大学或問 / 『大学或問』昌言を拝するということ
三昌言を拜する事、 (問)禹昌言を拜すといへり、昌言は何ぞや、 (答)昌言は道德學術の言に非らず、聖人に道德の言を下より敎ふべきやうなし、國家天下の政事の可否を告る也、上の人令する所善なれども人情事變に全く當らざる事あり、其可否を聞てあらたむるときは今の時勢に叶て、在位の人はゆたかに庶民は其所を得て其利を利とし其樂をたのしむなり、其中昌言にも大事小事あり、大小の勢ひは河邊のものゝ知るごとく、下の人情は下に居ものこれを知れり、故に其言の政に益ある事を悅び給ふなり、拜し給ふは知給はざりし事を告るは一事の師なり、故に拜し給ふなり、聖人の心體無我にして、虛中に天下の益を來し給ふ事を知るべし、問ことを好み、諫を受、謗の言をもあげいれて政事の可否を考ふる、是を言路をひらくといへり、天下の吉凶の先知は、言路を開くと閉るとにあり、故に天下の智を合するものはゆたかなり、
新字:三昌言を拝する事、 (問)禹昌言を拝すといへり、昌言は何ぞや、 (答)昌言は道徳学術の言に非らず、聖人に道徳の言を下より教ふべきやうなし、国家天下の政事の可否を告る也、上の人令する所善なれども人情事変に全く当らざる事あり、其可否を聞てあらたむるときは今の時勢に叶て、在位の人はゆたかに庶民は其所を得て其利を利とし其楽をたのしむなり、其中昌言にも大事小事あり、大小の勢ひは河辺のものゝ知るごとく、下の人情は下に居ものこれを知れり、故に其言の政に益ある事を悦び給ふなり、拝し給ふは知給はざりし事を告るは一事の師なり、故に拝し給ふなり、聖人の心体無我にして、虚中に天下の益を来し給ふ事を知るべし、問ことを好み、諫を受、謗の言をもあげいれて政事の可否を考ふる、是を言路をひらくといへり、天下の吉凶の先知は、言路を開くと閉るとにあり、故に天下の智を合するものはゆたかなり、
書き下し
三昌言を拜する事、 (問)禹昌言を拜すといへり、昌言は何ぞや、 (答)昌言は道德學術の言に非らず、聖人に道德の言を下より敎ふべきやうなし、國家天下の政事の可否を告る也、上の人令する所善なれども人情事變に全く當らざる事あり、其可否を聞てあらたむるときは今の時勢に叶て、在位の人はゆたかに庶民は其所を得て其利を利とし其樂をたのしむなり、其中昌言にも大事小事あり、大小の勢ひは河邊のものゝ知るごとく、下の人情は下に居ものこれを知れり、故に其言の政に益ある事を悅び給ふなり、拜し給ふは知給はざりし事を告るは一事の師なり、故に拜し給ふなり、聖人の心體無我にして、虛中に天下の益を來し給ふ事を知るべし、問ことを好み、諫を受、謗の言をもあげいれて政事の可否を考ふる、是を言路をひらくといへり、天下の吉凶の先知は、言路を開くと閉るとにあり、故に天下の智を合するものはゆたかなり、
現代語訳
三 昌言を拝すること。 問う。禹は昌言を拝した、と言われる。昌言とは何か。 答える。昌言とは、道徳や学問の言葉ではない。聖人に対して、道徳の言葉を下から教えるべきことなどない。国家や天下の政事の可否を告げることである。上の人が命じることが善であっても、人情や事態の変化に全く当たらないことがある。その可否を聞いて改めるとき、今の時勢にかない、位にある人は豊かに、庶民はそれぞれの所を得てその利を利とし、その楽しみを楽しむ。その中にも昌言には大事も小事もある。大小の勢いは、河辺に住む者が知るように、下の人情は下に居る者がこれを知っている。だから、その言葉が政治に益あることを喜ばれるのである。拝されるのは、知らなかったことを告げるのは一事の師だからである。だから拝されたのである。聖人の心の本体が無我であって、空しい中に天下の益を呼び寄せられることを知るべきである。問うことを好み、諫めを受け、非難の言葉でも取り上げて入れ、政事の可否を考える。これを言路を開くという。天下の吉凶の先知は、言路を開くか閉じるかにある。だから天下の智を合わせる者は豊かである。
解説

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