長者、其孤を教へて、此法を伝ふべし。常にふかく秘して、他人に聞かしむべからず。各其子もまた其子に伝へて、万世に至る迄永く廃すべからず。若斯法に背く者あらば、大不幸におちて、我等泉下に朽ぬるとも、恨み悪むべき者なり。

現代語訳

右の三条は、私の愚かな考えから出た言葉ではなく、昔の人の考えもまたこのとおりです。私の子孫となる人は、必ず厚く信じ、慎んで思い、常に心に保って守り行うべきです。背いてはなりません。それぞれその子が十五歳になったら、この法を伝えるべきです。もし幼くして父を亡くす者があれば、その兄や一族のうちの年長者が、その孤児を教えて、この法を伝えるべきです。常に深く秘して、他人に聞かせてはなりません。それぞれその子もまたその子に伝えて、万世に至るまで長く廃してはなりません。もしこの法に背く者があれば、大いなる不幸に落ちるでしょう。私たちがあの世で朽ち果てても、恨み憎むべき者です。

解説

家訓の結びで、聖学須勤・幼児須教・士業勿怠の三条を、十五歳で子に伝え、代々守れと命じています。十五歳は大学に入る年とされた年齢で、先に述べた学びの段階とも合っています。父を亡くした子には兄や一族の年長者が伝えよという配慮に、家の教えを確実に受け継がせようとする強い意志が見えます。他人に聞かせるなという言葉からは、これが公刊を前提としない一家の私的な訓戒だったことがわかります。家族で大切にしたい価値観を言葉にして次の世代に渡す試みは、今の家庭でも意味のあることです。

この章句が説くこと

家訓子孫伝承家教育

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